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AnotherWalker  作者: 数多ノつるぎ
3/17

3話:一つの部屋に集う

 部屋に衝撃が走る、超能力者に向けてだけ発信されるメールを知らなければ『力をもつ者の集い』の存在は知れないんじゃないのか、それともネットで堂々勧誘でもしてるのかあの団体は!?

「俺さ、一昨日こんなメールが来たんだよね」

 大我の携帯には昼に先輩の携帯で見たものと同じ内容が書いてあった。

「ずっと隠してたけどさ、俺……超能力者っていうのかな、この場合。それで先輩も狙われてるってことは先輩もなにか能力をもってるんですよね?さっき急にあいつらが倒れたのも先輩が……」

「違うよ大我くん、あれをやったのは……」

 先輩が俺の方を見て、微笑む。そこでしょうがないと僕は小さく頷いた。

「さっきあの2人をと倒してくれたのは凪くんだ、僕も超能力者だけど戦闘向きじゃない」

「てことは凪にもメールが!?」

 大我が焦ったように確認をとりに来た。でも僕は焦らず冷静に話す。

「僕の所には着てない、その集いとやらには必要ないみたいだ。それよりも今気になるのは大我の能力だ」

 そう言われて大我は少しうつむいて考えるような表情になったがすぐ顔を上げて自分の能力を説明し始めた。

「俺の能力は『オーガ』、その名前の通り能力で発動したら身体能力がかなり上がるし見た目もそれっぽく変わる力だ、発動条件は簡単で額の近くで音を鳴らすことだ」

 そう言って大我は自分の額の前で大きく指を鳴らした。すると大我の額からに20㎝弱の角が2本生えてきた。

「これが基本形態でここから腕とか脚とかいろんな部位を変えることができる」


「じゃあ俺の能力も教えておくよ、能力名は『システム』、機械類を自由に動かしたりデータを盗むこともできる能力で、発動条件は携帯でもなんでもいいから機械を視認すること」

 そう言って先輩は自分の携帯を取り出して少しいじると大我と奏の携帯が鳴った。

「2人のメアド、教えてもらったよ」


 それで2人が僕の方を見る。これは僕も紹介する流れなのか……

「僕の能力は『ウォーカー』速度は測ったこと無いけど1秒間音速以上で動くことのできる能力だよ、発動条件は1歩だけ歩くこと」

 これでここにいる超能力者の能力紹介は終わった。

「じゃあこれからのことについて話をしないとな、とりあえず」

「ちょ、ちょっと待って!」

 急に奏が話を止めた。

「軽く聞き流してたけどみんな超能力者なんだよね?」

「「「「そうだけど?」」」

 全員が奏の問いにハモって答える。

「じ、実は私も……そういう能力?みたいなの、もってるんだけど……」

 おいおいまじか、この狭い部屋に超能力者4人も集まるってどんな状況だよ。

「それで奏ちゃんはどんな能力なの?」

 先輩が奏に能力の事を聞きだす。実際僕の奏の能力が気になる、勉強はできないが努力家で部活熱心な少女に宿った能力ってどんなものだろう?

「能力名は『ソナー』、半径50mくらいの位置とか状況を把握できる能力だよ、一応衝撃波とかで戦いにも使えると思う。発動条件は眼鏡を外すだけだよ……」

 ああ、だからあの時眼鏡が無くても老婆が轢かれていないことに気付いたのか。

「なんか……エビみたいな能力だね」

「ちょっと小雪先輩それ気にしてるんですから言わないでくださいよ!」

 奏が顔を赤くして言う。そんなにエビって言われるだけで嫌なのだろうか?ていうかエビって衝撃波なんて使えるのか?

「なんか凪が解らなそうな顔をしてるからとりあえず解説しとく。鉄砲蝦っていうエビがいるんだけどそいつは片方の大きい鋏足をバチンと鳴らすことで威嚇をするんだけど、近くの小動物を気絶させるくらいの衝撃波を発生させることでも有名なんだ、あとこれは補足だけど鉄砲蝦は目が悪い」

 確かに奏の能力や特徴と酷似してるところが多いな。

「そして極め付けに奏はエビが嫌いだ」

 なんでこいつの能力がソナーになったのかまったくわからないけど、まあそんなことは置いておいて今大事なのは今後どうするかだ。今回は僕がどうにかしたけどまた何回も来るだろうしどうしようか。

「とりあえずメールが来てるのは2人だけってこと?」

「そうだな」

「で、問題は先輩なんですけどどうしましょうか」

「どうしましょうかって言われても俺の能力が戦えないから……」

 そこが問題だ。四六時中ずっと先輩と一緒にはいられないし、かといって放っておいたらまたくるであろう黒服に襲われてしまう。ここはやりたくなかったけどあの提案をするしかないか。

「元を絶つしかない」

 部屋が静寂に包まれる、元を絶つということはつまりこういうことだ。

「メールで指定されたところに行ってメールを送った奴に会うしかないだろ。話し合いで解決できるならそれでいいしダメなら能力を使って捻じ伏せる」

「集いって言うくらいだから超能力者がいっぱいいると思うけど?」

「大丈夫だ、あっちが必要としているくらいの能力者がこっちには2人いる」

「俺と先輩のことか?」

「そうだ」

「でも先輩の能力って戦闘向きじゃないのになんで必要なんだ?」

「頭いいくせに馬鹿かお前は、先輩の能力があればどんな厳重なロックのかかった部屋でも金庫でも警察のデータだろうが銀行のATMだろうが使い放題だろうが、悪いことをばれないようにすることを考えたら先輩の能力が最適だ」

「確かにそうだね、組織に1人は欲しい人材かも」

「でもそれなら凪の能力はかなり強いんじゃないか?それなら組織に欲しいだろ?」

 まあ大我の意見には賛成できる。でも決定的に組織には入れないない欠点がある。

「僕を呼ばない理由は1つ、『強すぎるから』だと思う。たとえどんな能力者がいてもその能力を使う前に倒すことのできる能力だから」

「それなら納得だな」

「とりあえず明日指定のビルに行こう、もしかしたらそこで話がつくかもしれない」

「わかった」

 今日はこの話が終わった後4人でコンビニに行って晩飯を買って食べて寝た。でももしかしたら夜に奇襲があるかもしれないと考えた僕らは2時間おきに交代制で起きて周りを見張っていたせいで朝はみんな眠そうな顔をしていた。


 翌日・土曜・PM2:00

「ここがそのビルか」

「見てわかるとおり廃墟だね」

「まあ堂々街に事務所構えられるような集団じゃないからな」

「薄っすいチンピラ感満載な場所だけど」

 全員が指定のビルとそこにいるであろうメールの差出人を馬鹿にして中に入っていった。移動中は奏の全方位ソナーで敵やトラップがいないかを確かめつつ慎重に進んでやっと目的の場所までたどり着いた。


「この中か、誰かいるか?」

「3人いるよ、男の人が2人と女の人が1人」

「たぶん能力者だろうな」

「まあ関係ない、行くぞ」

 決心をつけて扉に向かう、ただ開けるだけでは危険なので全員が能力の発動準備をして奏が衝撃波で扉を吹き飛ばした。

 中に入ると奏が言った通り3人いて真ん中の一人が座っていた。立っている2人はタンクトップにジーンズという格好で男の方はかなりの身長に筋肉質で強そう。女の方は全体的に細いが出るところのでているナイスバディだ。

「奏の全戦全敗だな」

「どういうこと!?」

 不意に出た独り言のせいで戦う前なのに怪我をしてしまった。

「お、ようやく来てくれたんですか国枝さん。我々の集いに参加する気になりましたか」

 真ん中の男が語りかける、すると先輩は一歩前に出てこう言った。

「違う、俺はこの能力をお前たちに預ける気は毛頭ない。だから入らないという意思表示をしにきたんだ!」

 随分と力強い声だ。先輩は能力を大切な人のために使うと言っていた。たぶん、そういう人がいるんだろう。

「ついでに俺もな」

 大我も呼ばれていたことをすっかり忘れていたがまあいいか。

「ならば交渉決裂だ、お前たち、あいつらを殺せ」

「OK、ボス」

 立っている2人がこちらに向かって歩いてくる。かなり腕に自信があるのか余裕の笑みまでうかがえる、めんどくさいけど今から戦うのか。

「さて、2対4でもいいのだけれど公平に勝負がしたいわねジョン」

 ジョンと呼ばれた男が小さく頷く。

「タッグマッチがご希望ならそうしてやるけど?」

「話の分かる男は好きよ、じゃあそちらから2人選んで頂戴」

 ここは僕が出るべきだろうか、それとも他の人に任せた方が僕の能力に気付かれないしそれでもいいかもしれない。

「どうする?」

「ここはこいつらに呼ばれた俺たち2人で行くか?」

 大我がそう言った。確かに僕と奏はついてきただけで直接的な関係は全くない、それなら関係のある大我と先輩が戦いに出るのが筋というものだろう。

「そうだな」

「じゃあ決定、小雪さん頑張りましょう!」

「うん!」


※※※※※※※

 

まだ知り合って間もない俺たちでタッグマッチなどできるのか心配だけれど1人1殺の戦法をとれば難しいことではないだろう、提案したのは俺だし戦闘向きじゃない小雪さんを巻き込んだのも俺だから責任を持って勝とう。この戦いは負けられない!

「小雪さん、大丈夫ですか?」

「問題ないよ、俺だってやればできると思うんだ」

「まあ危なくなったら呼んでください、守りに行きますから」

「ふふ、期待してるね」

 俺たちが戦闘態勢に入る。俺はもう角を出しているし小雪さんは携帯をもっている。問題は敵2人の能力でどんな攻撃をしてくるのかわからない。だから最初は様子を見て戦おう。

「あっちはもう準備OKみたいよジョン、待たしてしまったら悪いわ、早くしましょ」

 ジョンが小さく頷いたと思ったら身体に大きく変化が現れた。虫のような触覚に堅そうな甲殻、俺と同じ身体を変化させるタイプだ。人為変態とでもいうのだろうか?まあ身体能力の向上と変化する生物の特徴を持つことは確実だから俺が相手をしよう。

「小雪さん、あっちの男は俺がやります」

「確かに、あの人は君に任せた方がよさそうだ」

 女の方はどんな能力だ?片方が変化系ならもう一人は凪や奏のように特定の身体能力を上げるか人に無い力を付与するタイプだと思うけど。

「私の能力が知りたそうね、教えてあげましょうか?」

「随分と優しいな、隠せるものは隠した方がいいんじゃないのか?」

「だってすぐにばれちゃうもの、別にばれずに殺せる能力じゃないし」

 それなら知っておいた方がこちらは得だ。

「教えてくれよ」

「これよ」

 女がナイフを取り出しそのの刃先を小雪さんに向けると、ナイフからアニメとかで言うビームが出た。

「うわぁ!」

 間一髪小雪さんが避ける。当たった壁は切断され崩れていた、見たところ貫通するのではなくナイフ同様に切れるものらしい。

「これはきついかも……」

「とりあえず頑張ってください!」

 とりあえず応援しておいた。

 虫のような身体に変化をしたジョンは特別速いともいえない速度でこちらに走ってきた。見た目からして堅い、そして重いだろう相手の攻撃を真正面から受けようとするほど馬鹿正直じゃない俺はかわして打つボクシングスタイルで攻める。

 最初の攻撃は堅さと重さに頼ったタックルだったか単純な直線移動で簡単によけることが出来た。かわした後は横腹に一撃いれたが俺がこぶしを痛めそうなほどに堅い。一応狙われると思って持ち歩いていたナイフを懐から出して顎のところを斬りつけたが全く切れない。甲殻類か、見た目からして外殻系の甲虫類か、羽が全く使えないような形態に見えるところからクロカタゾウムシなどを連想したが色彩がまるで違う。一体何の生物だ?

 そう考えながら避けては打つの攻防をしていると急にジョンは口から液体を吐き出した。

「うわっ」

 なにかしらの毒だと判断して避ける。口、正確には顎のあたりから毒を発生させる、そして吐く瞬間に見えた顎の形からして、

「ムカデか……」

 いやなものに変身するもんだ。虫ってだけでちょっと嫌悪感があるのに毒ありで噛みつくムカデだなんて、でも対処法とかはよくわかった。気をつけるべきはまず毒、次いで打撃、打撃は遅いからどうにかなるとして毒は顔にかかれば終わりだ、これだけは食らえない。確かムカデの毒は蜂に似てるんだっけ、体にかかっても危ないし2回かかれば致命的だ。

 でも狙えばいい所がよくわかった、これなら勝てる。

 ジョンが毒に注意されると悟ったのかさっきよりも早く打撃を加えてきた。でも俺の狙っているのは打撃後の関節。

 体の方に肘を折る時できる甲殻の隙間にナイフを入れて腕を切断する。動揺で動きが止まったところで腹にできる限り重いパンチを食らわせた。ジョンは最後の抵抗か毒を吐こうとしたが、それは自分の体を伝い地面に落ちるだけで気絶したジョンは膝から崩れ落ちた。

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