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最高の一杯、背徳の一杯

作者: あまね

 お酒それは、タバコとエロ本と並び高校生の若気の至りで経験する人が多いとも言われる、通過儀礼のようなものである。

 もちろん、真っ当な人はきちんと年齢制限、法律を守っているが、それでもやはり3割~4割はいるのではないだろうか。


 結局この3つは、大人の味、大人の雰囲気、大人になったような気がする願望を手っ取りばやく、叶えてくれるアイテムなのだろう。

 まぁ最近はエロ本はネットにとって変るだろうけれど、やはり本のほうが、背徳感というものを味わえるのではないだろうか、手っ取り早さを求めすぎて、背徳感を失うというのは、どこか本末転倒のような気がする。


 安直にも暗愚にも僕は今背徳感とともに、そんなお酒を飲みたい、


 大人の階段を一足早く上るために、真っ当な人という道を踏みはずすというわけのわからなさがいい。

 むしろ今飲まなければいつ飲むのだろうか。


 連休中のチャンスを逃す手は無い。

 決意し、そして、どうせなら最初に飲むのは最高の一杯にしたい。

 


 そもそも、最高の一杯というものはどんなものだろうか。

 

 酒というのは、めでたい席の喜びで飲み、悲しみから逃れるように飲み、怒りをよりたぎらせるように飲み、毎日の一杯を楽しみながら飲む。


 つまりどんな気分でも飲んでいい事になる。

 もちろん最高の一杯なんだから、気分よく飲みたい、気持ちよく飲みたいものだ。


 ならば何かめでたい事を見つけて、気持ちよくのめれば、それは最高の一杯となるのだろうと普通の人なら考えるだろうが、真っ当ではないことをしようとしているのに、真っ当な考えで飲んでいいのだろうか。

 

 普通の考えで飲んだとき、それは最高の一杯の味を落としてしまう、それではだめだ。


 あくまでも最高の一杯を飲みたいのだ。

 簡単に飲めるものではないはずだ、そう苦労して手に入れたほうが、より最高に近くなるのではないだろうか。


 ならば苦労しよう。


 さて苦労といっても、学生の身の苦労というのは、世間的にいえば大人の社会に比べれば、微々たるものだ、しかしできる範囲、できうる限りの苦労を考えねばならない。


 そこで目をつけたのは、人の欲だ三大欲の一つ、食欲、性欲、睡眠欲の3つ、そのうちの一つ我慢すれば、それはできうる限りの苦労をしたといえるのではないだろうか。


 3つじゃ無い理由は、そもそも性欲なんて発散する相手がいないもの、そんなもののどう我慢すればいいのだ、もとよりなんでコレが三大欲の一つなんだよと思う。


 これだけ相手がいないと、実行できないじゃねぇか。


 そして残る二つのうち一つだけ、選ぶ理由は、実行できそうもないからだ。

 できる範囲というのは決まっている。

 高校生の心身では3つのうち、1つしかやり遂げられないだろう。


 高すぎる山は登る前に諦めてしまう、深すぎる海では人はいきれない。


 あくまでもできる範囲だ。

 その中で、最高の一杯を飲むのだ。


 僕が選んだのは、睡眠を我慢することだ、空腹はどこが限界か分かりづらいだろうと思ってコレを選んだ、しかしコレは思ったよりもキツイ。


 夜中おきて、スマホをいじって、動画サイトやネットサーフィンを繰り返し、間食をしたり、お風呂に入ったり、コーヒーを飲んだりしたが、一日と半日で飽きが来た。


 飽きがくると、追い討ちをかけるように、まぶたがすごく重く開けるのも一苦労する。


 此処を乗り越えるんだ、一分一秒過ぎるたびに乗り越える度に、冷蔵庫の見つかりずらいところに隠した

あの缶ビールがおいしさを増しているのだ。


 そう言い聞かせ奮闘するも、いよいよまぶたも脳も眠さを欲している、そして心から飲んで寝たいという欲求に駆られた。


 水戸黄門さまの声で、脳内でもういいでしょうといってくれる存在がでてきた、ふらふらしながら冷蔵庫へとたどり着き、だれもいないことを確認し、背徳の一杯を飲むために缶ビールをもちだし、自分の部屋でその一口を飲むために、缶ビールの蓋を開けようとした。


 眠くて開ける力がでない、何ということだ、こんなにも力が不足するとは、絶望のふちに気が抜けたのか

まぶたを閉じてしまいそうになる。


 いや、此処で諦めたら、最高の一杯を逃すことになる、背徳と我慢それが合わさった、最高の一杯を。


 その願いが叶ったのか、ぷしゅという炭酸特有の音を聞く、お酒特有のあのアルコール臭さが、ダイレクトに伝わってくる、そして飲む。


 その後、目が覚めると朝なのか昼なのか、夜なのか分からぬままに眠り、目をあけると生ぬるいを通りこした、中身の残ったビール缶があった。


 飲んだ気がしない、飲むと同時に寝ていたのだろう。

 最初の一口は確かに最高の味だったはずなのに、その覚えが無い。

 

 まだ部屋に残っているビールを手に取る。 


 僕は最高の一杯を、人生最初の一杯を背徳と幸福が混じった一杯が、ひどい後悔と、なまぬるくおいしさの欠片も無い味だけが僕の身体に染み渡った。

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