#2
長い髪が風で揺れている。暗がりの中でも眩く光って見えるのは、久しぶり過ぎてフィルターが馬鹿になってるせいかもしれない。
「どうしたんです、こんなところで」
「貴方に会いに」
えっ、と見返すと、彼女は肩を震わせて笑った。
「冗談ですよ。って、こんなこと言われたら驚いちゃいますよね」
「あ、あぁ……」
冗談か。良か……まぁ、良かった。
「この近くに私の友人が住んでるんです。彼女に会った帰りだったんですが、和成さんにそっくりな人が見えたので。近付いてみたら本当に和成さんだから驚きました」
「俺もこのすぐ近くなんです。あはは……奇遇ですね」
ずっと連絡したいと思っていたのに、いざ顔を合わせたら久しぶり過ぎて話題が出てこない。
「泉純さんはお元気でした?」
「見ての通り、元気に過ごしてます。和成さんは?」
「俺もー……とりあえず、元気です」
「とりあえず?」
「いや、めちゃくちゃ元気です」
川を囲う柵に寄りかかり、二人隣合う。泉純は少しだけお話してもいいですか? と笑った。それなら近くの店でも入ろうかと訊くと、ここが良いんですと言った。
「水が流れる音が聞こえる。とても気持ちの良い場所だわ。世界中どの国へ行っても、この音を聴くと安心する」
泉純の横顔はとてもリラックスしていた。しかしまじまじ見るわけにもいかないので、前方を向くよう意識する。
「私の友人が、この前出産したんです。今日はその御祝いに」
「えっ」
驚いて振り返る和成に、泉純は不思議そうに首を傾げた。
「どうしました?」
「あ……いえ、何でも……」
逡巡したものの、まさかな、と言葉を飲み込む。
いくらなんでも“そんな”偶然があるはずない。
「あ、そうだ! 実はなくしちゃったんです。覚えてるか分からないけど、御守りにしていた石。ちょうどこの辺りで落として……だからちょっと探してたんですけど」
「あら、そうなんですか! じゃあ私も一緒に」
「いえいえ、良いんです。正直もうどんな色で、どんな形状をしていたのか、はっきり思い出せないんですよ。それになくした後も良いことがあったから。もう充分、助けてもらったなぁって思って」




