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あなたの虜  作者: 七緒湖李
本編
61/161

別れと帰還

ビルの建築現場に足を踏み入れたテディはなるだけ音を立てないように、まだ鉄骨を組み上げただけの作業場へ進む。

こちらの世界の巨大な建築物は鉄を組み上げてできるらしいが、職人はどうやってこれほど大きな鉄を打っているのだろうか。


我が国にない技術を持ち帰るな、とシモンに固く禁じられたことを思い出し、彼は一瞬浮んだ疑問を頭から追い出す。

技術の進歩はめざましい世界だが、同時に自然の息吹をほとんど感じない。

テディはシモンが何を懸念しているのかがわかるような気がした。 


彼はシモンの側を離れた後、人目のない場所で急いでカッレラと連絡を取りシモンの指示をリクハルドに伝えて、もしもの時にと落ち合う場所とされていたここへきた。

あのままゲイリーとは話し合いですんでいるわけがないと思っての判断だったが、人の気配を感じなくて判断を誤ったかと焦る。


満月のおかげでなんとか視界は利くためテディは周りを見回した。

そこへ暗がりから誰か人が姿を現したことで反射的に身構えた。

手にした餞別入りの紙袋がガサリと音を立てる。

「待て、俺たちだ」

聞き覚えのある声と月明かりの元まで歩んできた人物はオロフだった。

その後ろにスミトとジゼルもいる。


「シモン様とコマリ様は?」

オロフに問うと彼は首を振った。

「まだいらっしゃらない」

「まさかゲイリーたちに捕まったんじゃないだろうな」

「わからない」

曖昧な返事に、

「オロフ、おまえがついていながらっ……」

と彼は珍しく声を荒げてオロフを睨みつけた。


「待ってや、テディ君。オロフ君かてほんまはシモン君らを守りたかったやろうに、ボクとジゼルに途中で出くわしてしもて、ボクらの側でゲイリーらの魔法攻撃からずっと守っててくれたんや。朧と玉響にも手伝ってもろてなんとかあいつらは撒けたけど、朧も玉響もダメージ受けてしもてシモン君ら探しに行かせることも無理やし――」

ほんまにごめんと頭を下げるスミトの隣で、ジゼルも一緒に頭を下げてきたため、テディは黙り込んだ。

いくらスミトとジゼルが主の友であっても、このような場合、本来なら主以外は切り捨てねばならない。


「お二人が魔法石を持つからといって防御は絶対じゃないかもしれない。わたしたちは魔法使いではないからその辺りがわからないだろう」

「わかっている。カッレラに戻ったら処罰は受ける」

そう答えるオロフの性格はテディもよく知っている。

真面目で少し頭が固いが情に厚く友思いだということを。

(シモン様とコマリ様は魔法石をお持ちだ。おそらくたいていの攻撃からは守られるはず)

きっと二人揃ってここへいらっしゃると信じよう。

冷静さを取り戻したテディはそう自身に言い聞かせた。


「――だがわたしもおまえと同じことをしていたと思う。そしてシモン様はそのようなことで罰を与える方ではない」

厳しい表情を改めたテディの言葉にオロフはわずかに目を見開き、すぐに「ああ」と頷いて小さく笑った。


テディはすぐに頭を切り替えると、オロフからスミトへ切れ長の眼差しを移した。

「我が国の魔法使いによると、異世界間を人や物が行き来させるには、送る側の世界から押し出す力が必要なんだそうだ。ただこちらは世界に満ちる魔力が全体的に希薄で、押し出す力が弱いらしい。だからカッレラ側から無理やり引っ張る状態になり、我が国の魔法使いたちにより負担がかかる。今回満月の力で補ったとしてもまだ足りないようだ。だからスミトの魔力も使いたいということなんだが――」


「ああ、ええよ。無理言うてくっついていくわけやしそんくらい」

「こちらには魔法使いを護力で守る神官がいない。根こそぎ魔力を持っていかれるかもしれないそうだ。最悪、数日寝込むことになる」

「あははー、死なん程度に頼むわ~」

いつものへらりとした笑顔が浮かんで頷くスミトをジゼルが心配そうに見つめる。

「スミト、死ぬって言った?」

「ああ、ごめん。また日本語で――大丈夫、大丈夫。ボク、こう見えて体力はあるしいまのは冗談だから」

ジゼルがやっと微笑んだところで、最初に気配に気がついてそちらを向いたのはオロフだった。


テディが目を向けるとシモンとコマリが歩んでくるのが見えた。

「2人とも無事だったのね!」

ジゼルが良かったと両手を握り合わせる。

「おまえたちも無事だったようだな」

コマリの手を引いたシモンは4人に近づくと安堵したように笑った。


「魔法協会につかまったんじゃないかって心配してたの」

「シモン君も小鞠ちゃんも魔法の道具で守られてるって知っているけど、ちょっと遅いからボクもヒヤヒヤしてたよ」

「そうか。すまなかった。――おまえたちにも心配をかけてしまったようだ」

シモンがテディとオロフを見たため、テディは「ご無事でなによりです」と告げる。

シモンに怪我が見当たらないことを見て取ったテディは、側にいるコマリも素早く確認し、そのせいで彼女の表情が浮かないことに気がついた。

どうかなさったのだろうかと思ったところでシモンに名を呼ばれて向き直る。


「カッレラからはなんと?」

「あ、はい。準備が整い次第連絡があるはずです。が未だ何もありません。急がせましょうか?」

「いや、何度も連絡を取ったりすればいたずらに魔法使いたちを消耗させてしまう」

首飾りを外しかけていた彼はシモンの制止に鎖から手を離した。

だが、そのタイミングで頭の中に軽やかなベルのような音が鳴ったためピクと反応する。


「シモン様」

眼差しを向けると頷きを返され、テディは今度こそ首飾りを外して魔法石を掌に押しつけた。

その瞬間魔法石は消え、かわりに小さな魔法陣が浮き上がる。

光り輝く丸い魔法陣の中で影が形を結び、すぐに男が映し出された。

カッレラ王国の魔法使い、リクハルドだ。

テディは掌を自分に向けて魔法陣に映る赤毛の魔法使いを見つめた。


『待たせたな、テディ。こちらの準備は整った。あとは異空間移動の入口となる鏡を安定した場所に置いてくれればいい。シモン様のご命令ではじめるつもりだが――』

「すぐに始める」

リクハルドの言葉に被せるようにシモンが言ったため、テディは思わずコマリを見てしまった。

さっきの様子が気にかかったからだが、彼女は皆から一歩引いてカバンに手を突っ込み、なにやら探していて話を聞いているのかわからない。

『テディ?側にシモン様がいらっしゃるのか?いま声が……』

「ああ、わたしだ。リクハルド、すぐに始めよ」

テディの右手の前に顔を出したシモンが命じると、リクハルドは即座に頷いた。


『かしこまりました。そちらに魔法使いの方がいるとテディから伺っています。いまから鏡の側にある魔力は無差別に奪いますから、そのおつもりでいらっしゃるようにとお伝えください。いくら満月でもそちらの世界の月の力は思った以上に微力で、魔力を増幅させる魔法石も4つと全く足りませんし、かなりのご負担を覚悟いただかねばなりません』

「わかった。伝えよう」

『ではシモン様、お帰りをお待ちしております』

魔法陣が消えて連絡が途絶えると、テディの掌に再び首飾りがあらわれた。


「スミト、いまリクハル――魔法使いに言われたのだが、鏡の側にある魔力は無差別に奪うことになるそうだ。こちら側の魔法石が足りず魔力増幅もそうできないらしくて、相当な負担があるということだが」

「ああ、テディ君にも聞いてるし覚悟は決めたよ」

シモンとスミトをやり取りを聞きながら、テディはポケットからコマリの小さな鏡を取り出し、全員から一定の距離を離した場所に置いた。

そこにほとんど星の見えない夜空が映る。

自分たちがカッレラ王国に戻ったあと、この鏡はここに残るはずだ。

(コマリ様がお忘れにならないように申し上げておかなくては)


またしてもテディがコマリに目を向けると、誰かから連絡でもあったのか今度は携帯電話を操作して、それをカバンに押し込んでいた。

そしてテディが声をかけるより早く、何か決心した様子でシモンに近づいていく。

「シモン、これ返す」

彼女が開いた掌には魔法石があった。

「いや、コマリ。これはコマリを危険から守るものだ。持っていてかまわな――」

「わたしは澄人さんとは無関係の一般人なんだから、マジックアイテムなんて持ってちゃおかしいわ。それにこれがなければ、異世界なんて知らない、で魔法協会に押し通せる」

シモンは押し黙ったまま魔法石を受け取ることに躊躇いを見せていた。


(コマリ様がこちらの世界にお残りになるのであれば、コマリ様はシモン様のお后候補ではなくなる。いままでのように命を狙われることはないかもしれないが――)

しかし完全に安全ではないのだ。

愛魂の相手を消しておかねば安心できないと、敵は思うかもしれないのだから。

きっとシモン様もそうお考えになって迷っていらっしゃるに違いない。


「小鞠ちゃん、ボクらと一緒においで。珍しくゲイリーが小鞠ちゃんを気に入ったとはいえ、結局あいつも魔法協会の人間や。協会の命令には逆らわへんやろ。そうなったらどんな目に合わされるか」

スミトが助け舟を出すよう口を挟んだがコマリはきっぱりと首を振った。

「魔法協会って実力主義なんですよね。じゃあ澄人さんとライバルだっていうゲイリーさんの発言はかなり力があるでしょう?わたし、やっぱりあの人のことはそこまで悪い人には思えません。だからたぶん、大丈夫です」

スミトにそう言ったコマリはもう一度シモンへ魔法石を差し出す。

もはや誰も何も言えなくて、テディもただ二人を見つめた。


「わかった」

やがてシモンが彼女の手から魔法石を受け取ると、「シモン様」とオロフがそれをとめるように声をあげた。

シモンは眼差しでオロフを黙らせ、コマリから渡された魔法石を上着のポケットに押し込むと、かわりにカバンを首から外して彼女に手渡した。

「コマリからもらった「お小遣い」が入っている。テディとオロフの分も一緒だ。返しておかねばな」

「あ、じゃあボクも小鞠ちゃん全財産渡していこかな。シモン君らの国じゃ使えんし」

シモンに乗じて財布ごとスミトに金を押しつけられたコマリは、戸惑ったように彼を見上げた。


「あの……澄人さん、全財産って?」

「今日まで世話になったやろ?お礼やって。まぁ、財布に入ってる分しかないけど……僕の気持ちや思て受け取ってや」

「じゃあ。えと、ありがとうございます」

頷くスミトの次にジゼルが彼女に抱きついた。

「元気でね。コマリ。離れてても友達よ――あ、わたしの言葉はわからないのかしら?」

「シモンが側にいるからまだ大丈夫みたい。わたしもジゼルのこと大事な友達だって思ってるから。元気でね」

ジゼルを抱き返したコマリは彼女と微笑みあって身を離すと、テディとオロフに向き直ってこちらを見上げてきた。


「2人とも、今日まで守ってくれてありがとう。なんかお姫様になったみたいだった。ちょっと恥ずかしかったけど」

ふふ、と微笑むコマリに彼らは同時に胸に手をあて礼をとった。

「もったいないお言葉をありがとうございます。コマリ様はシモン様の大切なお方ですから姫となんら変わりはありません。少々型破りではありましたが」

「テディってば最初、わたしのことを平民って言ったくせに」

口を尖らせる彼女にテディは慌てて「申し訳ございませんでした」と謝罪を口にする。


あの時はまだ彼女の人となりをよくわかっていなかった。

だが折に触れて優しさを知り、実は面倒見が良く思いやりのある女性だと気づいた。

コマリはおかしそうに笑って「冗談」と首を振った。

「コマリ様と過ごした時間はとても楽しくまた有意義でした。シモン様だけでなくわたしたちのことまで気遣ってくださってなんとお心の優しい方だろうと。短い期間ではありましたがコマリ様にお仕えできたことをわたしは忘れません」

オロフらしい率直な別れの挨拶に、彼女は「わたしも楽しかった」と笑顔を深め、最後にシモンを見上げた。


「いい王様になってね――」

まだ何かを言いかけるよう唇が動いたが、それ以上声を発することはなく、コマリは誤魔化すように口の端を持ち上げた。

「それがコマリの望みであるならばいままで以上に努力する」

シモンが一歩近づくと彼女は同じだけ後退った。

その様子にシモンは一呼吸分沈黙してから右手を差し出す。

コマリの瞳が涙に揺れ、それを隠すようにうつむいた彼女がシモンの手を握る。


テディは二人を見つめながら思わず拳を握っていた。

おそらくシモン様ももうコマリ様の気持ちに気づいている。

(それでもコマリ様のお心を優先させるのか)

こちらの世界に残ると決めたことを――。

「コマリの幸せを願っている……――元気で」

そう言って先に手を離したのはシモンだった。

コマリの手が握手をしたときのままの形で残って、けれど震え始める手を隠すように握ったのがテディにはわかった。


「テディ、カッレラからこちらへ出立したときのように、魔法陣が現れればそこに踏み込めば良いのか?」

「はい」

「そうか。まだなんの予兆もないが――スミト、何か感じるか?」

「んー、なんかちょっと前から変な感じちゅうかな。しゃがんでて急に立ったときに起こる立ちくらみとか、血の気が引いていくみたいなな?そんな感じが続いてるけど魔力奪われる経験なんてないからよぉわから……ん?――」

スミトがおかしな言葉の区切り方をしたのは、近くでバタリと何かが倒れる音がしたからだ。


見ればスーツ姿の男が昏倒していた。

それを合図にそこここで魔法使いたちが姿を現し始めた。

いや、現したというよりは現さずにはおれないというほうが正しいだろうか。

なにしろ皆一様によろめいたり膝をついている。

別れの挨拶に気を取られていたが、いつの間にか魔法協会に居場所を突き止められ、囲まれる寸前だったようだ。

そこへまた一人、魔法使いが意識を失ったのか地面に倒れこんでしまう。


(鏡の近くにある魔力を無差別に奪うとリクハルドが言っていたが、おそらくはそのせいか?)

こちら側の魔力が不足しているし、厄介な魔法協会の魔法使いたちも倒れてくれるし、これは丁度いいかもしれない。

どうやら魔力量が少ない魔法使いたちから倒れていっているようだ、とはゲイリーが最後に姿を現しスミト同様未だ膝をつかない様子からわかった。

とはいえ魔力を奪われて堪えていないわけではないらしく、眉間に皺を寄せた彼はどこか辛そうな様子で周りを見回した。


既に立っている魔法使いはスミトとゲイリーの2人だけだ。

他は気絶しているか、意識はあってもへたりこんでぐったりとしている。

「これはいったい……スミト、わたしたちに何をした?」

スミトが罠を張ったと勘違いしたのか、ゲイリーが彼を睨みつけたちょうどそのとき、鏡がまばゆく輝いて噴水のように光が溢れだした。

溢れた光は宙に集まり煌く魔法陣となって、辺りを明るく照らしながら更に輝きを増していく。

「なんだ、これは」

「見たこともない魔法陣だ」 

意識のある魔法使いたちが呆然と呟く声が聞こえた。


「何をしたって、なんとなくわかっているだろう?君たちの魔力を奪っているんだ。しつこく追い回されるのもいい加減うんざりだし、君たちがボクを追えないような国へ新しい仲間と行こうと思ってね。ただこの魔法を維持するには結構な魔力が必要なんだ。一応手加減はしているつもりだけど運悪く死んだらごめん」

ニ、とらしくない悪人面をしたスミトがゲイリーに言い放つと、彼ではなく周りの魔法使いたちが顔を引きつらせた。


「まさか……空間移動ができる魔法なんて存在するのか?」

「ニシカタほどの実力者なら……奴は魔法協会に来るまでに陰陽術や錬金術なども学んだと聞いているし、それらの知識を生かして新しい魔法を作ったのかもしれない」

「魔力を奪われて死ぬ?」

ゴクリと息を呑んだ魔法使いたちは怯えたように地面を這いずって逃げ始めた。

仲間の情けない姿にゲイリーはわずかに目を細め、すぐにスミトに向き直った。

彼にはスミトの嘘がわかっているだろう。

なのに追及しないのはなぜかテディにはわからなかった。


ともかくカッレラへの道は開いた。

「いまのうちに参りましょう、シモン様」

シモンに近づいてテディは小声で促す。

「わかった」

頷いたシモンが魔法陣へ足を向け背後にテディとオロフがつき従う。

ジゼルの肩を抱きかかえるようにしてカモフラージュし、実は彼女に支えられているスミトも側に並んだ。

魔法陣の前でシモンが立ち止まり、けれど振り返ることなく足を踏み出した。

テディも主に倣い、輝きが臨界に達する光の中に足を踏み入れる。


「シモンっ!」

「待てスミト!!」


背後から2人同時に鋭い声が聞こえたとき、シモンが弾かれたように振り返ったのをテディは見た気がした。

そこへいきなり背中にドンと何かがぶつかって、衝撃に「うわっ!」と前につんのめる。

そのまま前に倒れこんだ彼は次の瞬間、冷たい石の床の上に手をついていた。

手にしていた餞別の品が袋ごと床を滑る。

すぐに周りでドタドタと音がしたため、テディが体を起こして背後を振り返ると、臨界点をむかえた光の洪水が急速におさまって魔法陣が消えていくところだった。


「痛ぁっ。もう、いまの何?」

「アタタ、なんか後ろからドーンと……――あー、あかん。体重っ、ダルっ!」

その声はジゼルとスミトのもので2人はそろって体を起こす。

「いきなり俺たちにぶつかってきたのはスミトたちだったのか――ま、なんとか無事に神祀殿に到着したようだが……大丈夫か、テディ?」

テディの側でオロフが肩膝を立てて座り苦笑を向けてくる。

「ああ。それよりシモン様は……」

「うっ、痛ぅ……いきなり何をする」

呻くような声にテディはハッとそちらを向いた。


「シモン様、お怪我は……――」

ありませんか、という言葉は驚愕のあまり喉にはりついて出てこなかった。

石床に手をついて体を起こす最後の人物の、栗色の巻き毛がテディの瞳に映る。

「ゲイリー!?なんでおまえがここにおるねんっ!」

素っ頓狂なスミトの声にテディは血の気が引いた。

そうだ、自分は彼の名前を知っている。

ゆら、とテディは男に近づき胸倉を掴んで引き寄せた。

「ゲイリー・バーク。どうしておまえがここにいる。シモン様に何をした」

はりついて出てこなかったはずのテディの声は、空気を凍らせるほど低く、淡緑色の瞳は鋭利な刃物のごとく冷たかった。



そう――。

全員無事にカッレラ王国へ戻ってきたはずが、第一王子たるシモン・エルヴァスティの姿だけが神祀殿のどこにもなかったのだ。




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