私の恋物語。2
無理矢理押し込んだ感情に、もう二度と会わないように、と願う。
私のこの、感情は、激しい憎悪あるのみだった。
紗椰には悪いけど、このことは誰にも話さない。
絶対に。誰にも。
私は、ふと、教室内を見回した。
初めて会う人たちばかり。
けど、一つだけ、共通点があった。
“みんな、幸せそう”
数人で固まった、女子グループだって、笑顔。
二人で話し込んでる、男子だってそう。
一人で居る人さえも、ワクワクしている顔。
寝ている人も居るけど、それも幸せそう。
どうしてだろう。
いつまでも、平穏な日々が続いていたら、私も此所に居たのかな。
笑顔で、高校生活送れてたのかな。
羨ましいんだね、私は。
幸せに、只の幸せに、私は嫉妬している。
「どうしたん?今度はぼーっとして」
あ。紗椰。忘れてた。
「あ…。ゴメン、紗椰。一寸考え事」
「…それって、ひどいやん。…なぁ、ホンマに、大丈夫なんか?」
紗椰は、傷ついた顔をしながらも、心配そう。
どうして、かな。
こんな私、心配するほどの人間じゃないのに。
おかしいよ、みんな。
「おーい。席着けー。今から、教科書の類、配るぞー」
先生が、入ってきた。
…誰?っつーか、自己紹介も無しか。
「あぁ、スマン。俺の名前は、『高木 聡志』だ。お前らの担任をする事になった。よろしくな」
…在り来たりな挨拶を済ますと、教科書類を配り始めた。
嗚呼、つまらなさそうな担任教師。
しかも、紗椰と席離れてるし。
嗚呼、悲しや。
「…何やってるんだか」
隣の人が、そう呟いた。
溜息と一緒に吐き出した言葉は、呆れたような響きが籠もっていた。
「…え?」
私が思わず呟くと、隣の人が睨んだ。
…え?
わ、私、なんか悪い事した!?
「…え、あの、ご、ごめんなさいぃ」
「?…何も言ってない。何で謝る?」
そう言うと、彼は笑って見せた。
整っている顔立ちは、見ている人をドキリとさせる。
睨むと、それなりに迫力満点だけど。
笑うと、八重歯が現れて……取っつきやすそうに見える。
「……え、あ、その……」
「プッ。お前、面白すぎ」
……え?
私は、何もしていないのに笑われてしまった。
オロオロしていると、たまに言われる…。
悔しいって言うか、なんて言うか…。
私はむくれた。
拗ねたって言うか。
だって、軽くあしらわれたのが、気に食わなかったから。
「うぅ〜〜」
私は唸る事しかできなかった。
…なんか怖い…。
睨んだ顔、表情、絶対零度…。
「ま、そんな怖い顔するなって。俺の名前は『竜治』って言うんだ。これから宜しく」
「…『秋野」です」
「そんなに警戒するか?普通」
…はい。します。
竜治さんみたいな人だったら、尚更します!
…なんて、本人に言えるわけもなく。
只黙って、前を向いた。
「……シカトかよ。まぁ、良いけど」
そう言って竜治さんも前を向いた。
…なんか、呆気なかった?
私は、何か違和感を感じたけれど。
先生の話を聞くことにした。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
先生の話はこれまた呆気なく終わった。
何というか…流石新米教師?
カミまくってみんな大ウケだったよ。
うん、アガリすぎ。
私たち、そんなにアガる様な人たちじゃないよ?
校長先生じゃあるまいし。
…まぁ、面白い人だって判明したから、毎日も飽きないかも。
そんなことを考え乍ら、家路についた。
私は、こんな事をも、考えた。
『同じクラスだった』
あの人……。
バスであった、あの人。
嬉しかった。
私の、
『運命の人』
だと、良いのに、な。
・ ・ ・ ・ ・ ・
「あら、お帰りなさい。もう少し待ってね、直ぐ出来るから」
お母さんは、ゆっくりと笑って出迎えてくれた。
お母さんは、花のような人だと思う。
綺麗で、料理も上手くて。
自慢じゃないけど、こんなお母さんは滅多にいないと思う。
私のお母さんは、世界一だ。
…ううん、世界二だ。
私の母さんより、綺麗な人は居ないから。
私の一番は、母さんだから。
誰よりも、大好きだった。
母さん。
物思いに耽っていると、お母さんが呼びに来た。
「ユウナ。夕御飯の支度、出来ましたよ」
「あ、はい。今、行きます」
私は慌てて、食卓へと向かった。
私は。
お母さんの言う。
『イイコ』
に成り切ってしまうよ。
ちょっと短めですが、ごめんなさい。