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幼馴染は恋人としては無しですか?

純粋な恋愛ものを書いたことが無かったのでこのような話を書いてみました。

めずらしく現代風の話を書いてみたくなりました。



「幼馴染に告白されただって?何自慢?」

「ち、ちが!そうじゃなくて!相談にのって欲しくて...」


私は今日、かなりテンパってる。

近所に住んでる二十年も付き合いがある幼馴染から突然告白されたのだ。

女性として見られていないとずっと思ってたし、お互い良い男女の友人関係だと信じて疑ってなかった。

それなのに。


「あのさ、もう俺らもいい歳じゃね?」

「うん?あー、そういう話はお互い精神的に良くないから知らないふりでいこう。永遠の18歳の心を持ち続けよう」

「いや、まーそりゃそうなんだけどさ」

「何?どうしたの今日は?調子悪いじゃん?言うてみ?この姉ちゃんが聞いてやろう」

「お前のことが好きなんだわ」

「え?いやまたまた」

「いや、本当」

「マジっすか...」

「マジっす」

「・・・」

「・・・」

「あの、とりあえずいろいろ考えとく形でよろしいでしょうか?」

「うん、考えといて」


二人で夕食を食べに行った帰りに告白された。

頭がパニックになり、とりあえず保留と言う形にして今仲の良い一人ぐらしの女友達に電話をかけて家に転がりこんだ。


「あのさ、私もう眠いんだけど。ぶっちゃけノロケとかいらないから男紹介しろ」

「だからノロケじゃなくて、マジで困ってんだって!」

「なんでさ?」

「なんでも何も。今までそういう目でみたことないし、ずっと友人だと思ってたし」

「向こうはそう思ってなかったってことじゃん。良かったね。大学卒業してから彼氏いなかったから調度いいじゃん。試しに付き合ってみたら?」

「だからそういうんじゃないんだってば。幼馴染と付き合って別れたら超気まずいじゃん!」

「付き合わなかったら付き合わなかったでどっちにしろ気まずいじゃん。向こう告ってきてるんでしょ?」

「そりゃそうだけど...なんとかほら、こう、元の関係を維持する方法とかさ」


すごい冷めた目をしながら溜め息をつかれた。


「はぁ...何がそんなに嫌なわけ?幼馴染から彼氏になるだけじゃん?そんなブサメンなの?貧乏とか?」

「いや、どっちでも無いけど。顔はまぁ、普通?だって今の関係が一番居心地がいいし」

「向こうはそれが嫌だから告白してきてんでしょ。顔も悪くない、別に貧乏でもない、自分のことを良く知ってくれてる男。長い付き合いだから結婚生活とかも想像しやすい。何が嫌なの?」

「だから私達の関係はそういうんじゃなくて、男女の友情が」

「男女の友情ねー」


鼻で笑われた。

う~ん、どういったらこの関係を理解してくれるんだろ。

そういう恋愛とかステータスとかじゃなくて。

ただ単に凄く仲の良い友人なだけじゃん。


「男女の友情が存在するしないとかそういう話になると不毛だけどさ、あたし達は今まで20年も幼馴染として関係を続けてたのに、今更付き合うだの」

「だーかーら、私もね、こんなこと普段は知ったこっちゃないわよ。でも相手の男が告ってきてるってことはさ、向こうがその関係を維持したいって思ってないってことじゃんって言ってんの」

「・・・やっぱそういうことなのかな?」

「他に何があんのよ」

「だって今の関係が壊れてもいいって思ってるってことでしょ?」

「今の関係が壊れてもいいと思えるぐらい好きってことじゃん。凄いことじゃね?」

「・・・やっぱり分かんない」

「えええええ、私のさっきの時間返せよ。睡眠時間返せよ」

「だって分かんないものは分かんない!」

「ほれほれ、スルメでも食って落ち着け」

「モグモグ...うまい」

「ほれほれじゃあ逆に考えてみ。あんたのその幼馴染君に他に彼女が出来たとして今までどおり上手くやっていけると思う?」

「いや、今までだってあたしも向こうも相手いたことあるしそんな今更」

「あんたさ、あたしらももう29だべ?向こうも同じぐらいの歳なんでしょ?もう30代目の前まで来てるんだって。心理の扉が迫って来てるんだって」

「うぐっ...そ、それは」

「結婚がすべてとは言わないけどだんだん恋人作るのも難しくなってくるだろうし、幼馴染君もちゃんとその辺いろいろ考えて告白したんじゃないの?」

「そ、そうなのかな?」


そこまで深く考えてたのかな?

アホなところしか見てきてないから分からなかった。


「そりゃ何も考えてない男もいるけど。仮にも幼馴染じゃん。今までの関係壊すぐらい真剣に考えて答えだしたんだから大したもんだと思わなきゃ」

「そうか。そうなのか」

「それにその幼馴染君に他に彼女とか出来たらもう会えなくなるんじゃない?」



「え?なんでそうなるの?」

「だって想像してみ?自分の彼氏が20年来の付き合いがある女とたまに二人っきりで会ってるけど恋人関係ではありませんって言われてあんたそれ信用出来るの?」

「で、出来ない...」

「私も嫌だわそんな男にそんな女」


確かに...ちゃんと考えたことも無かった。


「っていうか思いっきり私がやらかした心当たりあるかも・・・」

「幼馴染君の彼女を紹介されたと思ったらすぐ後に別れてたとか?」

「すげー、なんで分かるの?エスパー?」

「分かるわ。あんたも彼氏と長続きしたことないじゃん。ぶっちゃけそれ彼氏、幼馴染に紹介したからじゃね?」


マジですかぃ。


「私って馬鹿ですか?」

「うぃ」

「馬鹿だったわ・・・今ちゃんとスルメ食って考えてみればいろいろあったわ。うわ、駄目でしょ私」

「スルメで思いだしてあげるなよ。幼馴染との問題をスルメで解決してやるなよ」


いや、進めてきたのあんたでしょうが。


「今思い返せば幼馴染からのアプローチ結構あった気がする・・・やっべー、いや本当えー、あれもこれも全部そうだったの?」

「何やらかしたのさ」

「えっと、怒らない?」

「怒らないから、白状してみ、ポテトチップスでも食って楽になっちまいな」

「すいません私がやりましたってやめてよ!うん...えっとね」

「はい」

「夜一緒に食べに行くときは必ず奢って貰ってました」

「はいはい」

「車に乗って夜景を見に行ったりしました」

「オケオケ」

「たまに人込みが多いところだと手を繋いだりしてました」

「ボリボリ」

「弱っているときとかは相手の胸で泣いてしまいました」

「・・・」

「・・・」

「ねぇ、聞いていい」

「怖いけど、どうぞ」

「それもう彼氏じゃね?ていうか彼氏じゃなきゃ都合の良い男じゃね?幼馴染の枠超えてんでしょ」

「いや、違う・・・はず?」


あれ?やば、自身ないわ。


「いやギルティでしょ。真っ黒でしょ」

「違うんです!こう、一緒にいると居心地がいいんです!」

「っていうかさ、もしかしたらこれ、彼からの最後通告じゃね?」

「え、ちょ!なんて恐ろしいこと言うんだね!チミは!」

「いやーだって今の聞いてたらめっちゃ同情するわ。あんたその気も無いのにそんなことやりまくってたのか。噂に聞いていた悪女とはこのことだったのか。そりゃ今の関係壊したくもなるわ」

「・・・」


本当に何も考えてなかった。

妙に優しいなと思ったときがあるぐらいで、

だって男と女とか


「男とか女とかそういう類のものじゃないってずっと思ってたから・・・」

「いや、線引きしろよそこはちゃんと」

「ごもっともで」


友人が言うことは、言ってくれることは全部私が今まで無視してきたツケみたいなもので。

私が一番幼馴染のことまったく考えてなかったことに気づかされた。

それがまたショックで。

もうすでに幼馴染関係が壊れてしまっていることに、男と女の話になっていることにやっと気づいた。


「私、すげー嫌な女だわ」

「うん、そうだね」

「ちょっとは否定してよー!適当過ぎるぜ返事がマイフレンド!」


酷くね!?

ここは友人として慰めてくれるとこじゃない?


「眠いんだってば、マジで。明日早いのさ。もう許してください」

「あ、はい。すみませんでした」


友人がドロップアウトしてしまったため、一人でふらふらと自分の自宅に戻る。

風呂に入っていざ寝ようと思い布団に入るものの。


ゴロゴロ

ゴロゴロ

ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ

ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ ドンッ 痛い...


眠れん。

はあ、この歳になってこんな風になると思ってなかった。

ていうか私、あいつのこと実際どう思ってるんだろ。

一緒にいると楽だけどこう、イチャイチャとか胸のドキドキみたいなのはやっぱり無いし。

やっぱり違うかな。

うん、決めた。

明日あいつと会ってちゃんと断ろう。こんなあやふやな気持ちで付き合ってもお互い後悔するだけだし。

そしてちゃんと距離感を戻そう。

分かってくれると思うし。


・・・

結局一睡も出来なかった。

今日が土曜日で助かった。

さっそく幼馴染に連絡を入れる。


『おう、昨日ぶり、どうした?』

「うん、昨日ぶり、その今日暇?」

『おう、もしかして昨日の件か?』

「そう、それ」

『思ってたより早かったな。オケ今からそっちに向う感じの方がいいか?』

「うん、待ってる」

『了解。じゃまた後で』


そして幼馴染君を自宅待機で待つことにした。

アパートの前についたという連絡が来て、急いでアパートの入り口前まで降りる。


「うっす。改めて昨日ぶりっていうかひっでー顔だな」

「うっさいわ。そっちこそ」


幼馴染の顔を見たらすごいクマが出来てて顔がむくんでた。


「どっか喫茶店でも寄るか?」

「いや、ここでいい?」

「おう、ではどんとこい」

「ではいかせて頂きます」

「・・・」

「・・・」


いつも通りのテンションのはずなのに妙な空気が流れる。

喉が枯れる。

昨日何度も練習した断りの言葉。

なのに上手く出てこない。

すごい言いづらい・・・


「あのさ、わたしね...」

「うん」

「その...」

「うん」


返事を待ってくれてる。

付き合う気がない。これからもいい友達で居ましょ。

たったそれだけのことなのに。

なのになんで。


「その、私...」


唇が凄い勢いで乾いていく。

きっと今の私は眠ってないのと緊張で顔も酷いことになってるんだろう。

どうしても、続きが言えない。

いつまでそうしていただろう。

1分?5分?はたまた30分?体感時間ではもっと長く感じてる。

あまりにも待たせ過ぎたのか向こうから切り出してきた。


「悪い...そんな困らせるつもりじゃなかったんだ」

「あ、ごめん、困ってるとかそうじゃなくて」

「忘れてくれ。本当迷惑かけた」


え?そんないきなり撤回されても。


「何よそれ、私超悩んだんだけど」

「本当、悪いな」

「何よ、何かあったの?」

「俺さ、今度見合いするんだわ」

「え?お見合い」


ズキッ


「おう、会社のお偉いさんとこの娘さんでな。時代錯誤感半端ねぇだろ?」

「そう...だね」

「でまぁ、上司に気に入って貰えてるおかげの紹介だから悪い気はしないんだけどさ。もし断るとしたらそれ相応の理由が必要だと思ってさ」

「何よ、私は当て馬ってわけ?」

「そういうわけじゃねぇよ。俺もお前も結婚したらこうやって会えなくなるだろう?だからこれを気に好きって言ってオケして貰えたらなーなんつってな」


ズキッ

幼馴染の顔が無理して笑ってるのぐらいは分かる。

無理におどけた態度をしていることぐらい分かる。

凄く傷ついてるのが分かってしまう。


「会えなくなるなんてそんな。私は別に」

「まー、深く考えるな。俺が勝手にやらかしたことだと思っとけ」


昨日の友人との会話を思い出す。


『それにその幼馴染君に他に彼女とか出来たらもう会えなくなるんじゃない?』


さっきから胸が痛む。


「本当悪かったな。また今度機会があったら例のお前の友人と三人で食べに行こうぜ」


ズキッ


今まで二人で食べに行ってたのに三人って始めて言われた。

やんわりとしてるようではっきりとした拒絶の言葉に聞こえた。

何これ。

こんなの嫌だ。


「おい、どうしたって?え?マジでどうした!?すまん俺マジでやらかしたか!?」

「え?」

「お前が今泣き出したから、本当すまん!やべハンカチとか持ってきてたっけ?」


あれ?

私泣いてる?

言われて初めて気づいた。

そうか、やっぱり私馬鹿で嫌な女だなー。

彼が居なくなると分かって初めて独占しておきたいことに気づくなんて。

こんなタイミングで泣いてしまうなんて。

なんて嫌な女なんだろう。

だってこんなタイミングで泣いたらきっと。


泣いてる私を幼馴染が抱き寄せてきた。


「すまん、ハンカチやっぱり持ってねぇし。俺馬鹿だからさ。嫌だろうけど俺のシャツで我慢してくれ」


なんでそういうことするかな?

私さっきまで告白断ろうとしてたのに。

取られると思った瞬間におしくなるような女なのに。

全然涙が止まらない。


「駄目だよ。こんな女にそんな男らしいことしちゃ」

「・・・惚れた女にこういうことしたいお年頃の夢みる乙女なのさ」

「馬鹿、乙女は女でしょうが」

「そりゃそうか」

「・・・」

「・・・」

「私さっきまで断ろうとしてた」

「うん、知ってる。断られるとさすがにきついから言われる前に撤回した」

「いくじなし」

「それも知ってる」

「でも、やっぱりこれから一緒にいれなくなる可能性があるって聞いてすげー嫌だなって思った」

「それは知らなかった」

「そうでしょう。あんた馬鹿だし」

「ひでー」

「馬鹿でしょ。だって他の女に取られると思って初めて好きだって気づくような女好きになるなんて」

「馬鹿で良かったっす」

「私は最低な女だよ。自分のものが取られると思って泣き出す嫌な女だよ」

「うん」

「昨日まで幼馴染のままで居れれば最高とか思ってた嫌な女なんだよ」

「うん」

「めっちゃ酒好きだし、おっさん臭いつまみ大好きだよ」

「うん、今もめっちゃスルメ臭い」

「すっぴんだとめっちゃおっさん顔だよ」

「うん、どっかのレスラーに似てたね」

「料理下手だよ」

「うん、カップ麺にラー油を入れただけのものを調理と言われたときは戦慄が走った」

「そんな欠点ばかりの女だけど私と付き合ってくれませんか?」

「もう知ってると思うけどこんな情けない男でよければ結婚を前提にお願いします」

「け、結婚!」


え、もうそんな先までの話!?


「だって今回のお見合いの話蹴るには彼女よりも婚約者がいて近々結婚する予定ですってことにしとかないと。それじゃあまずはおばさん達に挨拶しに行かないと」

「うちの親に会う気ですかい?」

「そうですたい」

「ちょっとま、展開早い!早すぎだから!」


こんな強引だったっけ!?


「じゃあ、俺のこと嫌い?」

「うっ...す、好きっすけど」

「じゃあ、問題ない」

「うぇええええ」

「言っとくけどもうさ」


今まで見たどんな笑顔よりもいい笑顔で私の婚約者は言う。


「二十年待ったんだからもう逃がす気ない」



やっぱり恋愛要素を書こうとするとこっちが赤面しそうになるか砂糖を吐きそうになります。ていうかこれ恋愛ものだよね?ちゃんと書けてますよね?

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