呪いの騎士
ぱち、と小鞠は目を覚ました。
辺りはすっかり暗くなっている。
(あれ、寝てた……?)
額を押さえ、いつ眠ったんだっけ、と考えて、昼間に起こったことを思い出した。
悲痛な声で許しを請い、自分の名を呼んでいたマチルダの姿が脳裏に蘇る。
小鞠は体を縮めてベッドの上で丸くなった。
庭園から戻ったあと、シモンに休むよう促されて素直に従った。
同じようにベッドに横になった彼が胸に抱いていてくれ、温もりを感じるうちに眠ってしまったようだ。
シモンは執政塔に戻ったのだろう。
マチルダの取調べの報告を待っているのかもしれない。
彼女を思うと胸が苦しくて、小鞠はキュと唇を噛む。
――なにも考えないで目を瞑っておいで。
昼間、シモンに言われた言葉が浮かんだ。
「~~~~~考えないなんて無理」
がば、とベッドから跳ね起きた小鞠は、「明かりを」と明かり玉を灯してクローゼットに駆け込んだ。
ドレスではなく以前城下で購入した動きやすい一般服に着替える。
ジゼルに会いにいこう。
仕事が忙しいといっても、さすがに夜まで仕事はしていないはずだ。
明るくて優しい彼女に無性に会いたかった。
寝室から生活部屋へ移動したが侍女たちの姿はない。
いつも自分に張り付いていては疲れも溜まるだろう。
魔法使い塔へは一人で行ける。
ただ、皆を心配させるわけにはいかないと、ジゼルに会いに魔法使い塔へ行くとメモを残した。
廊下にはシモンの近衛騎士で、いまは小鞠の護衛官となっている男がいた。
ルーヌといって、オロフが目をかけている後輩らしい。
魔物が出たとき魔法使いたちを呼びに行ってくれたのが彼で、どうやら部屋の警護をしてくれていたようだ。
扉から姿を現した小鞠に踵を合わせビシと背筋を伸ばす。
「何かご用でしょうか?」
「ちょっと魔法使い塔に行きたいの」
「コマリ様は王族塔にいらっしゃっていただくようにと、シモン様より命令を受けております」
「ジゼルに用があるの」
「では侍女を呼んで、ジゼル様の元へ使いを頼みましょう」
「ううん。たまにはエーヴァたちにのんびりしてもらいたいし、気分転換に外を歩きたいから」
ぞろぞろ人を引き連れているのは大層だと常々思っている小鞠は、極力少数で移動したかった。
特に今日は、大勢の人からあれこれ気遣われるのが逆に辛い。
ルーヌは彼女の願いに困った様子を見せる。
「しかし――」
「どうかなさったのですか?」
いきなり割って入った声に、ルーヌが素早く小鞠を背に庇い、腰の剣へ手を伸ばした。
彼女は視界を遮る背中からヒョイを顔を覗かせ声の主を窺う。
「あ、クレメッティ」
「クレメッティ?ああ、小屋で怪我をした――」
ルーヌはオロフたち仲間の騎士と、庭師の小屋でクレメッティとヴィゴを救出していた一人だ。
クレメッティをまじまじと見つめ、ようやく顔が一致したらしく緊張を解くと、脇に控えた。
「怪我はもういいの?」
「ご心配には及びません。瘡蓋もはがれてきています」
「そう、よかった。それで、王族塔に来るなんて何か大事な用事?」
「はい、リクハルド様より伝言で、「至急魔法使い塔へいらしていただきたい」ということです」
「魔法使い塔へ?何かあったの?」
「わかりません。わたしはコマリ様をお連れするよう仰せつかっただけですので」
行儀よく返事をするクレメッティを見つめていた彼女は、あれ、とふいに思い至った。
(クレメッティってマチルダの言ってた理想の人にぴったり)
男性にしては華奢なイメージを受ける、見るからに線の細そうな体型。
さらりとした髪に色白の肌、微笑むと茶色の瞳が優しくなって、まさに夢見る女の子が好きそうな王子様だ。
しかも彼は王宮魔法使いでもある。
(恋人だったとしたら、マチルダのことが心配だよね)
こうしてリクハルドの名前を使って呼び出しながら、本当はマチルダのことを話したいのかもしれない。
昼間シモンは恐ろしいほどの怒りを見せていたから、自分を頼ってきたのではないだろうか。
王族塔だとシモンが戻ってくるかもしれないし、場所を移動して話をしたいのかもしれない。
ルーヌが再び二人の間に身を割り込ませ、クレメッティへ言った。
「誰であれコマリ様に用があるのなら、直接王族塔へ来ることになっているはずだが?呼び出すことなどあり得ない」
「ですからわたしは使いを頼まれただけですと申し上げているではないですか。そちらの事情は知りません」
クレメッティとルーヌの視線が交わる。
どちらも引かず、険悪になりそうな雰囲気に小鞠は慌てて言った。
「リクハルドがここへ来られない事情でもあるのかもしれないわ。わかったわ、クレメッティ。魔法使い塔へ行きましょう」
「コマリ様、なりません」
「ルーヌも一緒に来てくれたら問題ないでしょう?」
本当にリクハルドがなにか大事な用があって呼んでいるのなら、至急と言っているくらいだし急いで行ったほうがいい。
小鞠は自分の言葉は絶対に等しいのだとまだわかっていない。
「ね」と笑顔をむけると、黙していたルーヌはやがて頷いた。
* * *
王族塔から魔法使い塔へ向かいながら、小鞠は宝石を散りばめたような夜空を見上げる。
明るい月の光にも負けない色彩豊かな星の瞬きは、馬に似た小さな妖精を思い出した。
庭園を浄化してくれたあと、随分と弱っていたが元気になっただろうか。
「コマリ様、星空ばかりを見ていては躓かれます」
斜め後ろからルーヌが告げてきたため、小鞠は視線を前に戻した。
半歩ほど前を歩くクレメッティが角灯で足元を照らしてくれている。
「見惚れちゃってたの。こんなに綺麗で降ってきそうなほどの星は、わたしの世界じゃ見られないから」
「そうなのですか?冬の夜空の方が星がよく見えますよ」
「ああ、冬の方が湿度が低いから光の屈折率がどうとかって――確かそんなのを聞いたことがあるけど」
「光の屈折?」
「あ、ううん。なんでも。そっか、空気が澄んでる冬はもっと綺麗なんだ。ねぇ、二人は彼女と星空を眺めたりしたことある?」
さりげなく彼女のことを尋ねてみると、ルーヌから照れくさそうな声がした。
「女性はそういうのが好きなんですか?わたしはどうも雰囲気作りが下手なようで――っと、すみません。つい私事を」
「聞いたのはわたしだから。ルーヌは彼女がいるのね。クレメッティはいるの?」
「いません」
食い気味に返事をされてしまった。
(マチルダのことは勘違いだったのかな?)
それとも周りに言えない秘密の恋だからこそ触れて欲しくないのか。
目指す魔法使い塔がもう近い。
そしてちょうど、ヴィゴとクレメッティが怪我をした小屋を通り過ぎるところだった。
クレメッティは淡々とした様子で歩いている。
不安じゃないのだろうか。
舞踏会の騒ぎを起こした犯人に、狙われているかもしれないのに。
(ん?クレメッティって、自分が狙われてることを知ってるんだっけ?)
犯人は王宮に入り込める人物のようだとシモンが言っていた。
だから小鞠も王族塔を出ないようにと注意されたのだ。
(シモンとの約束をまた破っちゃったなぁ)
でも騎士と王宮魔法使いがいるし、魔法石だって身につけているから大丈夫だ。
心の中で言い訳をしつつ、小鞠はなんとなく不安を覚えて周りに目をやった。
いきなり誰かが襲ってきたらどうしよう。
「どうかなさったのですか?」
すぐに彼女の変化に気づいたルーヌが尋ねてくる。
「あ、うん。なんかちょっと周りが暗すぎて怖くなっただけ。ルーヌとクレメッティがいるから平気よね」
と暗がりに怯えたことにしておいた。
「危険が迫れば命に代えてもお守りいたします」
「命は一つしかないんだから誰かのために使っちゃだめ」
頼もしく答えるその声は躊躇いも疑いもないように聞こえ、つい口をついて出ていた。
「誰かがわたしのために死んだら、わたしは一生悔やんで生きていく。だからだめ。絶対に一緒に生き伸びることを考えて」
カッレラで過ごすうち、この世界の人たちが、「死」を軽く考えているわけではないとわかってきた。
つまり護衛官たちはそれほどの気構えで守ってくれているのだということだ。
それはとても感謝をしている。
が、やはり小鞠はこの「命に代えても」という言葉を好きになれなかった。
いきなり硬くなった声音に、ルーヌは小鞠の機嫌を損ねたと感じたらしい。
しかし理由がわからないのか戸惑う気配が伝わってきた。
角灯で足元を照らすクレメッティまでも振り返ってくる。
「一人助かって悲しみながら生きるより、一緒に笑って生きる道を探したいの。剣も魔法も使えないわたしは守られるしかないし、甘いことを言っているのだろうけど、誰の命も大事だからそこは譲れない。わたしを守るために誰かが死んだら、自分の無力さを呪うし、いなくなった人を思って泣くわ」
「ありがたいお言葉です。ですが主をお守りするのが我ら騎士の務めです。気に病まれることはありません」
「わたしも守られるべき尊いお方が、この世にはいるのだと思います」
ルーヌだけでなくクレメッティにまで言われ、小鞠は困ってしまった。
「――もし二人がいなくなったら、わたしは泣くからね」
「心得ました」
彼女の頑固な口ぶりにルーヌから笑った気配が伝わった。
クレメッティは小鞠の顔を凝視して、なにも言わずにフイと前を向いてしまう。
「コマリ様に対してそのような態度は無礼だろう」
ルーヌが非難するような声をあげても、クレメッティは完全に無視をしている。
食事会のときと同様、相変わらず尖っているなあと思いながら、小鞠はルーヌを振り返って怒らないようにと首を振った。
一応ルーヌは黙ったが、目がクレメッティを睨んでいた。
魔法使い塔に入るとランプ一つに明かりが灯っているだけで、エントランスが不気味に暗かった。
「……………」
「え?何か言った?」
クレメッティから呟きが聞こえてきた気がして小鞠が尋ねる。
側の壁にポと明かりが灯った。
「暗いのでランプを灯しただけです」
「あ、魔法の呪文?そっか前に火打石がなかったのって、魔法使いは皆魔法で明かりを灯すからね」
そのとき、ガチャ、と耳慣れない音がした気がして、小鞠はきょろきょろと視線をめぐらせた。
「なんの音?」
「金属音ですね」
さすがルーヌは音の出所を聞き分けていたのか、小鞠の斜め後ろへ目を凝らす。
ランプの明かりでは遠くまでを照らせない。
ルーヌの視線を追った小鞠は、金属音が近づいてくるのを感じた。
暗い闇に鈍く何かが光ったと思った直後、鎧騎士が三人の前に姿を現した。
ガチャガチャと近づく鎧に危険を感じたのか、ルーヌが小鞠を庇う。
「どこの所属の者だ。答えろ」
「いえ、あれは魔法で動いている人を襲う鎧です。急所は人間と同じ。頭や心臓、鳩尾等を狙って攻撃すれば撃退できます。人を襲うといってもただ追い掛け回すだけですから、そこまでの害は――」
クレメッティの説明中に鎧騎士が腰の剣に手をやった。
小鞠たちまでの距離は数歩といったところだ。
「追い掛け回す?って剣を抜いてるぞ――……っ!」
鎧騎士が鞘から抜き放った剣を振り下ろしたため、ルーヌが腰の剣を引き抜いた。
ガキン、と刃がぶつかって火花が散る。
ルーヌはそのまま剣を滑らせて力を削ぐと、鎧騎士の剣をはじき返し、がら空きの胴を蹴り飛ばす。
これで撃退できるはずが、鎧騎士は2、3歩後ろによろめいただけで再び剣を構えなおいした。
「コマリ様、お下がりください。――っおい!害はないんじゃなかったのか!?蹴りも効かないぞっ」
「あなたの蹴りが甘いのでは?わたしが魔法で狙いますから鎧をひきつけてください。狙いやすいよう、あまり派手に立ち回らないでもらえますか」
「無茶言うな!」
「あっ」
クレメッティの声と同時にルーヌが吹き飛び、エントランスの石壁にぶち当たった。
かなりの衝撃があったのか、ぐ、と呻くような声がして床に倒れ動かなくなる。
気を失ってしまったようだ。
「ルーヌ!」
「狙いが外れてしまいました。もう一度鎧を狙ってみます」
重い音を響かせ、鎧は意識のないルーヌに近づいていった。
クレメッティはブツブツと呪文を唱えている。
上段に剣を構えた鎧騎士が腕を振り下ろした。
小鞠は息を詰める。
ガッ!
鎧騎士の剣が石壁を叩いた。
壁際に倒れるルーヌには、石壁が邪魔で剣を振り下ろすことはできなかったのだ。
ホッとした小鞠は鎧騎士が剣を逆手に持ち替えるのを見た。
突き刺すつもりだ。
そう悟った小鞠の足は、さきほどからまるで、地に張り付いてしまったかのように動かない。
(このままじゃルーヌが殺されちゃう)
鎧騎士の腕がゆっくりと頭上に上がった。
クレメッティの魔法はまだ発動しない。
目の前の光景を見つめていた小鞠は、喘ぐように唇を動かした。
「……ぁぁあああああっ!」
声が出たときには、小鞠は鎧騎士に向かって突進していた。
勢いのままに鎧に体当たりを食らわし、もろともに床に倒れこむ。
石床に転がった小鞠は、ゼエゼエと息をつきながら体を持ち上げた。
床に鎧騎士がばらばらになって散らばっていた。
ワンパターンな攻撃ではなく、剣を持ち替えたりしていたから、中に人が入っているような錯覚を覚えたが、やはり魔法で動いていただけのようだ。
「や、っつけ……た?」
ほーっと大きく息を吐いて小鞠はルーヌを振り返った。
彼の元へ向かうため立ち上がろうとして、しかし力が入らずベシャリと潰れる。
今頃になって震えがきていた。
ほとんど這うようにしてルーヌに近づき、顔の前に手をかざすと微かに息を感じた。
腕が逆に曲がっているとかそのようなことはないので、骨が折れていたりはしていないと思いたい。
ともかくクレメッティに手伝ってもらってどこか部屋に運ぼう。
「クレメッティ、ルーヌを休ませなきゃ。手伝ってくれる?」
呼びかけると、小鞠の傍らにクレメッティが膝をついた。
「申し訳ありません、コマリ様。わたしが未熟ゆえに彼を傷つけてしまいました。コマリ様はお怪我はありませんか?」
「平気よ。まだ胸がドキドキしてるけど」
「なぜ飛び出したのですか」
「助けなきゃって必死でよく覚えていないわ。クレメッティだって魔法でルーヌを助けようとしてたでしょう?でもコントロールをよくしなきゃね。あとでルーヌに謝っておけば、間違えて攻撃しちゃったことを許してくれるわ」
ふふ、と笑う余裕の出た彼女を見たクレメッティは目を眇める。
「そこまで聖女を演じなくても良いでしょう。シモン様のお后となられるお立場ですし、臣下の一人や二人お見捨てになっても、誰もコマリ様を責めたりしないはずです」
「聖女を演じる?もしかしてわたしがいい人ぶってるって言いたいの?」
「違うのですか?左手にある魔法石には、コマリ様を守る魔法が幾つもかけられているのでしょう?決死の覚悟で鎧の前に飛び出すふりをしてみせたのは、あとでわたしが王宮中にあなたを褒め称えてまわることを、望んでらっしゃったからでは?」
小鞠はクレメッティの言ったことを理解するのに数秒かかった。
(捻くれ者っていうか……本当、斜に構えた人だよね、クレメッティって)
腹が立つより驚きのほうが勝って怒る気も起こらなかった。
視線を落とし、手首の腕輪を撫でながら答える。
「だから必死だったの。ルーヌが殺されちゃうってことしか頭になくて、魔法に守られてるってことも忘れてた。わたしのいた世界じゃ魔法は空想のお話でしかないから、全然実感がないし身近に感じられないの」
「魔法使いを二人も連れて異世界よりいらしたのに、ご冗談を」
「澄人さんとゲイリーさんはわたしたちのいた世界じゃ特殊な人たちよ。二人に出会うまでわたしは魔法が存在するって思ってもなかったわ。だから魔法で動く鎧を前にして足が竦んじゃって……でも大声を出したらなぜか動けたの。あれって、自分の勇気を奮い立たせるために大声で叫んだ感じなのかな?――なんにしてもルーヌもクレメッティも怪我がなくてよかったぁ」
はふーと長い息を吐いて天井を仰ぐ小鞠は、これだけ大騒ぎしているのに、この場に誰も現われないことを不思議に思った。
「ねぇ――」
「コマリ様、腕輪をお貸しいただけないでしょうか。彼の怪我を治療したいのです」
「え?怪我?……してるの?」
「骨は折れていないようですが、壁に激しくぶつかっていましたから打ち身はあるかと思います。ですからコマリ様の持つ魔法石で魔力を増幅させ、治療魔法を使いたく思います」
「わかった。ちょっと待ってね。外したいって思ったら外れるんだから――……はい、どうぞ」
小鞠が優美な彫りを施した腕輪を外して差し出すと、クレメッティが素早く受け取った。
「治療魔法ってあるんだ。――あれ?だったらどうしてあの雨の日、怪我をしたクレメッティやヴィゴを魔法で治さなかったの?」
小鞠の疑問にクレメッティは冷笑を浮かべ、腕輪を背後に放り投げる。
鎧の一部に当たったのかカツンと硬い音がして、そのあと床を転がる音がする。
「クレメッティ?」
「××××××××」
クレメッティの言葉がカッレラの言葉で聞こえてきた。
(いま、馬鹿って言われた?聞き間違い?)
カッレラの言葉はできるだけ毎日勉強するようにしている。
だから小鞠の耳は随分とカッレラ語に親しんでいたが、自信を持てるほどではない。
どういうことか尋ねてみよう、と彼女はまだ上手く発音できないカッレラ語を、たどたどしく話す。
「え、えとリワーゾク、ナッチカシュグライ――っん」
クレメッティの手がいきなり小鞠の口を押さえた。
茶色の瞳がまるで蔑むように彼女を見据える。
どうしてこんな目を向けられるのだろう。
何か怒らせたのだろうか?
わけがわからないまま、小鞠は口を押さえるクレメッティの手を引き剥がそうとした。
すると更に強く押さえつけられ、力任せに石床に引き倒された。
細く見えても男だ。
もがいても逃げられず、逆に力がこもって頬が痛んだ。
見上げるクレメティの冷ややかな眼差しにゾクとした。
彼の唇が動いた瞬間、直接脳に衝撃がきて小鞠の視界は暗転した。