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1話「つまりは異世界ですね」

 正直生活がめんどくさいとは思ってた。

 朝早く起きて高校へ向かう。そして適当に過ごし家に帰る。こんな作業のような日々をめんどくさいと思わない人はほとんどいないだろう。

 でも決して生きるのが辛くなったりはしなかった。なんてったって趣味のことも何も考えられなくなるとか想像するだけでゾッとする。本当の地獄ってのはそういうことを言うってはっきりわかんだね。

 ただまさかさぁ……

「雄人さん、おめでとうございます!あなたは残念ながら亡くなり、異世界に行く権利を運良く手に入れました!!」

 山中 雄人、享年17歳、死んで思ったこと。

 ……異世界とか求めてないんで戻してください。


 遡ること数分前、俺はなんかよく分からんけどものすごい神秘的な感じのオーラを放つわけのわからない森で目覚めた。普通の人なら「なんでこんな所に!?」と、かなりパニックに陥るだろう。

 しかし俺は違った。とりあえず周りを見渡し……

「ファアアアアアア!?」

 とりあえず叫んだ。あれ、普通じゃねこれ?

 とかそんなことを考えていると、ものすごい美しさを纏った女性がそこにいた。2次元でも「かわいい」までしか考えることのない俺がまさか3次元の女性に対し「美しい」と考えるとは思ってもいなかった。

 そんなことは置いといて、俺は何も考えずとりあえずその女性に近づいた。実際にその人以外何も無かったのでそうする他無かっただろう。そして場面は戻る……

「雄人さん、おめでとうございます!あなたは残念ながら亡くなり、異世界に行く権利を運良く手に入れました!!」

「すまない、残念なのかめでたいのかどちらかにしてくれないか?」

「それいつも言われるんですけどなんでなんでしょう?マニュアル通りに言ってるだけなんですけどねぇ…」

「そのマニュアル引き裂いてやるから今すぐよこせ」

「それは無理です」

 なんだこれ。何故か死んで、何故か異世界行く権利貰って、それで今やろうとしてる事がマニュアル引き裂くって…

「そんなこと言われましても、普通に仕事してるだけなので…」

「さりげなく心読むんじゃねぇよお前」

「私、女神なので!」

 女神なんでもありかよ。

「まぁ心読める女神はかなり数少ないんですけどね。当然女神にも不可能はありますとも」

 ……もうこれ、俺声出す必要なくね?

「私があなたと面と向かってるのに何故か空想の誰かと話をしてるただの変人になるのでやめて下さい」

「すんませんした」

 これ絶対死んだ後のムードじゃない。

「では女神様、自己紹介をどうぞ」

「待ってました!私は幸運を司る女神、ヘレス、全ての運を操るもの、ってなに言わせてんですか!あぁ、女神は基本人間には名乗るの禁止なのにぃ……」

 ツッコミどころが多いなこの女神。自分から始めたくせにやらせたみたいにしてくるし、同じようなこと2回言ってるし。

「とりあえずアホって覚えておくわ」

「そこ、女神にアホとか言わないぃ!!」

 涙目で言ってきた。

 だが関係ない。

「話逸らしてしまいましたがなんで異世界行けることになったんですか。そんなんなら元の世界に戻してくださいよ」

「普通に話を戻すなぁ…ちなみに死んでから軽く10時間経過してる肉体に魂戻したりしたらあなた実験の被検体にされますよ?」

「えぇ…」

 死んでからそんなに経ってたのか。こりゃ生き返るという選択肢は消すしかない。

「ところで死因はなんですか?通り魔に襲われたとか?」

「ショック死です」

「ショック死か」

「はい、ショック死です」

 ショック死かぁ…まぁ人生何が起こるか分からんしなぁ。

「あなたは近隣で有名なかなり美味な実がなる木に向かったところ運悪くクマと遭遇してそのまま気絶して亡くなりました」

「そんな死に方ってするもんなんですか」

「実際あなたがしてるじゃないですか」

  わぁい、全くその通りだよ畜生。

「でもさ、俺そんな記憶一切無いんですけど」

「それいつも言われるんですけど、死んだ人って一定時間の間その死んだ瞬間の記憶から数時間前までの記憶を嫌な記憶として封じ込めるんですよね。だから記憶が無いんです。たぶん、今は思い出してるんじゃないですか?」

 そんなこと出来たのか人間。いつでも嫌な記憶封じ込めたらどれだけ幸せか……

 ちなみに確かにその瞬間の記憶は思い出していた。クソでかいクマと遭遇して20秒ぐらい固まってから記憶が無くなっている。きっと話を聞いて思い出すきっかけが出来たのだろう。

「思い出したみたいですね。ならすみませんがそこに転がってる方を起こして頂けませんか?人間との物理的接触は禁止されているので何も出来ないんです。それにたぶんその方知り合いでしょうし」

 ん?さっき見た時はこの女神以外誰もいなかった気がするんだが。

 もう1度よく見渡してみる。すると驚いたことに確かにいた。なんかめっちゃ綺麗に木に隠れていた。気づくかよそんなの。

 さらにわかったこと。こいつクラスメイトだ。俺の嫌いな超絶キラキラどんな人にも優しくするよ系女子高校生の青山藍奈だ。

 それがわかった途端俺は…

「ふんっ!」

「あ、この人女性を蹴りました!!」

  思いっきり蹴ってやった。どうせ死んでるんだ、何しようが知らんよ。

「起きた瞬間ものすごい痛いんだけど、ベッドから落ちたのかな…ってここどこォ!?」

「いい反応をありがとうキラキラ女子高校生さん」

「はぁ!?いや、なんで山中君がいるの!?まさか誘拐!?」

「その誤解はやめてくれ、俺は犯罪に手を染めれるほどの度胸はない」

「男ってのはケダモノなんでしょう?」

「どこで手に入れたのその知識」

 女って怖い。

「そんなことは置いといてなんで蹴ったのか説明してくださる、山中君?」

「あらあら、奥様、あなたがすごいまぶしかったものだから邪魔だったので」

「あらまぁ、それはあなたが薄暗すぎるだけなのでは?」

「いくら俺が超インドア派だからってそりゃないだろう」

「部活ぐらい入ればいいのにねぇ?ものすごいボッチ感醸し出してるから薄暗くなるのよ」

「そんな部活に入ってる青山さんは腹筋が割れていますよねぇ」

「なっ、あんた見たの!? こ、この変態!!どうせ私が寝てる間にあんなこととかそんなこととかしたんでしょ!?」

「なんでそんな妄想力豊かなの青山さん……さっき言った通り俺に犯罪レベルのことをできる程の度胸はないんだよなぁ……女ってやっぱり怖いんだなぁ」

「も、妄想って……うぅ……」

 勝手に悶え始めたぞこいつ。やっぱり女って生物は変態なのか?

「雄人さんって結構普通に言葉で傷つける感じの方ですか?」

「うーん、たぶん変な縛りが無くなったから普通に言えるんだと思いますけどね。普段の俺じゃ絶対しませんよこんなこと」

 全くその通りで、普段の俺なら絶対こんなこと言わない。周りの視線だとかなんだとかを気にする必要が無くなったから言えるのだ。

 きっと元の生活でさっきのようなことを女子相手に言えば周りの視線がかなり痛いだろう。

「あぁ、うぅ……もういいからなんで私がここにいるか説明してくれない……?」

 そしてさっき俺がされたような説明を青山が女神様から受けて……

「なによぉ……部活中に変な倒れ方して首の骨折れて死んだって……まだ高校生活全然満喫してないのに……」

 青山さんは見事なまでに落ち込んでいた。

 そりゃそうだろう。死んだことを認識して落ち込まない人なんか基本いないだろう。俺も平静を装っているように見えるかもだが実際内心は割と落ち込んでいる。まだゲームのイベント中だったってのに……

「なんか落ち込み方のレベルが違いすぎません?」

「女神様、それは言ってはいけないし勝手に心読むのやめて下さい」

「心読んでると楽しいんですよね」

 個人的な楽しみのために心読まれてるとか悲しすぎんだろ……

「ところでそろそろどういう理由で異世界行けるのか説明してもらってもいいですかね?そこのブルーマウンテンさんが落ち込んでるのをずっと見てても面白くないし」

「何勝手に人が落ち込んでるの見て楽しんでんのよ」

 知らん。お前がやたらすごい落ち込んでるもんだから少し面白かったんだ。

「ではそろそろ説明をさせてもらいますね。まずあなた達の世界にも幸福を表す数字がありますよね?」

「降伏?負けを表す数字とかあったっけ山中くん」

「違う、そうじゃない。たぶん幸せの方だ。なんでそんな考え物騒なの?」

「女子ってのはいつでも戦いの中にいるのよ」

「物騒な世界だな……」

 いや、本当に物騒すぎるだろ。カーストとかそんなのか?

「まぁそんなことは置いといて幸福を表す数字って何かあったかしら……星座占いとかでいう1位とか?」

「なんでそんな考えに至るの?お前ら争うの大好きか。たぶんラッキーセブンとかそういうのだろ」

「そんな簡単なわけ……」

「雄人さん正解です」

「えぇ!?」

 本当に青山の頭の中がどうなってるのか知りたい。

「あなた達の世界でいうラッキーセブンのような数字が他の異世界にも存在しているんです。元々私達女神は死人の案内が仕事だったのですが、それだけじゃつまらないと言い出した女神がいまして、そこから幸福数ルールというものが生まれました」

「つまらないから死人を異世界に行かせるってどんなんだよ」

「まぁそのおかげであなた達はまだ生きていられるわけで、その辺は感謝すべきだと思いますよ」

 感謝して欲しいなら元の世界に戻して欲しい。異世界とか不便しかないだろ。

「ちなみに幸福数ルールとはその数字の時間ちょうどに死ぬとその数字を持つ世界に行くことが出来るというものてす。といっても何個も世界はあるので女神で担当を4個ずつ振り分けてるんですけどね」

「しつもーん、異世界って何個もあるんですか」

「はい。異世界と言っても全ての世界の生まれは同じです。あなた達の世界もあなた達が今から行く世界もその他の世界も最初は全く同じでした。ただ人類が生まれ始めてから少しずつ世界ができ始めました。まぁいわゆるパラレルワールドってやつですね」

 なんかとんでもないことを聞いてしまった気がする。全ての世界が同じものということだけで頭がおかしくなりそうだ。事実となりで青山の頭がオーバーヒートしてる。

 こいつそういうの全く興味無さそうだったもんな。

「つまり基本の形は同じということですか?」

 正直俺自身何を質問したのか分かっていないが聞いてみた。

「はい。全部星は地球ですしあなた達の世界でいう太陽系も存在します。違うのはその世界の発展の方法や言語、大陸の形ですね」

「一緒で違って一緒で……」

 青山が完全に思考停止し始めたぞ。このまま話が続かなくなるのも勘弁なので殴って無理やり頭を回させた。

 青山からは「あんたさっきから私の扱い悪くない!?」と言われたがこれに関して俺は何も悪くない。

「簡単に言うと科学の発展した世界、魔術の発展した世界、両方の発展した世界、という感じに違う進み方をした結果世界が生まれるわけです」

「つまり私たちの世界にも魔法は存在してるってことですか?」

 青山からは質問とは珍しい。

 ただこのことは俺も考えた。魔術の発展が出来たということはつまり魔法が存在しているという事だ。

「あなた達の世界の場合はもうほぼ0に等しいです。あの世界で3人使える人がいたらいいぐらいじゃないですかね?」

 一瞬で夢が潰された。

 まぁもう戻れない世界のことはどうでもいい。今は新しい世界のことを聞かなくては。

「ちなみに俺たちの行く世界はどのパターンなんですか?」

「完全に魔術発展の世界ですね。科学なんてものがまるで存在しない世界です」

 まさにフィクションで出てくるような異世界か。

 あれ、ちょっと待って、俺ものすごい嫌な予感がする。

「まさか魔王とかいたりします?」

「いますね」

 さらば、俺の平穏な生活……約15年間楽しかったよ……

「そろそろ世界の説明に入りますね。まずこの世界、ヴァンデルは数百年前に1度魔王が倒され平穏を取り戻しました。しかしある日とある物体が現れました。聖なる杯と呼ばれるとんでもない魔力を保有した魔道具です。そんなものが現れれば当然取り合いになります。最初はただの取り合いだったのですがいつの間にか2つの勢力に分かれます。それが現国王の祖先の勢力と魔王の勢力です。世界の平和を願う国王と世界の自分への服従を願う魔王の戦いは熾烈を極めました」

 ちょっと待って、話が壮大過ぎる。

 そんなとんでも世界に俺ら飛ばされるの?すぐに死ぬんじゃね?

 そんなことを考えながらとなりの青山の様子を伺うと……

 あれっ、こいつめっちゃ目輝かせてるんだけど。

「そして結果的に決着がつくことはなかったのですが、聖なる杯はどういうわけか魔王側を選びました。魔力の全てとは言い難いけれど杯のもつ魔力を魔王側に流したのです」

「つまり国王側の敗北ってわけか」

「それから魔王側は世界を少しずつ侵食し始めた今に至ります」

 もう終わりかけてるじゃねぇか。どうしろってんだよ。

「つまり私達はその国王側に勇者として転生するって感じですか?」

 青山がそんなことを言い出した。

「青山お前そういう話とか好きなのか?」

「えっ、いや、そんな感じの話なんて色々とあるじゃない!?だから何となくそう思っただけというか……」

 もう俺青山って人間のことがよく分からん。

 そして女神は

「はい、あなた達には勇者的な存在として転生してもらいます。それと一応ながら特典として強力な装備のプレゼントがありますので安心してください」

 そんなことを言うと女神は数十枚の紙を出した。どうやらいわゆるチート装備のリストらしい。

「この中から選んでください。後での変更などは出来ないので慎重にお願いします」

 紙を拾って見てみる。

 ほとんどのダメージを防ぐ鎧、攻撃速度の高くなる二刀流剣、一撃で城一つを消せる斧……とんでもねぇなこりゃ。

 数分後、俺はとりあえずで装備を選び青山を待っていた。なんか2つまで絞ったが決まらない、と言った感じだ。

「お前何にそんな迷ってんだよ。こんなの全部チートなんだからなんでもいいじゃねえか」

 そんなことを言ったら睨んできた。なんでそこまでされなきゃならんのだ……

 すると青山は

「この2つでどっちがいいか選んでっ!!」

 と言ってきた。しかも恥ずかしそうに。

 きっと俺みたいな引きこもりみたいなやつに選んでもらうのが嫌なのだろう。

 手渡してきたのは能力がどちらとも『全ての魔法の使用を可能にする』と書かれたものだった。違いといえば杖か本かという所だった。

 とりあえずで選んでもいいのだが俺は考えることにした。

 急に話は変わるが、俺は関わらなければならない人間の特徴は細かいことだろうと覚えるようにしている。いくら超インドア派の人間であるとはいえハブられるのだけは嫌なので上手く合わせるために周りのことをしっかりと観察するのだ。

 そして先程から俺は青山藍奈のことをみんなに好かれるキラキラ女子高校生と言っているがこいつは少し普通のキラキラ女子高校生とは違う。

 こいつは集団での行動より個人での行動の方を好むらしい。

 たまに片手に本を持って1人になれる所を探している所を見る。部活の帰りなどはバスでなるべく1人になれるように行動している様だった。俺はたまにそれの手助けを陰ながらすることがあったので1人の方が好きなのは確かなのだろう。人気者のキラキラ女子高校生も大変なものだ。

 そして俺はこのことから魔導書の方を選ぶことにした。なんとなく本を持っている姿の方が見慣れているからだ。

 渡すとしっかりと目を合わせて「ありがとう」と返ってきた。

 青山が顔を逸らした瞬間少し笑顔になっていたように見えたのは気のせいだろう。

 そして……

「あなた達をヴァンデルに送ります。一応3日間ほどの生活金も付けておきました。ではあなた達に祝福のあらんことを!!」

 遂に俺たちは異世界へと旅立った。

文とかグチャグチャな気がしますが許してください。最後もうちょっとふざけれたかなと思ってます。次回がいつかって?1ヶ月以内に出せればいいんじゃないかな……

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