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NIXE  作者: 七賀ごふん
zwei

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16/26

#3



『あの、以前あそこでピアスを見つけてくださった方ですよね。あの時もちゃんとした御礼ができなかったので……本当に、本当にありがとうございます』


こんな偶然があるなんて、と二人して驚いた。

もう三ヶ月も前になるか。彼女は以前も会った、川沿いでピアスを落とした女性だった。

あの時も具合が悪そうだったけど、あれは妊娠中の体調不良だったようだ。

成り行きとはいえ二度、同じ女性を助けたのはすごい奇跡だ。

『おかげさまで赤ちゃんも元気です。本当にありがとうございました』

あの時は必死だったけど、女性の嬉しそうな声を聞いてほっとした。大袈裟に考えると、ひとつの……いや、二つの命に関わることをしたんだ。

電話を切り、静まり返った自分の部屋で息をつく。

一時間にも満たない出来事だったけど、プレッシャーはすごかった。母はいつもあんな緊迫感の中仕事していたのかと思うと、改めてその偉大さを思い知った。仕事だから自分とは違い、ひとつひとつの作業に重い責任が伸し掛る。

「……」

わずかに迷った末、スマホのアドレス帳を開いた。ま行じゃなくて、その手前。は行の一番先頭にある、“母”と記された電話番号に掛ける。

三コールを過ぎた時に駄目かと思ったが、スマホを耳から離す瞬間声が聞こえた。

『もしもし? 和成、どうしたの?』

母の声だった。慌てて姿勢を正し、スマホを耳に宛てがう。

「あぁ、久しぶり。今忙しい?」

『ううん、ちょうど仕事から帰ってきたところ。久しぶりじゃない、なにかあった?』

「特にはないんだけど……」

大切な用があったわけじゃないので、話題作りに頭をフル回転する。本題に入る前の雑談を交わした。仕事はまあまあ。自炊も真面目にしてる。彼女とは最近別れた。

母はうんうん相槌を打ち、たまにえー、とかまったく……と呆れ返った声を出す。不思議と電話越しでも、母が今浮かべている表情が分かる。こう言ったらこんな反応をするだろうな、ということも。

「あ。……そうだ、この前すごいことあったんだよ」

『すごいこと? なになに』

「帰り道、川沿いで蹲ってる女の人がいてさ。聞いたら陣痛がきてるって言うから、病院まで付き添ったんだ」

『あら! 何それ、偉いじゃない!』




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