あなたをいつも
ビニールの袋の中には2つの封筒が入っていた。
1つは『ママとパパへ』、もう1つは『美樹へ』と書いてあった。
(私のを読む前に百合の両親に渡しに行くべきだよね)
そう思って百合の両親の方へ歩き出した時、
——ゴロゴロ…ピシャーン!!
「ヒッ?!」
雷が落ちた。それにはもちろんびっくりした。
でも、私がびっくりしたのは、
「美樹」
外のコンクリートに雨が強く打ち付ける音。
窓の外で滝のように降る雨が見える。
その窓の前に、火葬したはずの百合がいつもの綺麗な姿で立っていた。
しかも、不敵な笑みを浮かべて。
「そんなにびっくりしなくてもいいじゃん!」
笑いながらいつもみたいに。
一瞬だけ百合が帰ってきた喜びがあったけど、今は恐怖が私の心を埋め尽くした。
「ゆ、百合?なんで、ここに「泣いてたの?目、真っ赤だよー」う、うん」
言葉を、遮られた。
そんなのに構わず、百合は手を目元に近づけ、触れた。
すごく、冷たい。
(人間の体温じゃない…)
そんな私の考えを読んだみたいに、また百合が口を開く。
「泣いてくれてよかった」
「え?」
「死んだのに泣いてくれなかったらやっぱり悲しいじゃん?」
「や、やっぱりそうだよね?なんでここにいるの?なんで触れるの…?!」
「え?なんでって、美樹、触れる幽霊に会ったことあるでしょ?」
ある。あの、髪が長くて白のワンピースの、女の幽霊。
「百合も、会ったの?」
震えが止まらない。百合と話せて嬉しいはずなのに、それなのに笑いながら話す百合が……怖い。
「会ったよ。こうなれたの、あの女のお陰だもん」
「…え?」
「あ!あとね!いじめて来た女子グループももう消したから!」
「…ま、待って…いま、な、んて?」
「これでずっと一緒にいられるね!」
「ねぇ、まって…どういうこと…?!」
百合は1人で話しているかのように話を続けていく。
「あのグループずっといじめてキャハキャハ笑ってさ、ずっとムカついてたんだよね」
「ねぇ、ちゃんと話、しよ…?」
「幽霊って憑依できるイメージあるじゃん?やってみたらできたんだよ!」
「………百合が、…ころしたの?」
私の質問を聞くと一瞬だけすっと目を細めたが、すぐに満面の笑みに変わった。
「自殺したんだよ??」
また百合の後ろで雷が落ちる。
窓とコンクリートを打つ強い雨音が、より私の恐怖を増幅させる。
親友の百合。
いつも私を笑顔にしてくれたし、隣にいてくれた。
辛いことも、一緒に向き合って乗り越えてくれた。
でも、そんな親友は自殺して、幽霊になって、そして。
クラスメイトを殺した。
「ずっと親友でいようね、美樹!」
後悔なんか一切感じていないように、笑った。
「……百合は…もう私の親友じゃない…!人殺しと親友なんて…!」
百合の顔から笑みが消えた。
顔から表情が消え、感情のない表情で私へ近づいてくる。
「こ、来ないでっ…!」
「ずっと親友だと思ってたのに…そんなこと言うんだね、酷い」
「酷いのは百合だよ!殺さなくたって…!」
雨音がさらに強くなる。
「もういいよ、私が美樹になる」
「やだっ!こっち来んな…!!」
逃げてもゆっくりとした足取りで百合は私を追いかける。
家の中を逃げ回るも、やはり最後は壁に追い詰められた。
そして、百合の顔は無表情から満面の笑みに変わり、私に手を伸ばした。
「私は違う。美樹をいつも親友だと思ってるよ。だからずっと、一緒に居ようね」