#9
ゆっくり帰路につき、川に沿いながら、頭の中で手に入れたキーワードを並べる。
妖精。川。助産師。……小石を掌の上で遊ばせながら、夜空の星を数える。
いくら考えてもやはり自分の頭では結びつかないし、そもそも泉純から聞いた話は全て空想上のものなので、真面目に考えているのがちょっと恥ずかしくなってきた。
でもそういう話が本当にあったら良いな。子どもの頃は、本気でそう願っていたんだ。
少女からもらった小石が本当に宝石で、母は川で子どもを取り上げた。馬鹿にされるだけだから誰にも言えなかったけど、いつか誰かに話したかった。
こんな話を真面目に聞いてくれるのは泉純と、純粋に何でも信じる幼い子どもぐらいだろう。
母に当時のことを訊いてみようと思ったのに、その日は疲れてすぐに眠ってしまった。忙しい日常は止まってくれない。結局仕事から帰るとすぐに寝てしまう日が続いた。数日が数週間に、数週間が気付けば数ヶ月に。道に咲く野の花も姿を変え、雨の多い季節になった。
折り畳み傘が手放せない日々が続く。雨粒が川面に落ち、小さな波動を生む。
時々川の中を覗いたりしたけど、日本の川に妖精はいなそうだ。泉純の話を思い出して、ひとり可笑しく笑った。
ある日の夜更け。何となしにパソコンの前に座り、その妖精について調べてみた。ただ肝心の名前を聞きそびれてしまったことに気付き、自分のアホさにため息をつく。
泉純に連絡してもいいのだけど、そこまで気になってると思われるのも微妙だ。気にはなるけど、本当にちょっとだけだから……な。
いくつかキーワードを絞り、一応検索してみた。するとひとつだけ、どこのサイトでも登場する存在がいた。
「これか……」
N……I……、X……画面に表示されたスペルをなぞる。




