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12話 「選ばれし者」

 あのストーカーとの会話から2日、約束の日が来た。

 俺がわざわざ自分の家を選んだのには理由がある。

 まず、すごい都合良く俺と青山以外の3名が用事という形で家を出ると言われていたのだ。ストーカーさんからは俺たち以外には聞かれたくないと言っていたので好都合だった。

 しかし俺からすればあの人の言っていたことは全く理解が出来なかった。

 魔王の幹部を倒す。それが俺の役目だというのだろうか。

 勘弁して欲しいもんだ。青山と違って俺は自らチート装備を捨てて、今あるものはといえば黒い剣ぐらいのもの。しかも俺はそもそも戦い方なんてものを知らないし、剣の振り方なんかも知らない。ダッシュブレードもあるゲームの主人公の技からパクっただけだ。

 そう考えると本当にあの人はなんであんな真っ直ぐな、そして確信していたかのような目で俺を見ていたのか。

「あ、いたんだ山中くん」

「おぉ、青山」

 昨日も1日避けてきた青山がいつの間にか側に立っていた。

「やっぱりあの人の話、気にしてるの?」

「まぁ……な。そりゃ急に俺が魔王の幹部を倒すとか言われたら考えちまうだろ、自分はそんな器じゃないって」

 元いた世界でよく読んだ世界を救う系の物語。最後にはなんか「みんなのために、やってやるんだ!」みたいな感じになっていく。

 でも自分にそんな意識はまるでない。正直言うなら、俺はただ平凡に生きていたいだけなんだ。世界を救うために戦ったりなんか誰がするかって感じだ。

「うーん、そう…かな」

「……青山?」

 返ってきた予想外の答えに俺は思わず彼女の方を見る。

 すると彼女は柔らかな笑顔で返した。

「私はいいと思うな、山中くんが魔王の幹部を倒したり、魔王を倒して世界を救ってもさ」

「…………」

 何も言えなかった。

 なんで俺はここでいつもみたいに普通に答えを返せなかったのか。

 青山のその言葉には、何か自分の中に来るものがあった。

 これは一体なんなのか、そう考えているうちにノックが鳴り響く。

「げ、本当に来やがったあのババァ。山中くん出てきて」

「なんだそりゃ」

 まぁ難しく考えてても仕方ない。この感じた何かの答えもきっといつか出てくる。とりあえずいつも通り適当に過ごしておけばなんとかなるし今はいいや。

 そんなことよりあの人を迎えなければ。

 家に呼んだのはこっちなのに出ないとか真面目に可哀想だし。

「はーい」

「お、雄人くんじゃないか。だいたい客の対応とかは青山ちゃんがやってるんじゃないの?」

「何でそんなことまで知ってんすかアンタは……アイツはあんたのことをやたらと嫌ってるみたいだから俺が対応させられてるんだよ」

「私が何をしたっていうの…」

 俺をストーキングしてたよな!?

 そうツッコミたかったが抑え込む。これ言ったところでたぶんこの人は「それとこれとは関係ないと思うけど」と返してくると分かりきっていた。というか普通そうなると思う。

「とりあえず入ってください」

「あ、そ、そうよね」

 とりあえず中に入れてリビング(?)へと連れていく。

「ホントに来るなんてねクソババア」

「ねぇ雄人くん、この小娘社会的に殺してもいいかしら?」

「青山落ち着け。そしてもちろんダメです」

 この2人出会ったの2日前なのに既に犬猿の仲レベルなんだけど大丈夫かこれ。

 早く対応しないととんでもない喧嘩が始まりそうな気がするので話を始めさせるか。

「ところでなんですが、あなたの名前は?前回聞いた記憶がないもんで」

「あれ、言ってなかったっけ?」

「びっくりするぐらい全くそんな記憶がございません」

「じゃあとりま自己紹介ね。ブルーナ・シノ、魔女よ」

「ふーん、魔女ね……へ?」

 青山が少し驚いたような反応をしていた。別に魔法使いなんだから魔女って名乗っても普通じゃないのか。

「あなた、今魔女って言ったの……?」

「えぇ、全くその通りよ」

 おかしい。さっきまで険悪ムードしか感じられなかった青山から完全にその雰囲気が消えた。

「なぁ青山、魔女って魔法使いとなんか違うのか?」

「……私の知ってる通りならとんでもない人だよこの人」

「青山ちゃん、あなたの知ってる魔女って?」

「………」

 青山が黙り込んだ。

 ちょっと待てよ、なんでそんな超急展開なことになってるんだこれ。

「……魔女」

 青山が口を開いた。

「世界そのものと契約をして力を手に入れた存在。魔法使いなんてもんじゃない。この世界で『魔女』なんて名乗ったら本当ならいいけれど、嘘なんかだったら即処刑。そんな存在って前に見た」

「そうだね、全くその通りだよ。世界と契約して力を手に入れた『魔女』だよ私は。外でも普通に名乗ってるさ」

 すっごーい!!すごい超展開だね、わかるとも!すまん、やっぱりわかんねぇわ。

 なんで急に世界と契約したとんでもない魔法使いとか出てくるの?なんかもうどうにでもなれ。

「そして雄人くん。君の持ってる剣は魔剣だ」

 あのさぁ……もう脳の回転止めていいかな?

 なんでわざわざチート武器捨てたのにそんなとんでもない感じの武器来ちゃうの?

「魔剣っていったいなんなんすかー」

「ど、どうしたの山中くん…?」

 どうしたもなにもこんなよくある転生チートもののお話展開が来てしまった地点で色々とめんどくさいんです。

 俺はそんな全力で「は?」って言われるような存在にはなりたくないんです。

「魔剣っていうのは、世界が『今の世界を変える可能性を持つもの』に与える剣のこと。ただ力自体は剣と契約しないと発生しないけどね」

「つまり何もしなければただの剣ってことでよろしい?」

「うーん、そうだね」

 やったぜ。

 何もしなければいいんだろ?ただ普通の剣として使ってたらいいんだろこれ。

「私としてはなるべく力を発揮させて欲しいんだけどね?」

 してたまるかい。

「そんなことより今『今の世界を変える可能性があるもの』って言いました?」

「言ったよ?つまりそこの彼が世界に選ばれたわけで」

 勘弁してくれよ。

 俺やだよ?世界救う勇者になるとか英雄になるとか。

 ただ平穏に過ごしたいだけなんだよ。

「めんどくさそうな顔をしている雄人くんに教えてあげよう。面白いことにその剣が現れたとされる時代には必ず何か起きているんだ。意識していなくともそういう道を辿ることになると思うよ?」

「誰か今すぐ俺が止まるように仕向けてくんないかな」

「まずね、その魔剣は世界によって作られた当時は84本あったんだ。しかしながら作られた瞬間消滅。それから今日まで君のその剣を合わせて7本しか世界に姿を現してない。君は選ばれたんだ」

「怪しい店商法?」

「違うよ!?」

「山中くん、いいぞもっとやれ」

 青山さんなんてことを。

 いくら偉大な存在と分かろうとこの人のことは嫌いらしい。

「はぁ、もう聞きそうにないしいいかな」

 俺を英雄に仕立てあげようとするのを終えてくれるのは助かる。

「だが言っておくよ。君はその剣を手にした地点で運命を決定されているんだ。言っておくけど私は未来だってわかる。君の辿る道を知っている。そういう道を辿る可能性が高いってことを心に留めておくように。じゃあ帰るね」

 そう言って彼女は帰っていった。

 あんな言い方をされるとは思ってもいなかった。まさか本当に俺はこのよくわかんない黒い剣を買った地点で運命を決められてるのか?

 あー、考えるのめんどくさいわ。

 寝るか。

「青山ー、俺寝るわ」

「え、ちょっと雄人くん!?」

「俺が寝るまでに緊急コールでも来ない限り俺は寝るからなー」

そう言いながら自室に向かおうとしていた瞬間だった。

『緊急!緊急!冒険者のみなs』

「ふっざけんなぁぁぁぁぁぁ!!!」

一応ながら冒険者としての地位を持っている以上このコールには応じなければならない。

なんかもうこの世界自体が俺を勇者的な存在に仕立てあげようとしてる気しかしない。勘弁してくれよ。

そう考えながらも仕方なくギルドへ向かうことにした。

次辺りからまた6千字頑張りたい

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