16、芳香剤に変身したよー。本当だよー。
くんくん、くんくん。
カッ! 一瞬で目が見開いたよ。
近所の家からの香ばしい匂いが僕の鼻腔をくすぐって目を覚ましたよ。
朝ごはんはこの香ばしい匂いでいいや。
僕は腕を組み、眉をひそめて今日何に変身するか考えた。もうすでに芳香剤になると答えは出ていたが僕は茶番を演じた。
「さて、出かけよう」
僕は耳毛と指毛に「行ってくるよ」と挨拶をした。2匹は僕を見て頬をわずかに上げ小さく鳴いた。
どこで変身しよう。僕は歩きながら考えた。
そして僕はトイレの入り口で変身することにした。
ピッカピカー。
僕は芳香剤の体に説明書を付けた。
『説明書。1、無限の匂いがあなたをユートピアへいざないます。2、ご自由にお持ち帰り下さい。3、優しく扱って下さい』
僕はひたすら待ちました。拾われるまで。
拾われました。
拾ったのは、女の人です。20代だと思われます。
女の人は僕を平素な自宅の玄関に置きました。隣にはバラの花が咲いています。
僕はバラの匂いに負けまいと、匂いを噴射します。プシュッ。
「まあ、とても素敵なお花の匂いだわ。何のお花かしら」
女の人は歓喜の声を上げ、手を叩きます。
この匂いは僕が頭の中でブレンドし大自然に咲き乱れる花をイメージした特別な匂いです。
女の人は僕を抱き寄せ頬をすりすり。うふふ、この芳香剤一生私のよ。
僕は女の人がお花が好きだったので、しばらくはお花の匂いを噴射していましたが、飽きられると嫌なので色々な匂いを噴射することにしました。
ガチャ。
「ただいまー。あーお腹がすいた。今日のご飯はカレーかー」
カレーにはらっきょうだよね。プシュッ。僕はらっきょうの匂いを噴射しました。
「う、うん?」
喜んでくれたかな?
ガチャ。
「ただいまー。今日の晩御飯はラーメンだ」
ラーメンにはゆで卵だよね。プシュッ。僕はゆで卵の匂いを噴射しました。
「え、えー?」
喜んでくれたよね。
ガチャ。
「ただいまー。今日は豪勢な、お寿司だ。早く食べたいな」
お寿司にはワサビだよね。プシュッ。僕はワサビの匂いを噴射した。
「ゴホッ、ゴホッ。め、目が痛い。な、涙が止まらない。なんだこの芳香剤。ふざけんな」
僕は女の人につまみあげられ、外へ出されました。
女の人は家から巨大なハンマーを持って来て大きく振り上げ僕を木っ端みじんにしました。
粉々になった僕はゴミ捨て場で再結集して復活し家へ帰りました。
まだまだ人間は難しい。
心を落ち着かせる為、僕は水の中でウーパールーパーになってゆっくり眠ることにします。
おやすみなさい。




