人生はリセット出来る?
実はこの小説を書くことにした背景には、筆者自身の失恋にあります。
(主人公は女性ですが、当人は男性です。)
彼女の視点に立ってみようと考えてみたのですが、なかなか分からなかったもので、
こんなもんなのかなぁと書いてみました。
何せそんないい加減な理由で書き始めたので、
あまり厳しい目で見ないで優しく見守って頂けると助かります。
それはある日の夕方のことです。
医療技術が進歩した現代に至っても、治せない病もあります。
夫はその病にかかり、何も気が付かないうちに余命一カ月と宣告されました。
私は、今まで働いてばかりだった夫の為にと一生懸命に介護しましたが、夫の方はむしろそんなこと必要ないというばかりで一人で居る時間を優先していました。
しかし、余命一カ月と宣告されて二週間、夫の容体は急変し、とうとう亡くなってしまいました。享年52歳。
それから数日と経たないうちに葬儀が行われました。
私は悲しみを隠しきれず、通夜の晩、葬儀場にあるトイレに駆け込み、ずっと泣いていました。私にしてあげられたことは他にあったのか?彼は私で十分だったのか?とか。とにかく後悔の念でいっぱいでした。
そしてその翌日の告別式でも、夫を荼毘に付している間、再び同じトイレの洗面台で泣いていました。
しばらくすると、どこからか声が聞こえてきました。
「ねぇ、ちょっと。いつまで泣いているんですか?」
私はふと振り返ったのですが、このトイレには私一人しか居ません。
「こっちよ。自分の顔を見てご覧なさい。」
また声が聞こえてきました。その声の言う通り、鏡を見るとなんと若い頃の自分の姿が写っていました。
「やっと気が付いた。へぇ~私はこういう風になっちゃうんだ。」
「あなたはまだ未来を知らないの?」
鏡の中の自分はおそらく本当に未来を知らないのだと思いました。
「うん。だってまだ彼氏とか居ないし。」
これは、つまり私が彼と出会う前の姿なのか。
「あのね、お願いがあるんだけど。私の代わりに、私になって欲しいの。」
「それはどうして?」
「未来の私がとても悲しそうだったし、悔いを残して欲しくなかったから。」
「私はこれで良いのよ。」
「本当に?これで良かったのならこんな所に居ないと思うけど。私、今ちょうど21歳なの。この頃は彼に出会っていたの?」
「えぇ。彼はとても大切な友達だったわ。私が次第に、彼を男として見るようになって。それまで本当に彼には申し訳なかった。彼に辛い思いをさせてしまった。」
「そんなことが起きるんだぁ。ねぇ、その時からやり直してみない?」
「そんなこと出来るの?」
「私とあなたが代われば良いのよ。あなたが21歳の美菜として生きてくれれば良い。私は将来が怖いの。結局私は私なんだから、未来の私が幸せになれるようにあなたがもう一度悔いのないように時間を過ごしてくれれば良いの。」
「じゃあ私はまた彼と出会った頃に戻れるの?」
「うん。手を合わせてその頃を頭の中に浮かべて。」
私は鏡の中に吸い込まれるようにして、時代を遡った。