薬屋
二人は横に並んでいて大通りを歩いていた。
「薬屋もあんな店だったりしませんよね?」
そう言うとワルトは少し目を逸らして何か含みがあるように言った。
「店はしっかりとした店だよ、店は。ほら、着いたよ」
そこは鍛冶屋とは違い壊れている所など無く、立派な建物だった。
その事に多少驚いているとワルトは気を引き締めて店の中に入って行った。
「婆さんポーションを買わしてくれない?」
店の中には葉巻を吸っている老婆がいた。老婆はワルトを見るとすぐに険しい表情をして言った。
「はぁ?どうしてアンタなんかにポーションを売らなきゃいけないんだい?あたしはあんたのことが嫌いだって言っているでしょ、さっさと帰りな」
そう言って老婆は近くに合った箒をワルトに向かって投げた。
「おっと」
慣れた様子でワルトは飛んできた箒を躱した。
(ま、また変な人だ)
アンナはまた不安になって来た。
「何度も言うけどね。いくら僕を嫌っていても、急に箒を投げるのはやり過ぎでしょ。それに僕が使うんじゃなくてこの子が使うんだよ」
ワルトはそう言って老婆に見えるようにアンナの背中を押した。アンナは自分も何か言われるかと思って怖がったが、驚いたことに老婆は優しく声を掛けた。
「なんだ嬢ちゃんが使うのかい。それならいいよ好きなものを持っていきな」
アンナはワルトには厳しい言葉を浴びせたのに、私には優しい言葉を使ったことに対して驚いて、おびえながらも質問をした。
「あ、あのなんでワルトさんを嫌っているんですか?」
「ああ、それはねこいつは昔っから無茶ばっかりするのよ。しかも自分のためじゃなくて他人のため。あたしの薬はね命を救うために作っているんだよ、決して無茶をするために作っているんじゃないのよ、それなのにこいつったらいつまでたっても無茶をやめないから薬を売らないことにしただけだよ」
そう言って老婆はワルトの方を見て呆れたようにため息を吐いた。
「全くあんたはまだ無茶をやめないんでしょ、1回死なないと変わらないんじゃない?いや死んでも変わらないか。あんたまた無茶してこの子を悲しませたら次こそ容赦しないからね」
ワルトはそう言われて申し訳なさそうに頭をかいた。
「いや頭では理解しているんだよ、でも体が勝手に動くんだよ。」
「言い訳なんてしている暇があったらさっさと金を払って店から出ていけ。そもそも無茶をしないようにしているんだったら今は休んでいるはずだろう。そうしていない時点でお察しだよ」
老婆は心底呆れたように言うと、アンナの方を見て申し訳なさそうにして言った。
「すまんね、嬢ちゃんのような子に頼むのは申し訳ないけれど頼みを聞いてくれないかい?この馬鹿が無茶しないように見張ってほしいんだよ。」
老婆はアンナに頼み込んできて、そのことにとても驚いて慌てた。
それを聞いていたワルトはバツが悪そうに頭をかきながら口を挟んだ。
「婆さん、僕は子供じゃないよ。そんなに言わなくても無茶しいないよ」
アンナはその言葉がなぜかとても嘘くさく聞こえて、これからワルトが無茶をするような気がした。
それでアンナはある決心をして老婆の方を向いて言った。
「お婆さん、まかしてください。もしワルトさんが無茶をしていたら全力でとめますから」
老婆はそう聞くと安心したような表情をしいて言った。
「そうかい、ありがとうね。この馬鹿は本っ当に頑固だから止めるのに苦労すると思うけどよろしくね」
ワルトは二人の会話を聞くと、「そんなに言う?」と疑問を呈した。
「そこまでしなくても無茶しないよ。じゃあアンナちゃん準備もできたことだし出発しようか」
「あ、はい。お婆さんありがとうございました。ワルトさんのことはまかしてください」
老婆は優しい顔をしてこれからの旅を心配するように言った。
「ああ、がんばりなよ嬢ちゃん。大変だと思うけど応援しとるからね。ワルト、あんたは今回無茶したらもう二度とあたしの前に現れるんじゃないよ」
「わかったよ、婆さん。またね」
そうして二人は街を出立した。