#1
話し込んでいる両親の背中を確認し、忍び足で麦穂をかきわける。すぐに戻れるよう、小川に沿って先へ進む。その途中、ようやく目をひく存在に出会えた。
「きれーなお花」
水鈴は足元に咲く野の花を眺めた。名前は分からない。 白い花弁に焦げ茶の筋が何本も入っている。
お母さんに見せたら喜びそう。
「お花好きなの?」
足音も何となく、背後から声をかけられた水鈴は飛び上がった。振り返ると自分と同じ背丈の男の子が立っていた。
しかし声をかけてきたのはその子ではない。もっと高い、女性の声だった。ちょうど母と同じくらいの……。
ふと視線を横へずらすと、やはり若い女性が佇んでいた。腰まで届く長髪で、自分が持ってる人形をそのまま大きくしたような美しさだった。
それから気付いたこと。
日本語だ。……ここへ来てからずっと不思議な言葉を話す人しかいなかったのに、彼女は自分と同じ言葉を話している。
一方で、男の子はこちらを指さしなにか言っている。その指からは水が滴り、服はぬれてないのに足元に水たまりができていた。
ただ、それは女性も同じ。
「こらこら、そんなたくさん質問しないの。怖がってるでしょ。……ごめんね、息子ったらあなたと遊びたいみたい。髪の色も目の色も違うから、不思議みたいね」
と言うけれど、彼女とその息子も明らかに他とは違う容姿をしていた。水鈴は女性の頭を指さす。
「髪、緑色」
「珍しい?」
「うん」
「あなたのお父さんも同じ反応をしていた」




