#5
現実と空想。二次元と三次元の線引き。
ドイツに限らず日本や中国、ヨーロッパやアフリカ、中東やアメリカも。
常識では考えられない不思議な存在が言い伝えられ、今も変わらず信じている人達がいる。
「糸原、二番に外線」
「あ、はい!」
山積みになった書類、鳴り止まない電話。こんな狭苦しいオフィスの中に閉じこもっていると現実に侵され、妖精なんてものは尚のこと疑いたくなる。
大人になると強制的に落ちてしまう、空想ができるソフトウェア。インストールしたいと思った時には中々見つからない。現実的なファイルを掻き分け、やっとのことで掘り起こすことができる。
退屈だなんて思えないぐらい、仕事に忙殺されている。
ただ、忙しいから充実しているというわけではない。暇だからやり甲斐がないわけじゃない。全ては気の持ちようなのだと思う。
久しぶりに母と会話したら、幼い頃の思い出が一気にフラッシュバックした。幼稚園のときはヒーローになるのが夢で、小学生のときは消防士。中学生は……早くも夢見ることを忘れていた。目標もなかった。
それなりの高校、大学を卒業して、それなりの会社に就職する。あとは好きな人と結婚できたら百点の人生プランだと思った。
そんなマニュアルのような人生が“幸せ”だと思うようになったのはいつからだろう?
普通でいることが一番の幸せだと勘違いしている自分がいた。いや、勘違い……ではないのかもしれないけど、大多数の人と違う人生を歩むことに恐怖や不安、抵抗感があったのは事実だ。
知人や友人に、影でなにか言われるのが怖かった。
電話を切る直前、そんなことない、と母は言ってくれた。
好きなように生きなさい。一度きりの人生なんだから。




