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あなたの虜  作者: 七緒湖李
本編
16/161

ヘタレな片想い

模擬店に顔を出すとゼミの友達が気軽に声をかけてくる。


「コマちゃん、手伝いに来てくれたの?助かるぅ」


けっこう繁盛しているかも。

今日、日曜日だから人多いし、昨晩少し冷え込んだから温かいもの食べたいもんね。

おでんの具財足りるのかなぁ。

なんなら買出しに行くと言ってみよう。


小鞠が女の子たちに近づく後ろで、

「あっ、テディ。昨日、テディの教えてくれたように客に呼びかけたら、売り上げが伸びたって聞いたけど、今日も客寄せしたいから教えてくれよ」

「オロフ、悪ぃ、ちょっとこれ持つの手伝って」

テディとオロフも呼ばれている。


昨日、模擬店の当番だったとき彼らも手伝ってくれたからか、皆が二人に頼っちゃってますけど。


テディは異世界で王子であるシモンの補佐をやっちゃってるので、時おり礼状だとか挨拶状だとか作成するらしくて、人受けする言葉を考えるのなんてお手の物らしい。

で、オロフは騎士だけあって体も鍛えてるから力持ち。

お茶の入ったダンボールを4つ重ねて持ったときは驚いた。


二人ともお伺いを立てるように見つめてこないで。

庶民が刺客に狙われるとかないからね。

だから護衛の必要は本当にないんですって。


小鞠が頷くと彼らはそれぞれに得意分野を役立てるために、彼女の友人たちを手伝い始めた。 





「コマ、今晩の打ち上げ行くんだよね」


いきなり声をかけられビクついた小鞠だが、振り返って爽が立っていたため笑顔になった。

人影に隠れて気づかなかったようだ。


「あ、ミネ先輩いらしてたんですか?えっと打ち上げですよね。行きますよ?」

「彼氏持参?」

「彼って……まさかシモンのことですか?何度も言ってますけどあの人はただの友達で彼氏じゃないです」

「でもあっちはコマのこと気に入ってるよね?迫られてほだされちゃったりとかないの?」

「迫っ……ないです、ない!ないないないっ」


ぶんぶんと首を小鞠が振ると爽はふーんと腕を組んだ。


「それってどっちの意味?ほだされてないってこと?それとも迫られてないってこと?」

「どっちもないですってば」

「へぇ、コマはともかく彼、意外にヘタレなんだ。外人ってもっとがんがんいくのかと思ってたけど。ね、コマ?」


そこでわたしに質問しないでください。

ミネ先輩を含め何人か片想いの相手はいましたが、告白ができなくてこれまで彼氏もできてないんですから。


(ヘタレっていうならわたしだと思――あれ?いまコマはともかくって言われた?)


はたと気づいて小鞠は爽を見つめた。


(それってミネ先輩はわたしのことをヘタレだと思ってるということ?)


で、ヘタレと思われてる理由って……。


(き、ききき気づかれてる!?ねぇ!もしかしてわたしの気持ち気づかれてる!?)


ん、と爽が自分を見下ろしてきたため彼女は慌てて目をそらした。

聞けない。


(わたしの気持ちに気づいてますか?なんて質問できるわけないっ!)


あたふたとうろたえている小鞠はツンと頭をつつかれた。


「コマ。打ち上げ行くならさ。お願いがあるんだけどいいかな?」

「え、はい。なんですか?」


「実は俺、ちょっと風邪気味でさ。体調が万全じゃない分いつもより酒の回りが速いかもしれないんだよね。飲みすぎないよう自分で気をつけるつもりだけど、ヤバくなったらフォローしてもらっていいかな」


「フォローですか」


「うん。もしかして気持ち悪くなったりするかも。盛り上がってるとき水差したくないし、こっそり介抱してくれないか? コマっていつも飲み会じゃ意識しっかりしてるし、周りへの面倒見もいいから頼れるかなーってさ」


「駄目?」と爽に小首を傾げて尋ねられた小鞠は思わず頬をおさえた。


(くぅ、かっこ可愛い。まさにアイドル!素敵すぎるっ)


彼女はグと小さくガッツポーズを作り爽へ大きく頷いた。


「任せてくださいっ。ばっちりミネ先輩を守ってみせます」

「ホント?ありがと。じゃあ今晩は俺の側にいてくれよ――んじゃちょっといま忙しそうだから、売り子手伝ってくるよ」


ちょっとこれ、いいんですか。

なんかもう棚から牡丹餅、イッツミラクルな展開に。

皐月さんが積極的だから彼女になびくんじゃないかって思ってたけど、先輩ってそこらの男みたく彼女のお色気に惑わされる男じゃなかったんですね。


(ああ~、ここからミネ先輩にお近づきになれないかなぁ)

 

小鞠は1人ニヨニヨとして働く爽を見つめる。

それから彼女はカバンを置いて模擬店を手伝い始めた。

もちろんそれは忙しそうな皆を手伝うためだったが、爽と話ができるからという下心もあったのは言うまでもない。



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