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或る令嬢の願い事 後編

「さすが……魔女様でございます」


長椅子にしなだれながら魔女は鼻をフンと鳴らす。


「で、大方予想はつくけどなんでお人形をここに寄越した?」

「魔女様がお考えの通りジゼル嬢のヒトガタを作り、魂の分離を試みようとしましたら抵抗に遭いまして。元々わたくしとジゼル嬢の属性が光と闇で相反するものだった事もあり反動が大きく来てしまいまして、今ではわたくしの体は眠ったままでございます」


魔女は大きくため息をつき、呆れたと言わんばかりの表情でレティを見る。


「無茶な事をする娘だね、あんた。一歩間違えば原型をとどめてないよ」

「だとしても、ジセル嬢をお救いしたかったのです」


淀みなく言い切る彼女に魔女は1つ疑問が生じる。


「さっきの話の中で見ているだけで幸せだとか何とか言っていたけど、あんた何でそこまでしてその娘を助けたいのさ」

「……王家の影の仕事を担う我が家は血で塗れていると忌み嫌われているのでございます。勿論、罪無き人を手にかけた事はございませんし、命を奪うのは最終手段、王族の暗殺を目論む者が実行に移そうとしてしまった時です。王族を守る為など聞こえはいいですが相手が暗殺者だとしても人殺しに変わりは無いのです」


ルーデント家の宿命だな、と魔女は歴代の当主を思い浮かべては心の中で独り言ちた。


「今更何を言われようと何も感じる事は無いのですが、その中でジゼル嬢とニーナさんだけはわたくしに対しありのままで接してくださったのです。ただ錬金術の授業で一緒になって会話を交わした少しの時間、それだけでもわたくしにとっては天にも昇る気持ちでした」


その時の事を思い出しているのかレティは心酔しきった顔をしている。


「あーはいはい。ま、ここまで詳しく聞いたからね、願いは叶えてやる。ジゼルって娘のお人形を出しな。今も持ってるんだろ?」

「ああなんという……魔女様ありがとうございます!勿論所持しておりますわ!」


レティからジゼルのヒトガタを受け取った魔女は呪文を唱え始める。

すると複雑な魔法陣がヒトガタを囲むように展開し、やがてヒトガタは黒い炎に包まれた。

ひとしきり燃えたあと、魔女の手の平には黒く淀んだ靄が内部で渦巻く石が残された。


「これがその娘に取りついていた異物さ。どうやら悪魔と取引した愚か者が異界から良くない魂を呼び寄せて娘に取りつかせたみたいだね」

「……」


レティは温度を感じさせない目で石を見つめる。


「魔女様、願いを叶えてくださり心より御礼申し上げます。対価はわたくしが用意できるものでしたら何でもおっしゃってくださいませ」

「対価なんて別にいらないけど、まぁ強いて言えばこの石だね。でもあんた、この石使うんだろ?」


微笑みを浮かべているのに笑っていない彼女にあえて問う。


「ええ。ですが、事が終わり次第すぐ魔女様のもとにお持ちいたしますわ」












――――数日後。



レティは約束通り石を魔女の元に持って来た。今度は本体で。

いいと言っても何度も礼を言うものだから魔女は辟易して彼女を追い出し、いつもの長椅子に寝そべる。



例の愚か物は才能溢れるジゼルを一方的に恨んでいた学院生と、学院生が雇った金に汚い呪術師らしく、雇われたのはいいものの中々ジゼルを呪えず依頼主から返金をせっつかれた呪術師は形振り構っていられなくなり御法度の悪魔召喚に手を出した。

不幸な事に召喚が成功してしまい、ジゼルの魂に悪いものが絡みついてしまった。


「あのまま放っておいたらリュミエール家の娘は体を乗っ取られていただろう」


結果としてジゼルは助かり、レティのあの感じだと愚者2人は処分されたのだろう。


そういえば別の世界に人を呪わば穴2つとかいう言葉があったような気がする。



「あの娘の執念深さにはかなわなかったみたいだね」


石を手で弄びながら魔女はわらった。

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