innmoraru
僕はさびれたボロアパートで
二人で居た
もう一人は今年30歳になる僕とは違い
酷くあやふやなところがある小学生といってもいい
いや事によるとそれ以下の奴が居た
そいつは今にもやぶれそうな窓側のカーテンに寄っかかって
こちらを見ている
「・・・ねえだいて」
僕は恐ろしいものでも見るかのようにそれを見ていた
いや僕は怖かった
まるで今から補食されるような怖さ
僕は酷く細く小さな華奢なそれを見ていた
高そうでもなくまた安そうでもなく
そんなどれとも該当しないような黒い上下の服を着て
それは長い髪を揺らしてこちらを見た
その黒い沼のような瞳がこちらを見る
白い肌
僕はそれを拉致してきた
しかし奴は言った
私の計画通り
私が全てあなたがこうするように誘ったのよ
僕はでかく醜く太いそんな体を
いつもはあまり感じない
焼けてボロボロの畳を感じながら
玄関に一番近い方に背を向けて座っていた
まるで赤ん坊が座っているような座り方だが
この年でやると実に気持ち悪いものだろう
「ねえ」
それはゆっくりと動いた
そして窓枠から降りると
僕の方に確実にゆっくりとではあったか近づく
先程までその細い首を絞め
腕を握り
布団に押しつけていたとは思えない
まるでそれは、そう悪魔だ
人間以外の
一瞬光の加減か黒目が赤く見えたような気がするが
きっと錯覚だ
それじゃないと余計僕の心は焦る
それほどそれは現実味がなかった
彼女は、それは、本当にその年なのだろうか
細くしなやかで
モデルを小さくしたらこんな感じになるのではないだろうか
そんな彼女を僕は前々から知っていた
パチンコ帰りによる人気のない公園で
いつも砂場で遊んでいるのだ
その夕暮れ時に写る彼女は
実にはかなげで
それで幻想的であった
それは僕が、バイトもクビになり
安いと思って買った物が詐欺で
もう全てがむしゃくしゃしていた
少しつづ貯めていたお金も
なし崩しにどうでも良くなり浪費した
僕に輝きはない
どんなきたいないことでも出来るような気がした
そんなときだった
その日最後の金を使い果たし
いつもより遅くその公園を通りかかった
そしてそれはいたのだ
一人公園の砂場で
黒い闇に紛れるような黒髪を揺らして
一人砂場にいた
僕はそのとき彼女の口を押さえた
気が付くと走ってそしてそのまま
彼女を脇に抱き抱えてはしっていた
彼女はぐったりと抵抗はしなかった
果たしてそれが気を失っていたのか
それとも恐怖だったのか
しかしいまの彼女の言葉が本当であれば
彼女はわざとそうしたという事になる
騒がずに
そして僕が破産して・・いやしていないが自暴自棄になり
そして・・・
僕は部屋にはいると
出しっぱなしの布団にそれを押しつけた
酷く華奢なそれは
鳴くような声を漏らした
僕かまわずそれを押しつけ
そしてその白い顔をなめようとしたとき
それが笑っているのに気が付いた
しかしそれは瞬時に絶望というか
それが危ないと何処かでしらせる
ごく、すごく小さな違和感
後になって気が付くほどの教えられなければ分かることなどないほどの
しかしそのとき僕はそれがおかしいのに気が付いた
その笑いの笑みはヒステリックではない
まるで罠にかかったネズミを見るような猫の目
感情もなく
当然という
僕はとっさにそれから飛び退いた
そして彼女はその飛び退いた僕を追うように
むっくりとおきあがる
しかしそのまま僕を見下げるように見下ろした
その背の高さは
座っている僕と
窓を背に立っている彼女とでは
頭一つ分ほどしか違わないだろう
しかしその後こうのような光は
酷くまがまがしく
血のような色に見えた
不味い
僕はそのとき、この危険さに身のを振るわせる
遅い
何もかもが遅い
ついにお金だけではなく
魂まで
彼女は僕を少し見ていた
しかし永遠にも思えた
いつの間にか彼女はしゃべった
それを僕は窓辺に座っている彼女を見ながら聞く
「お前は何なんだ」
彼女は僕を見てさも自然に首を傾げるだけだった