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星が瞬く空の下で  作者: 月星 星那
一日目
3/41

武器屋

「え?ここが?」

 そこは一通りが少ない路地裏の古臭い建物だった。人が通らないから店があることに気づかれにくく、そもそも店だと思われないような見た目をしてるためアンナは不安に襲われた。

「まあ、そう思うよね。ここの爺さん腕は立つんだけど鍛冶以外には基本興味はないからこんな店を構えているんだよ」

 ワルトは「ついてきて」と言って店に入っていた。

 中は古くて所々壊れている所があって、さらに不安になった。

「わっ!」

 目の前にある棚を触ってみると音を立てて崩れてきた。

「ほ、本当に大丈夫なんですよね!?しかも何でここに人がいないんですか⁉︎」

 そこには誰もいなくて、もし泥棒が入って来たらここにある物が全て盗まれそうな状態であり、心配でならなかった。

「…………大丈夫だよ、多分。ここに爺さんがいないのは店の裏にある鍛冶場で作ってるだけだと思う」

「……もうやだ」

 歯切れが悪い口調で言われてアンナは自暴自棄になってきた。

 その様子を見てワルトは危機感を覚えて、慌てて鍛冶場に向かって声をかけた。

「おーい、爺さんいる?買いたいものがあるんだけど」

 ワルトが呼びかけると鍛冶場から物音がして薄く汚れたドワーフの老爺が現れた。

 その老爺はかなり年をとっているように見えるが筋肉で盛り上がった肉体から力強さが感じられ、まだ元気が有り余っているような印象を与えられた。

 老爺はワルトを見るとすぐに顔を顰めて言った。

「ちっワルトか何のようだ?」

 老爺の機嫌が悪そうに見えてアンナはワルトの後ろに隠れた。

「相変わらずだね、爺さん。いつになったら真面目に店の運営をやるの?こんな状態じゃ客は来ないし物は盗まれるよ」

 ワルトに心配そうに言っても、老爺は鬱陶しそうに眉を顰めて言う事を聞く気配はなかった。

「その時はその時考えればいい、全くお前はワシの母親か?そんなことよりさっさと要件をいえ」

 ワルトはため息を吐いて隠れるように後ろにいたアンナの背中を押して言った。

「この子に合うナイフを買いに来たんだよ。ちょっと山を越える必要があってね」

「コイツが山を?確かにお前がいれば安全だろうが少しキツくないか?」

 そう言うと爺さんはアンナの方を見て険しいな顔をして言った。

「お前さん本気であの山を超える気か?確かにこの馬鹿がいれば魔獣どもの心配はしないで良いが山の 危険は魔獣だけじゃ無いぞ。お前さんはまだ小さくて体力もない、それでもか?」

 その言葉はワルトへの口調とは違い、心配しているような口調だった。

 それでもアンナは自分の決意を曲げず、強い意志を込めて老爺を見上げて言った。

 「はい」

 それを見た老爺は呆れたようにため息を吐いたが、近くの棚に置いてあったナイフを取り出した。 

「全く昔のワルトのような顔付きをしやがって。ほらこのナイフでいいだろ、軽くて切れ味も良いしそこらの魔獣ごときの攻撃で刃こぼれ1つしない優れた物だ。」

 そう言って老爺はアンナにナイフを渡した。

 そのナイフは丁度良い重さで握りやすく手にしっかり馴染み、一目で良い物だとわかった。

「い、良いんですか?こんなに良い物を売ってくれて」

「ん?ああ問題ない。滅多に客なんて来ないし金はワルトからぼったくれば良いだけだしな」

ワルトはそんな老爺の言葉に呆れた様子でため息を吐いた。

「はぁ、自覚があるんだったら真面目に働いてくれないかな、恩があるとはいえ、いつまでも助けると思っているならばそれは間違いだよ」

 ワルトは疲れた様子だった、アンナには何処か嬉しそうで、でも寂しそうな表情に見えた。

 そんな顔を見て老爺は太々しい顔をして言った。

「ふん、その時はその時考えればいいと言っておるだろ。心配するようなことではない、そんなことより残りの自分の人生のことでも考えておけ」

 ワルトはそう言われた後、まるで今生の別れのように薄く微笑んだ。

「わかったよ爺さん、またね。アンナちゃん、次は薬屋に行こっか」

 ワルトはそう言って店の外へ出ていった。アンナはそれについて行って店を出ようとした時ふと背後を振り返っった。そこには涙を隠すように手で目を押さえた老爺の姿があった。

「お、お爺さん?」

 そうすると老爺は驚いてアンナを方を見て、バツが悪そうに目を逸らした。

「はぁ見られたか、全くワシも年をとったもんだ。ほら、さっさとワルトについていけ。置いていかれるぞ」

「で、でもお爺さんは何で泣いているの?」

「お前さんには関係ない。さっさと出て行け」

 突き放すように老爺は言った。アンナはもう一度問い正そうとしたが、これ以上言っても話を聞かせてくれなそうだったので後ろ髪を引かれながら店を出て行こうとした。

 その時、後ろから声がした。

「気になるんだったらアイツのそばにいろ、そうすれば分かる。そしてアイツに守られておけ」

 そして一瞬躊躇うように息を吐いた後、「それがアイツにとっても幸せな事だからな」と言った。

「え?」

 顔を振り向いた時には老爺は鍛冶場に入っていて、もう何も聞けそうに無かった。

「おーい、アンナちゃんどうしたの?薬屋に行くよ」

 少し離れた所からワルトの声が聞こえて、アンナは老爺の言葉に疑問を持ちながらも急いでワルトの方へは走って行ってた。

(お爺さんの事も気になるけど、まずは旅の事を考えよう。そばにいたら分かるっていてた事だし)


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