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格闘ゲーマー、異世界へ。  作者: OTGY
序章 旅立ち
1/11

格闘ゲーマー、新作ロケテストへ。

初投稿です。よろしくお願いします。

『YOU WIN!』


ゲームセンターに勝鬨が響く。

昨今のゲームセンターにおいては過去の対戦格闘ゲーム全盛期は過ぎ去っており、カードゲームや3Dアクションゲームに人を取られそれほど人だかりができるような現状ではないが、今日は大盛況だ。

なぜなら新作の格闘ゲームがロケーションテストとして都内で唯一この店でプレイできるからである。

(ロケーションテストとは開発中のゲームを一部公開し、ユーザの意見の取り入れ、ゲームバランスの調整、市場調査などのために行う、ベータテストの一形態である。以下ロケテと略す。)


「おいおいあいつヤベーよ…ロケテ初日なのに50連勝とかいってんだけど」


「俺たちあいつが遊ぶためのトレモ木偶になってね?」


「うはwwwwwあの技強すぎwwwwww修正されるねwwwwww」


一セットしかないロケテ台をギャラリーが取り囲む中、すでに二時間以上も座席を占領してプレイし続ける男がいた。


彼が勝利し続ける秘訣とは何なのか。


彼は天才ではない。技術は凡百だし、反射神経も特別良いわけではない。

だが格闘ゲームをプレイした期間がとてつもなく長く、そして密度が濃いのだ。

自身の青春時代をひたすら格ゲーに打ち込み続けた結果、キャラクターの強い技や連携を素早く見抜いて開発し、実行できるだけの能力を持っていた。

もし時間があれば今使っている戦術も相手に対策を取られて、いずれ通用しなくなるだろう。

だが、このゲームはロケテ中であり、ゲーム筐体は一セットしかない。

そして自分の順番が来るまで並んで初めてプレイして負けて抜ける側と、長く居座りプレイを続けている側。

単純計算でもプレイ回数1回と、50回。その差はキャラクターを操作した時間に直結し、これからも差は開く一方だ。

先ほどギャラリーが言っていた「トレモ木偶」という言葉は家庭用の格闘ゲーム等に存在するトレーニングモードの何も抵抗しないキャラクターの事であるが、まさに彼は並んでいる対戦相手全員を木偶として1戦ごとに練習を重ねているのだ。

流れに乗った今、初めてプレイするような相手に対して負ける要素は無い。

普通のゲームセンターなら勝ちすぎると対戦相手がいなくなり、ラスボスを倒してゲームが終わるのが定番だが、現状はこの新作ゲームを一目見ようと沢山のギャラリーとプレイヤー達がおり、まったく人が途絶える気配は無い。そして彼は順当に勝利を重ねていくのだった。


そして並んでいるプレイヤー達が彼の経験値となるために100円玉を投入し続け、もうすぐ100連勝にも届こうかという中、その事件は起こった。


「おいアンタ!負けてるんだから連コしてないで順番変われよ!もう5回目だろ!みんなだってやりたいんだよ!」


どうやら負けたプレイヤーが席を交代せず連続でコインを入れているようだ。

負けた男は顔を真っ赤にしぶるぶる震えたかと思うと、台を強く叩いてからギャラリーの中に混ざっていった。


(おいおいさっきから同じキャラがずっと入ってくると思ったら順番無視の上に台パンかよ…まったく感情移入しすぎてマナー悪い奴もいるもんだな)


勝利者側に座っている男はちょっと驚きながらも涼しい顔で次の対戦相手を料理しはじめた。

が、その作業は突然の衝撃と激痛により途中で中断された。


彼の背中にはナイフが突き立っていたのだ。

こみ上げてくる吐き気を堪えきれず、何かを吐き出す。

真っ赤な血だった。

筐体が赤く染まり、ゲームセンターに悲鳴と怒号が響き渡る。

さらに背中に痛みが走ったので彼が後ろを振り向くと、突き立てられたナイフを抜き取った男が何言かを喚いている。


「よくも俺のブリッドゲットたんを嬲りやがって…!」


先程まで彼が対戦していたキャラクターの名前だ。

愛らしい容姿と仕草で初心者がつい手を出したくなる男の娘キャラだが、性能は癖が強く上級者向けであり一見さんが扱えるようなお手軽キャラクターでは無い。


ナイフを持った男が周囲のギャラリー達に取り抑えられているのが見えたが、彼はナイフを抜かれた事により出血多量を起こし、筐体にもたれ掛かるように倒れ、意識を手放した。

リアルファイト ダメ、絶対。

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