冷酷王子のはずが何故か溺愛してきます。王子side
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こちらは冷酷王子のはずが何故か溺愛してきます。の王子バージョンです。
今日は王子の為に開催されるパーティー。
つまりはオレの為の物だ。
じゃぁオレがそれを喜んでいるかと言うと、non、non。それはない。
女性には興味が無い。ねっとりとした視線も、すぐに触れてくる手も兎に角鬱陶しい。
だが、オレは王家の後継者として産まれた。
姉は沢山居るが男子はオレしかおらず、オレが王位を継げなければかなり揉める事は必至。
まぁオレも別に継ぎたく無い訳では無い。
ただネックは必ず王妃、つまり妻が必要と言う事。
そして次代に血を残して逝かねばならぬ。
はぁ〜。女好きの王は歴史に数多存在するが、女性が嫌いな王は居なかったのだろうか‥‥。
まぁ、考えても仕方が無い。
適当に従順そうな女を伴侶に。
と、思っていました。
先程までは。
ふと、壁際の令嬢に目がとまった。
正確には釘付けになった。
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「お兄ちゃんこれ!これ来週迄に読んでね。
読んだら次、咲希に渡してね!」
「いや、なんでオレが読む必要があるんだよ。」
「可愛い妹からの仕事以外の話題提供だよ!感謝してよね!!あっ、じゃぁ時間無いから先に行くね!」
いつもの如く妹は言いたい事だけ言って嵐の様に去って行った。
それで、どうしたかって?勿論読んだ。
そして、同じ職場の後輩になっている相葉咲希に渡した。妹からだと言うオレに相葉は苦笑いしながら受けとっていた。
そして、真面目な彼女はきっと趣味で無くても読むんだろう。
たがしかし、妹よ。何故に共通の話題がBL小説だったか‥‥‥‥‥。
話せる訳無いだろ〜〜〜〜。
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と言う記憶が蘇ってきたから。
彼女は相葉咲希だ。オレの直感はそう告げていた。
色々な記憶と思考が一度に雪崩こんできて、頭が痛いが今はお妃探しのパーティーの真っ只中。
これは、行くしかない。
行くしかないが前世の記憶を思い出した分、日本人の性が。緊張する。。。
それでも勇気を振り絞り彼女の元へ真っ直ぐに歩いて行く。彼女から目が離せない。
彼女の目の前で跪き。
「アンリエッタ嬢お慕いしております。どうか、私と結婚して下さい。」
胸に挿していた真っ赤な薔薇を差し出して、緊張で真っ赤になりながらも何とか噛まずに言えた。
彼女は!?驚きのあまりかプルプルと震えている。
慌てて駆け寄って来た家族。
「申し訳ございません。あまりの嬉しさに声も出ない様子でして。」
父親が汗をかきつつ謝罪する。
「いや!突然の事に驚くのも無理はない。
この後、話す時間を頂けるだろうか?」
父親に了承して貰い、彼女を支えて歩く。
オレはこの時に気づくべきだった。彼女が遠い目をしている事に。
王宮の奥、応接室に向かうべく廊下を歩いていると。
「あの殿下、どなたかとお間違いでは御座いませんか?殿下とお近づきになった事は無いと記憶しておりますが‥‥‥。」
焦るオレ。
「あぁ、アンリエッタ嬢。私が貴方を見間違う筈がありません。その美しい瞳に今宵はどうか私だけを映して頂けませんか。」
オレが咲希ちゃんを見間違う筈が無い。オレの拗らせ初恋力を舐めるなよ!との思いを言葉に込め彼女に微笑む。
「あっ、あのっ、私の瞳はよくあるグリーンの瞳ですが‥‥‥。」
「エメラルドの様な美しい瞳に、あぁ私が映っているなんて。くっ。」
あぁ咲希ちゃんの瞳にオレが映ってるっっっ!
あまりの嬉しさに目元を手で覆い天を仰ぐ。
慌てた彼女の手が目に入る。
「あぁ、何と華奢な手。壊さ無いように丁寧に扱わねば!!!」
あまりの嬉しさについ手を握ってしまった。
真っ赤になっている彼女が尊い。
「殿下、やはりどなたかとお間違いでは御座いませんか?」
「いえ、私が愛しのアンリエッタ嬢を間違う筈がございません。どうか、殿下などと他人行儀な呼び方はせず、これからはルカとお呼び下さい。」
前世では、ずっと先輩呼びで苗字すら呼んで貰えなかった。
なので、なので是が非でも名前で呼んで欲しい。
「めっそうも御座いません。私などは殿下とお呼びするのも憚られます。」
「あぁ、愛しのアンリエッタ。どうか私の事はルカと。」
何としても名前で呼んで欲しい!!!
「いえ、殿下。私などは伯爵家の者ですし。」
「婚約してしまえば、貴方も準王族ですよ!」
身分なんて気にしないで、との思いを込めて。
つい全力の笑顔になってしまった。
勢い大事!と言う事でそのまま両親に紹介。
「彼女以外との婚姻は考えられません。無理だと言うなら継承権を放棄して彼女と一緒になる所存です。」
もう、これは神様がくれた最後のチャンスだと思うから、絶対に逃す訳には行かないんだ。
王位とかマジでどうでもいい。オレそれなりにハイスペックだから、騎士団とかでも所属して不自由ない生活はさせてあげられると思うし。
オレじゃ無くても、親族から誰が相応しい人が王になってくれるはず!
なんて言ったら、本気が伝わったのか?
誰にも反対されず。サクサクっと書類が出てきて。
婚約出来ちゃった!!!
いやっ、オレ頑張った!
書類に関しては文官さん頑張ってくれてありがとう。
勢いそのままに王宮内に部屋を用意しようとしたら、流石に駄目だと王妃様(母親)に止められた。
仕方が無いので泣く泣くその日は咲希ちゃんとお別れ。
次の日、嬉しくて早くに目が覚めてしまった。
ランニングして、剣の素振りをして。
朝食をとって。仕事をして。
気合入りすぎて周りが間に合わないから、少し休憩して来てくれと部下に執務室を追い出された。
折角なので少しだけでもと、咲希ちゃんに会いに行くことにした。前世は九時出勤だったし、これくらいの時間なら大丈夫だよね!
「あぁ、愛しのアンリエッタ。
貴方に会いたくてたまりませんでした。」
目の前に今日も咲希ちゃんがいる。うん。やはり彼女は咲希ちゃんだ。
はぁ幸せだ。
ちゃんと先触れも出したんだよ。思い立って直ぐに。
ただ、出発も直ぐだっただけで。
けっこう長い時間待たされたので、ちょっと迷惑だったかな?とか、思ってないよ。
なんて考えていたら。彼女のお腹がぐ〜〜〜。
くっ、なんて可愛らしい音なんだ。
「おやっ?もしやアンリエッタは朝食がまだでしたか?では、こちらを。あーーん。」
私の前のクッキーを渡そうと思ったら驚いた様子の咲希ちゃんの口がポカーンと開いていたのでつい、イタズラ心で。あーーんなんて、だいそれた事をしてしまいました。が。
なんと、なんとオレの手から彼女が食べてくれたので。調子にのってあれこれ食べさせてしまいました。
く〜〜〜幸せすぎる。
「朝食は健康の為にもきちんと食べた方がいいですよ!
まぁそんなアンリエッタも可愛いですが。」
はぁ〜小鳥の様についばむ咲希ちゃん可愛かったなぁ〜。
真っ赤な咲希ちゃんが可愛くて、可愛くて。
つい、見つめてしまいます。
幸せな時間はあっという間で、追い出した癖に戻れと連絡が‥‥‥。
まだ、一緒に居たいし一緒に行きましょうと誘ってみるも‥‥‥遠慮されました。残念。
好き過ぎて、毎朝伯爵家に通ってしまいました。
彼女も少しはオレに慣れてくれたんじゃないかな!?
そして、この婚約は概ね皆に好意的に受け止められている。なんせ、今までのオレ(前世を思い出す前)は優秀だが冷酷と言う評価だった。
まぁ必要以上に気を使っちゃうよね。日本人てさ。
そんな記憶が混じっちゃったもんだから、こんな評価も仕方ないよね。
周りはアンリエッタのお陰と思っているらしく、オレと一緒になって逃がしてなるものかっ!て空気が凄い。あっという間に結婚式の準備まで整ったもんね。
ウエディングドレス姿の彼女は妖精の様でした。
絵姿バッチリ描いて貰った!!
(彼女には内緒!)
王子はデザインの才能があったらしく、彼女にピッタリのウエディングドレスを考えてプレゼント。
(前世のオレにはそんな才能は皆無)
部屋も咲希ちゃんの好きだったもの(前世の持ち物とか妹の話しとか)を思い出しながら選んだ。
彼女の教師を女性のみで構成しようとした、だって魅力的過ぎて男性を近づけたくないし。とか言いつつ自信の無かった日本人のオレが顔を出しただけだけど。そこは、彼女に説得された。まぁ、流石に無理があったのも事実。
毎朝一緒に居られる幸せに浸っていたら、仕事する様に説得されて、それならば一緒に執務室に行こうと言ったら流石に怒られた。
怒られるとかご褒美か。。。
毎日幸せに過ごしています。
毎日不安で。
「美しいアンリエッタ。」
「可愛らしいアンリエッタ。」
「愛おしいアンリエッタ。」
確認したくて「僕のアンリエッタ。」
等々、彼女に愛を囁いています。
前世では出来なかったから今世では全力で愛を伝えて行きたいと思います。
まだまだ、足りないさ!
読んでくれた皆様ありがとう。
時々間違って咲希ちゃんって呼んじゃいそうになる。
気をつけ無いとね。浮気を疑われたら大変だ!
「アンリエッタ。アンリエッタ。あぁ名前まで愛おしい。」
後ろには、ふるふるするアンリエッタ。
ルカ様のイジワル。
一緒にお礼を言おうと思って後から来たら、通常運行のルカ様に不意打ちを食らうアンリエッタちゃんなのでした。
多分ずっと2人はこんな感じです。
お読み下さりありがとうございました♡(ӦvӦ。)