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エピローグ


 後書きにお知らせがありますので、どうかお目通し願います。


「──アオちゃん、郵便みてきてくださいな」

「……わかった。」

 とある小さな港町。かつて家族で来たこの街に、彼女は小さな料理屋を開き、こじんまりと生活を営んでいる。

 海の香りと、微かなさざ波。時折かつての賑わいが恋しくもなるが、彼女は今の生活が好きだった。

「おかーさん、お手紙と新聞」

「お手紙……?誰からでしょうか」

 手渡された封筒の封を丁寧に剥がし、便箋を取り出す。そこには母の慣れ親しんだ懐かしい字で、彼女の故郷の近況が事細かに記されていた。

 アオと呼ばれた少女は、母と慕う女性が手紙を読み、不意に頬を緩めたり、ころころ笑ったりする様子を満足気に眺めていた。

 そして一通り手紙に目を通した彼女は、興奮気味にアオに駆け寄る。

「ア──アオちゃん!みんながこっちに来るんですって!」

「みんなって、誰?」

 そう言えば、アオにここに来る前の話はしたことが無かったことに気付く。

 彼女は端的に、自分の家族である、とだけ伝えることにした。会ってからのお楽しみ、ということもあるだろう。

「──ふうん。会いたいなら、アオが乗せてってあげるのに」

「そういうのとは違うんですよ。やっぱり、来てくれるのは嬉しいです──ああ、どんなお料理がいいでしょうか!」

 聞くところによれば、今だに会うことが出来ていないシディアちゃんとアルマちゃんも来るらしい。

 話には聞いているが、きっとあのふたりに似て、非常に可愛らしい子なのだろう。小さな子はどんな食べ物が好きだろうか?考えるだけでわくわくする。

 久しぶりにティアちゃんにも会いたい。きっと大きくなったろう。今でも私のことをお姉ちゃんと呼んでくれるだろうか?

「アオちゃん、みんな私の大切な家族ですから、優しく、礼儀正しくするのですよ?」

「アオに優しくしてくれるなら、する。」

 アオは自分の見知らぬ家族の存在に心躍らせる母を見るのが、少しばかり不愉快だった。

 どうせ、皆自分より弱いのである──少なくともこの街で自分より強い者を見たことの無いこの幼い龍は、自分の力を過信していた。

「後で、角を磨いておめかししましょうね。きっと直ぐに皆と仲良くなれますよ」

 しかし、彼女はまだ幼い。そんな不機嫌も、大好きな角磨きをして貰えるとあっては、直ぐに雲散霧消してしまった。

 朝ごはんの匂いがして、今日もまた、この平和な町で平和な一日が始まる。

 これよりそう遠くない未来、この平和な街に惨状が訪れるなど──ましてやその中心で彼女らが戦うことになるなどとは、いまだ誰も知る由がなかった。

 


                        了


 これで終わりです。中途半端な終わり方ですので、もちろん今後書く予定だったこの先のストーリーは存在します。

 それに関して興味がある方がもし居れば、活動報告に「冒険者引退を機に〜」の今後についての詳細がありますので、読んで頂けると幸いです。

 三年間、この長きに渡って読んでいただき、本当にありがとうございました。

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