説明
「まず魔獣ってのはどのくらい知能があると思う?」
ワルトから解説がされると思っていたけれど、最初に行ってきたのはそんな質問だった。
その質問は一回も考えたことがないことでアンナは考えた。
(魔獣に知能って低いイメージだけど、問題に出すってことは高いのかな?でも今まで見た魔獣は知能が低そうに見えたから違うのかな?)
「えっと、人間の3歳くらいですか?」
必死に悩んだ末にアンナはそう答えた。その答えは今まで見た魔獣は知能が低そうに思えたからだった。
「お、正解。普通の魔獣のそのくらい低いんだよ。ただそれは普通の魔獣だけの話、上位種が絡んでくると話は変わってくるんだ」
アンナはそのことに疑問を持っていた。上位種は知能が高くても普通の魔獣に影響を与えるなんて想像できないことだからだ。
「上位種が絡んでくるだけで変わってくるんですか?とてもそんな風には思えませんけど」「確かに普通はそう思うかもしれない、だけど実際に変わるんだ。まず普通の魔獣の行動を上位種が命令するんだ。たとえば魔獣たちに小隊を作らせて巡回させるんだよ、そのせいで戦闘になったら上位種に場所がばれるんだよ」
それは予想もしていなかったことだった。いくら上位種といってもそこまで知能は高くないと思っていたから。
「で、でも全滅させたら場所はばれませんよね?」
「いや、上位種は巡回する道のりも決めていてね全滅させたところでばれることには変わらないよ。そして場所がわかったら群れを率いて襲ってくるんだよ、それに上位種の身体能力も普通の魔獣と比べて次元が違うし魔法を使う個体もいるよ」
「そ、そんなの人間とたいして変わらなくないですか」
「うん、そうだよ」
人間と同等の知能を持っている生物が人間をはるかに超える身体能力を持って襲ってくる、その危険性が理解できてアンナは上位種のことを恐れていた。
人間の強みである知能でさえ上位種に対して優位に立てないことがわかって、上位種に比べたら人間なんて格下の生物だってことが思い知らされたから。
「……そんなの人間が勝てるんですか」
もし上位種と戦いになったら生き残ることができないと思って、気づけばそんなことを言っていた。
「でも一対一なら勝てる人はたまにいるよ、僕もそうだし」
ワルトが信じられないことを言っていた。知能が人間と同等で身体能力も普通の魔獣とは次元が違い魔法も使うと言っていたのに、そんな生物に勝てるなんて想像もできなかったからだ。
「本当だよ、種類にもよるけど。実際に僕は勝ったことがあるしね」
「えっ?」
その言葉によってワルトが強いことを理解しているつもりだったがまだ認識が甘かったことを痛感させられた。
確かに今までの戦闘はすべて一瞬で終わってワルトの全力の戦闘なんて見たことがなかったけれど、それほど強いとは思ってもみなかったからだ。
「驚いたでしょ、僕って結構強いんだよ。見直してくれた?」
笑顔で自慢しているワルトを見ているとそんなに強いとは思えないけれど、ワルトのことは信じているから本当のことなんだろうと思った。
(見直してくれたって、私は最初からすごい人だと思っていたんだけど)
さすがに一人で上位種にけてるほど強いとは思っていなかったけれど、すごい人だとは思っていたのでワルトの見直してくれた?という言葉は見当違いだった。
だけどそれを口に出すのは恥ずかしくてアンナは塩対応を取ってしまった。
「はいはい、そうですね。見直しましたよ。見直したんでさっさと進みましょう」
「あれ?何故か呆れられたような気がするけど気のせい?」
「そうですよ、そんなことより進みますよ」
そんな会話をしながら二人は進んでいた。