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あなたの虜  作者: 七緒湖李
本編
72/161

やらかしました

陶器の洗面台の前で、ふぁ、と欠伸を洩らした小鞠は止めていた手を再び動かし、シャコシャコと歯磨きの続きを行う。

昨夜はシモンと同じベッドで寝るってことに緊張してよく眠れなかった。

(ていうかこっち来て泣いたあと、寝ちゃったから余計に寝れなかったのかも)

金色のレバーをひねると蛇口から水が出る。

口を漱ぎ顔を洗ってさっぱりした小鞠は、コットンの布で顔を拭ってプハと息を洩らした。


彼女の左手首に、携帯ストラップして使っていた魔法石が揺れる。

紐に無理やり手を通してみればなんとか入ったので、ブレスレットのように身につけておくことにしたのだ。

鏡に映る自分の顔を覗き込めば目が赤い。

寝不足は美容の大敵なのに。

歯ブラシを洗面台横のスタンドに戻しコットンの布も側に置く。


小鞠はカッレラに来たら水瓶から水を汲んだり、歯磨きは塩と房楊枝でと言われると思っていた。

けれどこちらにもちゃんと歯磨きセットはあるようで、あっちの世界でシモンたちが慣れた様子で歯磨きしていた理由がこれでわかった。

歯ブラシは動物の毛、歯磨き粉は樹液に研磨粉や植物の葉の粉末を混ぜて練ったものだそうだ。

こちらの歯磨き粉は泡立ちはしないが、口の中が新緑のような香りで包まれ悪くない。

というより化学物質を使っていない分、こちらの物の方が体に優しいだろう。


(それにしてもここ、どこのホテルですか?)

水は魔法で地中深くからくみ上げているとかで、さらにこの部屋も魔法のおかげで、水洗トイレや温水が出るバスルームまで完備なんですけど。

しかもこれとは別に王族専用のでっかい湯殿まであるとかで、今度一緒に入ろうとシモンに言われた。

いや、入りませんけど。


日本じゃ機械で便利な世の中にしていたのを、カッレラでは魔法で便利にしているのだと気づいて、「カッレラ王国はみんなこうなの?」とシモンに尋ねれば、どうやらここまで大々的に魔法に溢れているのは王宮の、しかも王族の住む王族塔というところと、政を行う執政塔というところだけらしい。


この便利魔法は大気中に満ちる魔力を魔法石に集めて魔法を持続させる魔法なため、国全体を王族塔や執政塔のようにしようと思うと、カッレラ王国の魔力使用量が増えすぎて世界のバランスがくずれるうえ、魔法石を大量に使用するので莫大な予算が必要になる……とかなんとかシモンがそう説明してくれた。

この世界がまだわかっていない小鞠には理解しがたかったけれど、地球でいう国ごとの二酸化炭素の排出量と同じように、この世界では国ごとの魔力消費量が問題視されるのかもしれない、と自分なりに納得しておくことにした。


王宮の敷地はかなり広いようで、幾つもある建物は塔の形をしているわけではないが、昔の名残りでそれぞれ○○塔と名がついているということだった。

小鞠とシモンの部屋は王族塔の中にあって、ここは王太子夫婦が暮らす区画なのだそうだ。

因みに王族塔と執政塔は回廊で繋がっていて、執政塔は王族が政を行うだけでなく臣たちが仕事をする部屋もあり、昨日、魔法陣を通って最初に着いた神祀殿という場所も執政塔にあるということだった。

話を聞いた小鞠は、王族塔がシモンの家で執政塔は彼の働く会社という感じだろうかと想像したが、あながち間違いではないだろうと思う。


つらつらと昨夜のシモンの説明を思い出していた小鞠は、シェル型の洗面台や金色の蛇口を見つめる。

ともかくも王族はこんなに恵まれた贅沢な暮らしができるのか。

(部屋にあるもの全部、なんかいちいち高そうなんだもん。この蛇口、金メッキじゃなくて本物の金だったりして)

「その通りだ」と言われるのが怖くてシモンに聞けていないが。

ここでの暮らしは贅沢に慣れきってあらゆる感覚が麻痺していきそうだ。

(でもシモンは自分が恵まれているってちゃんとわかってた)

彼のように自分を見失わなければいいのだと、鏡に映る自分を見つめて喝を入れるように頬を叩いて頷く。


(御丸みたいなのを渡されてそこで用を足せって言われなかったんだもん。それは心から喜ぼう)

洗面所から寝室に戻ると既に服を着替えたシモンが待ち構えていた。

飾り気のない白いシャツに焦げ茶のパンツなんてシンプル好きなシモンらしい。

(初めて会ったときみたいな、フリンジ付きのピカピカ服ばっかり着てるんだと思ってたけど、あれって正装だったのかな?)

お后迎えに普段着で行きませんか、そうですよね。

自分の考えに突っ込んでいると、シモンが手でベッドを指し満面の笑顔で小鞠へ言った。


「コマリ、どれが好きだ?どれもコマリに似合うと思うのだが、わたしは特にこのベビーピンクのものがいいと思う。コマリの真珠のような白い肌にきっと合う」

「え!?何、その大量のドレス!いったいどこから」

「そこからだ。わたしたちの着替えはすべて揃っている。さぁ、どのドレスがいいのだ?着替えはわたしが手伝おう」

普段の生活部屋に続く扉、トイレの扉、バスルームの扉ときて、残る扉はクローゼットでしょうけど。

開け放たれた扉の向こうにレンタル衣装屋もびっくりな、でっかい衣装部屋がありました。


ウォークインクローゼットって可愛いもんじゃなく、なんか奥行きがありえないのは、例の空間を無理やり広げる魔法ですか?

そういえば昨夜、あそこから裾長のネグリジェや下着を、恥ずかしげもなく普通に持ってきてくれたっけね。

まぁドロワーズって鼻血を噴くようなセクシーな下着ではないだろうけど。

ドレスを見つめた小鞠が、はあ、と溜め息を吐いたとたんシモンは首を傾げた。


「気に入らないか?では別のものを――」

「いらない」

「え?」

「ドレスばっかりこんなにいらないっ!毎日とっかえひっかえしても、いったい全部着るのに何日かかるのって量でしょう。国中のドレスを集めてきたの!?」

「いやまさか。ただわたしが后を迎えるということで、皆が張り切って揃えてくれたようなのだ。わたしがあまり数は必要ないと言ったのでこれでも控えてくれている。コマリは倹約を好むがここは皆の気持ちを汲んで堪えてくれないだろうか」


「控えてるの?これで!?」

「亡くなった祖母などはこの倍以上の広さのドレス部屋を持っていた。それに装身具部屋や靴部屋は別だったそうだぞ」

「う、わ、もう贅沢が桁違い……。シモン、わたしもうドレスも装飾品も靴もいらないからね」

額を押さえた小鞠はそう洩らし、シモンが選んでくれたベビーピンクのドレスを指差した。

「ドレスってよくわかんないからシモンが選んでくれたやつにする」

「そうか、では手伝おう」

ネグリジェにシモンの手がかかったため、小鞠は「ん?」とやっと気がついた。

腰の辺りから一気に捲し上げられそうになって、反射的に寝衣を押さえると背後に後退る。


「さらっと何しようとしてるのっ、このスケベ!」

「ドレスは一人では着にくい。だから着替えを手伝うと――他意はないぞ?」

「嘘つけっ!顔が思いっきり嬉しそうじゃないっ!!バカバカ。あっち行って」

「スミトには見せてわたしにはダメというのがやはり納得がいかない」

「ちょっ……じりじり近づいて来ないでっ!嫌ったら嫌っ!!もーっいい加減にしろっ、このドスケベ王子がぁっ」

壁に追い詰められた小鞠がパカンとシモンの頭を叩いた瞬間。


「おはようございます。シモン様、コマリ様」

笑いを滲ませたような声に二人がそちらを見れば、隣部屋への扉が開いていて、笑顔のテディがそこにいた。

彼の後ろには知らない人間が三人。

そちらは瞳が零れ落ちるのではないかというほど、目を見開いているのがわかった。


「ああ、おまえたちか。そういえばリクハルドは朝一番でここへ来ると――どうしてトーケルとグンネルまでいるのだ」

叩かれて乱れた髪をかきあげたシモンの背中に、思わず小鞠は隠れてしまう。

(わたしいま、寝起きのままの姿なんですけど~)

テディは一緒に暮らしていたためパジャマ姿の小鞠を見ているが、初対面の人物に対して見せるのは憚られる。


「ん?コマリ、どうして隠れる?」

「だってまだ着替えてないし」

「だからわたしが手伝うと言っているだろう」

「またそこに話を戻すのか。エロシモンっ!」

知らない人がいることも忘れて小鞠が拳を握ると、「あの」と女性の声がした。

「着替えならわたしがお手伝いしましょうか?」

「ぜひお願いしますっ!」

シモンがショックを受けてるみたいだけど知るもんか。





男性は隣の部屋に待機ということで、寝室に小柄な女性と二人残った小鞠は、焦げ茶の波打つ髪を持つ彼女に頭を下げた。

「えっと、コマリ・サハラです。よろしくお願いします」

とたんに息を呑んだような気配が伝わってきたため小鞠が顔をあげて首を傾げると、彼女は我に返って「王宮魔法使いのグンネル・ベイロンでございます。グンネルとお呼びください」とにっこりと笑顔を向けてくれた。

年上だろうが笑うと少し幼くなって可愛い感じの女性だ。

右耳に彼女の瞳と同じ色の、緑の丸い石が光っていてとてもよく似合っている。


「それで、コマリ様はどのドレスをお召しになるのですか?」

「あ、えと、そのベビーピンクの」

「こちらですね。ではまずコルセットをつけましょう」

や、やっぱりつけるんですか、コルセット。

ベッドの上に矯正下着のようなものがあるからもしやと思っていたけれど。

そして初対面の女性の前で上半身裸になれと……い、いやもうここまできたら覚悟を決めよう。


チューブトップのように胸から腰の辺りまでをコルセットで覆われた小鞠は、ギュっと後ろから紐を縛られて思わず息を詰めてしまった。

「きついですか?」

「な、なんとか大丈夫で……す」

いや、死ぬかも。

「ではもう少し締めましょう」

はいっ!?なぜですか?

尋ね返すより早く、力いっぱい紐を引っ張られて小鞠はギブアップした。


「む、無理~!それ以上は無理ですってば。く、苦しいっ!!無理無理無理!!」

じたばたとグンネルから逃げようと小鞠がもがいたところで、隣部屋から扉が勢いよく開いた。

「コマリの悲鳴が聞こえたがなにかっ……――ああこれは、なんともあられもない姿だな。むしろ何も着ていないよりそそるものが……」

まじまじと下着姿の自分を見つめるシモンの視線が胸元にいったことで、小鞠は「ぎゃあ」と悲鳴をあげて座り込むと真っ赤になって叫ぶ。


「着替えてるってわかっててなんで入ってくんのよぅ!ていうかどこ見たんだ!出てけ、バカぁ」

「本当にコマリは怒ると勇ましい。グンネル、コマリが嫌がるようならコルセットはやめておくのだ。わたしの見立てよりも細い。そのようなもので矯正しなくとも大丈夫だ」

「かしこまりました」

パタンと扉が閉まる音と同時に、グンネルが「コマリ様」と声をかけてくる。

その声が笑っていたため小鞠が目を向けると、こらえきれないように吹き出されてしまった。

「す、すみませ……以前からお元気な方であるとの話を伺っていましたが、まさかこれほどとは――」

「そんな控えめに誤魔化してくれなくていいです。貴婦人とは程遠いって自分でわかってますから――んと、コルセット外してもらっていいですか?」


この世界にはファスナーがないようでボタンやフック、リボンがその代わりらしい。

背中にフックが並んだドレスは、胸の辺りに絹シフォンを重ねその上を刺繍で飾っていて、小鞠の心もとないボリュームをカバーしてくれているように見える。

(ブラがあれば持ち上がるからちょっとは違うのにぃ~)

裁縫はあまり得意じゃないけど、つけてきたブラを見本によく似たのを自分で作ってみ……れるわけないよね。

いくらなんでも下着を作りたいから裁縫道具と布をだなんてシモンにだって言えない。

(うぅ、重力なんて嫌いだ)


ドレスのスカート部分は後ろが長くS字を描いた優美なシルエットで、ヨーロッパの絵画に描かれている動きにくそうな膨らんだものではなかったためホッとした。

鏡台の前に座って薄く化粧を施され、装身具を首や耳につけられたときは、その宝石の大きさに驚いたが、これも張り切って用意してくれたのだろうかと思うと怒るに怒れなくて、小鞠は「もう無我の境地になる」とやけっぱちで諦めた。


「艶のある素敵な黒髪ですね。ですがコマリ様の髪の長さでは結うには少し短いようです。ヘッドドレスを飾ってみますか?」

ブラシで髪をとかしてくれているグンネルの提案に、小鞠は孔雀を思わせる飾りが浮かんで首を振った。

「ドレス負けしてるうえにド派手な髪飾りをつけたらもうピエロだしこれで充分です。ていうかそういう普通の服でいいのになぁ」

鏡越しにグンネルの服を見つめると彼女はくすくすと笑った。

「何をおっしゃっているんです。とてもお似合いですよ」

言いながらグンネルが自分の耳飾りの緑玉を取って、ポイと宙に投げた。


「お世辞でも嬉しいで……すぅーっっっ!?」

緑の髪と瞳をしたお姉さんが現れましたけど、白目部分がないとか風もないのに髪や服がゆれてるとか、もう絶対人間じゃないですよねっ!!

「ああ、すみません。驚かせるつもりは――彼女はモアと言ってわたしを守護してくれている精霊です。モア、この方がコマリ様だよ」

「は、はじめまして」

驚きから立ち直った小鞠が頭を下げて挨拶をすると、モアという精霊は優しく微笑んで、真似をするようにお辞儀してくれた。


澄人の式神を見ていたおかげか、不思議に順応するのも早くなったものだと自分で思う。

モアはスミトの式神とも昨晩見た妖精とも違うような気がする。

「精霊って妖精とは違うんですか?」

式神のことはグンネルに話が通じないだろうと、そこは触れないで質問をすると、

「え?そうですね。精霊は森羅万象の根源を成す「気」が具現化したもので、妖精は自然界からだけでなく、思いのこもった物などからも生まれ――……えー、例外はありますが、触れられないのが精霊で、触れられるのが妖精と思ってください」

小鞠が理解不能という顔をしたためか、グンネルはざっくりした説明に変えたが、そちらの方がわかりやすい。


「どこかで妖精をご覧になったのですか?それともコマリ様の世界にも妖精が?」

「昨日庭で見たんです」

小鞠が答えると彼女は、ああ、と納得したようだ。

「モア、花をコマリ様の髪に飾ろうと思うんだけどさ。今晩まで萎れないようにもたせてくれる?」

頷く精霊が消えて数十秒後戻ってきたときには、ピンクの色をした花が鏡台に並んでいた。

グンネルが小鞠のサイドの髪を頭部で纏めて、そこにピンに引っ掛けた花を飾ってくれた。

「花の精のように可愛らしいですよ」

「馬子にも衣装ってわかってます」

「マゴニ、モイショウ?」

日本の諺のほとんどは、そのまま通訳されず伝わってしまうことを思い出して小鞠は首を振った。


グンネルとモアに礼を言って椅子から立ち上がり、鏡台の鏡を前に一度くるりとまわってみる。

「こういうの、着たことなかったからやっぱりうきうきはしちゃうなぁ。でも動きにくい」

「動きにくいのですか?もしかしてどこかお体に合わないところがおありですか?」

「あ、そうじゃなくて、こういう長いスカートなんてわたしの世界じゃ穿かないし、上等なものだろうから汚すのも怖いってだけで――サイズはぴったりです。ん?あれ?なんでわたしのサイズがわかったんだろ」

「シモン様はご存知のようでしたが?昨夜、ジゼルにコマリ様の身長や体型を伝えていらっしゃいました」


「え、なんで知ってるの?っていうかジゼルにわたしの身長とか教えるってどうして」

「コマリ様の新しいドレスの意匠をジゼルに考えるようおっしゃっておりましたし、お体の特徴に合わせたほうがよりお似合いになるドレスができると思われたのでしょう」

グンネルの返答に小鞠の倹約センサーが警報を鳴らした。

ジゼルにドレスのデザインを頼むとかよくわからないことはあるけれど、そんなことより――。

(これ以上無駄なお金を使ってどうするの!)

隣の部屋に駆け出しかけてスカートの裾を踏んづけつんのめる。

「もう、やっぱり邪魔っけだ」


両手でスカートを持ち上げて隣の部屋に飛び込み、

「シモンっ、これ以上ドレスはいらないってさっき言ったのに、どうしてジゼルにドレス作りを頼んでるのっ!?」

室内がしんと静まり返って全員の目が自分に集まったため、小鞠は驚いて立ち尽くした。

(あ、あれ?なんかさっきより人が増えてる)

揃いのメイド服に身を包んだ女性が四人、廊下に続く扉の前に並んでいた。


もしかして話の邪魔をしてしまったのだろうかと、一気に冷静になってうろたえた彼女は、無言で近づくシモンを見上げた。

「お、お話の邪魔をしてごめんなさい」

笑顔の消えた顔に怒らせたのかと後退った小鞠は、シモンに強く抱きしめられて「う」っと息を詰まらせる。

「コマリ!どれだけわたしの胸を貫けば気がすむのだ。なんと可愛らしい。ああ、このままどこかに閉じ込めてしまいたい」

両頬を挟み込まれて仰のかされ、なに?、と思ったときには口づけられていた。


舌先が唇を割ったのを感じて反射的にシモンを押しのける。

「……っ、ひ、人前でしないって言ったくせにっ!」

「人前だから我慢したとは言ったが、しないと約束した覚えはないぞ?」

「ならいますぐ約束して!」

「難しいな。体が勝手に動いてしまうのだ。今も気がつけばコマリに口づけて――」

「男の風上とやらはどこへいったっ!」

「大丈夫だ。それに関してはまだ今のところ理性はもつ。……と思う」

「と思う、ってなによぉ」

 

シモンを恨めしげに見つめた小鞠は、またしても痛いほど感じる視線に気づいて周りを見回した。

テディは横を向いて笑いを噛み殺しているが、他は皆一様に吃驚した顔になっている。

ああしまった、もうこれ、完全にやらかしちゃった。

さっきから散々シモンに怒鳴ってたし、こんなのが王子の相手かとがっかりしてるに違いない。

(で、でも挽回は可能かもしれないし)

うん、と気合を入れた小鞠はぺこりと頭を下げる。

「あ」とシモンが声を発したが彼女は気づかなかった。


「お騒がせしました。コマリ・サハラです。これからよろしくお願いします」


よりよい人間関係を築くにはまず挨拶が基本よね。

よし、これで少しは名誉挽回も……ってあれぇ、みんなさっきよりも驚いてますが。

何か間違えたのだろうかとシモンを見上げれば彼も困ったような表情になっている。

えぇ、もしかしてまた何かやらかしちゃったの?

 


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