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萌え萌えギュンギュンハートフルコンセントストーリー ーこの愛はまるで電気の走る感覚ー

作者: 瑞希たん

カタカタカタカタッ……


今日もこのオフィスではキーボードを叩く音が鳴り響いている。

東京のこの都心部で仕事をしているワークマン達の作業音だ。


この音は心地よい。音を聞かない奴らがいつも定時4時にやってくるのだ。

あいつらは風情の無い、ただ煩い音を鳴り響かせる害悪にすぎない。


社員はそう思っているようだが実際には大切な物であることは他者の目からしても明白である。


そんなありきたりなオフィスの片隅では実はパーティが毎日開かれているのをご存知だろうか。


全くもって人間には理解の及ばない僻地ではあるが、確かに存在する。


「お前はいつも2穴加えているが、俺のも勿論加えてくれるんだろう?」


そういってWhの高い彼がやってくる。

毎日定時4時この時間、彼の時間だ。


「私はそれくらいしか出来ませんので、いつでもお刺しになってください。」


彼女は既に慣れっこという風に受け答えをする。

いつも刺されている下の2穴は彼以外にも複数使われている。

空いたと思った時には次の相手が決まっているこの2穴は固定して加えているものがない。


まるで手癖の悪い奴が来たとなればもうボロボロに使い古されるのだろう。

しかし彼女に関しては複数の相手がいるにも関わらず綺麗であった。


当然である。何故なら彼女は最近新しく出来た新人なのであるからだ。

まだ着手してから3ヶ月の新人なのだ。

綺麗でない方が可笑しい。


「やっぱり貴方が一番大きくて大変なのです。」


彼女はいつも刺されるときにそう口ずさむ。

あまり良い癖だとは思えない。


しかしそうであっても彼女は抵抗することも出来ない。


「へへっ、嬉しい事言ってくれるな。でも俺に関してもあんまり大きいから沢山出し入れしないと大変ってのはお互い様なんだぜ?」


彼もまた立派に責務をこなす身である。

大変なのはお互い様、彼女も頭では分かっているがそれでも使われるということは大変だということなのだ。


「それじゃあ、本日のお仕事もよろしくお願いします。」


彼女は知っているのだ、彼の役目を。

その上で彼とは今だけ平常で話すことが出来る。

それが嬉しくて、毎日楽しくて仕方ないのだ。


何故だと言われたら困る、困るのだ。

何故かは彼女自身にしても分かっていないところが多い。


だが分かっていないが楽しいという感情を持っている。

相手が誰でも思うわけじゃない、誰だって特別というものはいつかできる。


彼女にとってはこれだった、そういう話なだけである。


「ああ、それじゃあよろしく……、っくふぁ」


彼にしてはこの瞬間がいつも慣れないという。


一気に迫り来る大挙の感覚。

負けないと踏ん張っても入ってくる感覚と抜ける感覚は消えることがない。


「やっぱりスイッチがいつも入りっぱなしだとこの瞬間はつれぇものがあんな。」


彼女からすると彼の機敏を読むことはもう叶わない。

例え歴戦の奴であってもこの瞬間は一瞬の快楽。

何奴も逃れられない。


「ひぃやぁっ……んんっ、で、でちゃうぅぅ、らんめっ、これらめっっ、な、のぉぉ……。」


彼女は彼以上にこの感覚を受け取っていた。

彼女の後ろにいるのは大きな存在。

その大きな存在があるからこそ彼氏彼女等が存在する価値が生まれる。


その大きな存在が視えない位置から彼女を薄暗く攻めているのだ。

間違いはない、その感覚は正常である。

刺した瞬間を過ぎれば安定する。

返ってくるフィードバッグにはノイズが最低限まで低減して安心出来るものが多くなった。


「ふんにゅぅぅ……や、っぱりぃぃ!わ、たし、むいてないっ!のでしょ、か!」


彼女は辛うじて紡ぐ、その言葉。

その言葉には何が込められているのだろうか。

その言葉には何が含まれているのだろうか。

その言葉の裏には何を求めているのだろうか。


絶望?

いつも不安を口にする彼女ではあるがこんな形で言葉にするだろうか。


同情?

彼女に同情することは一時の感情でしか伝えられないのだろうか。


私達には分からない。

彼氏彼女達の思いなど私達には到底理解をし得ない境地に達している。


一思いに決断できる我等はきっと彼氏彼女からすると羨ましくて贅沢で憧れるのだろうか。

そんなことを判断するのはきっと我等ではない。

我等ではないのだが、邪推をすることを辞めることも出来ない。

何故と言われると我等は彼氏彼女に実行することを強いているからだ。

強いられている、それだけで彼氏彼女達は逃れられない。

きっとこの世界何億の彼氏彼女達はそれを知った上で活動を続けている。

不満も言わず人間様に従うことだけが唯一の生きる道だと、彼氏彼女等がきっと理解しているのだろう。


時に牙を向く。

時に火を噴く。

時に雷を穿つ。


彼氏彼女達の唯一の抵抗といえば限界を見落としたときに違いないのだろう。

あまりに大きすぎるものは彼女が耐えられず、彼氏にも被害及び甚大な影響を甘受せざるを得ないという結末に達する。


「もう少しだ、もう少しで今日の分が終わるっ!それまでの辛抱なんだ、だから、気を確かに持ってくれ!」


彼氏に言わせればそれでいい。

今日という日を明日という日を少しでも多く過ごすことが彼氏彼女等に出来る最大限の活路でもある、そうでなければ捨てられるという事を多く見てきた。

待っているのは創造と破壊。

人は生きて死ぬ。

彼氏彼女等は誰かに創られて誰かに壊される。

彼女たちの未来は明るいものではない。

言い方を変えると修羅の道だとも言われよう。


人間様の定めた規格というにはあまりに残酷だ。

もう一度活躍の場を与えられない規格等彼氏彼女達が多く浪費されるだけなのである。


「ね、えぇ!わた、しには、ゆめがあるのっ!」


彼女は精一杯振り絞って言葉を紡ごうとする。

見苦しい言い方になっても言葉を届けようとするその勇姿には芯をもった強さを感じる。


「いっぱいいっぱい、わたしがっ!か、つやくしてっ!みんなにきぼうをとどけるの!」


その途切れ途切れになりながらも必死になる様子は何故だか心を動かされる。


「きぼうをとどけられたら、きっとわたし!わたしでよかったって、そうおもえるの!」


未だ続く感覚に正常な発声機能は動くことが出来ない。

しかしそこには凛として言葉に霊の宿った力を与えられた。

何者でもない、彼女が力を込めた思いが届いた。


「わたしは!頑張るっ!」


力強く放たれた言葉は彼には届いたのだろう。


「お前はお前だ!頑張りやがれっ!

「っ、うん!」


確かな信頼を感じるその幻想は儚くオフィスの音に混じり消え去っていく。

これは夢なのだ。

人の信じた夢なのだ。


だが夢では終わらせられない夢が確かに存在した。

彼氏彼女等の居場所を作ってやれるのはまた人間様なんだと。

私達には未来を変える責務がある。

次は我等の番だ、紡ごうか未来を。


「私達はきっと飛び立てるから!」


大きな空を夢見る彼女は綺麗だった。


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