4話:システムの攻撃方法
4階のさっきいた部屋から出て5階、俺はそこでビームを撃ってくる狂乱の美女と対峙していた。
「けっこうすばやいのね、もう何発撃ったかしら?」
「最初を合わせて18発、そろそろ当たらないって思ってもいいんじゃないか?」
「馬鹿ね、相手が人である限り撃ち続ければ撃ち続ける程命中率は上がるのよ、現にいま息を切らしてるのは誰かしら」
そう簡単には話に乗ってくれないようだ、それに見た目に反して頭がいい。能力の使い方も上手いしさっきの持論に基づいた体力を効率よく失くすような攻撃方法をとってる。確かに僕はいま息が切れてるしそろそろ体力もつきそうだ。こんな時だけ自分に宿った能力が恨めしいし、攻撃できる能力を持っている人が羨ましい。
「ほら、そろそろやばいんじゃないの!」
あっちは休まず撃ってくる、こっちは休むことが出来ず動き続けている、完全にこっちが不利だ、どこかに隠れることが出来ればと廊下を走り回ってはいるが5階にきてもまだそういう場所が見つからない。はいビルだから監視カメラの線も切れてて使えない。コンピューター関連の物が無いと全く使えない俺の能力はただの戦闘ではまったくの無力、できる攻撃も1つだけでそれじゃあの女を戦闘不能にはできない。
「うーん、もう切るのは飽きたわ」
女がナイフをしまって出したのはメリケンサックだ。そして出たビームが当たったところは殴られたようにへこんでいる。さっきからうすうす気づいていたがあの女の能力は『持ったものの特性をビームとして撃ちだすこと』のようだ。距離がどのくらいかわからないけど今の俺と女の距離からして大体10m以上は飛ぶんだろう。
俺はとりあえず空いている部屋に飛び込んで少しでもダメージをあたえるために携帯を取り出した。能力で索敵を開始してコンピューターの位置を割り出す。
1つは女が持つ携帯の位置、2つ目は4階にいるみんなの携帯の位置、3つ目は6階のコンピュータールームらしき場所のパソコンなどの位置。
まず最初にやるべきは女の携帯だ、やってやる!
コンピューターというのは許容量を大きく大きく上回ることで温度が急激に上がり爆発させることができる。俺は女の携帯に入りきらない容量のデータを無理やりぶち込んだ。
「どこにいるのー?どこに隠れても無駄よー」
部屋に女が入ってきた。あと3秒だけでいい、見つけないでくれ。
3……2……1……いけ!
バンッ!
「きゃあああああああ」
ポケットに入っていた携帯が爆発して足に軽度の火傷及び裂傷のダメージが入ったはずだ。これで女の動きを制限できる。
「いったあい、もう動けなーい!」
は?
「おい」
「あ、ちょっと少年ひどいわよ乙女の肌に傷をつけるなんて!」
「す、すいません。でもこれ勝負じゃないですか、しょうがないでしょ」
「しょうがなくなーい、もう勝負は終わりでいいから下までおぶって!」
さっきまで殺し合ってた敵にそんなことできるはずないだろ、まあ勝負は終わりって言ってるし。
「もしもし、凪くん?勝負終わりって宣言されたから上の階に来てくれない?うん、一応ね」
電話で凪くんを呼んで一応変な動きをしないか見張ってもらうことにした。
「今から俺の仲間がくるんでその人が来たらいいですよ」
「はーい」
そのあと凪くんが来て僕が女をおぶっている間周りから攻撃しないか、変な動きが無いかと見ていてもらった。
※※※※※※※※※※※
僕が2階へ先輩の護衛で言って帰ってきた後負けた2人は普通に説教されていた。
「なんで普通に負けてるんだよお前らは!」
「ごめーん」
「まあいい、君たちはこの2人に勝った、じゃあ次は……」
「もうめんどくさいから、終わりでお願いします」
そこでもうめんどくさいと思った僕は能力を使って目の前に行き終了宣言をした。
「は……はい……!」
終了宣言は快く受け取ってもらえたようでもう僕たちやほかの関係ない能力者一般人に迷惑をかけないと約束をしてビルをでた。
「何事もなく終わっちゃったね」
「てか僕と奏は何もしてないな」
「いやでもあのジョンって人はけっこう強かったと思う」
「俺の相手だった女の人も能力はよかったと思うよ」
4人でわいわいと、さっきまで同じ超能力者と殺し合いをしていたようには見えないくらい賑やかに帰っていた。
途中の交差点で僕と奏、先輩と大我に分かれて家に向かっている時、聞いたことのない携帯の着信音が僕と奏の携帯から鳴った。ピーという甲高いどこにいても目立ちそうな大きな音が。
「もしもし?」
『やあ、君の能力を見せてもらったよ』
「は?誰ですか、いたずらなら切りますよ」
『待って待って、今の音は能力者にしか聞こえない特殊な音波なんだ』
能力者、その言葉を聞いた瞬間僕の声質が驚くほど変わる。
「なんの用だ?」
奏の方にも同じ内容の電話が来ていたようであちらも少し眉にしわを寄せている。
『君の能力は実に良い、しかもほかの能力者のことも考えて行動している、でも1つだけ言っておこう』
「なんだ?」
『人に頼らなさすぎているってところだ、確かに君の能力は強い、でも強いだけだ』
「それがどうしたって言うんだ?」
『君を試そうと思う、これからあらゆる時間にあらゆる場所でさっきと同じブザーを鳴らす、そしたら僕の部下が君を全力で殺しに行く、能力者かもしれないし一般人かもしれない、でも武器を使ったりして全力で殺す、自分が殺されるかもしれないのにね?それに対して君がどう戦うかだよ。そして君の周りにいる能力者や君の知らない能力者だっている』
「もしかしたら被害者の僕たち同士での殺し合いもあり得るってことか」
『察しがいいね、でも殺せとは言わないよ。殺すも殺さないも君の自由だし、近くにいるのが友達なら戦わなくたっていいんだ』
「そうか、それをいつまでやれと?」
『僕の気分だ』
「ふざけんな」
そう言って電話を切った、これからいろんな人たちに狙われることになってしまったけどどうにか切り抜けるしかない。たぶん、いや確実にこっちには拒否権が無かったから。
「凪、どんな電話だった?」
「お前はいまから狙われるってさ」
「私も、もしかしたら知らない超能力者とも戦えって言われたけど」
「大丈夫だろ、お前も、お前の周りにも強い友達がいっぱいいるからな」
「うん、そうだね!」
冷静に言った僕の言葉に、満面の笑顔で奏は答えた。