結月ゆかりと催眠アプリ 3179字
最近、世間では催眠アプリというのが流行っているそうです。
何でも、スマートフォンに催眠アプリを入れて、人に見せれば、相手を思い通りに操ることができるのだとか。
そんな荒唐無稽な話とつい笑ってしまいますが、やってる本人は真剣そのもの。
マスターもすっかり催眠アプリの虜になってしまい、何かと言えば催眠アプリを見せびらかして、私に無茶な要求を押し通そうとして来ます。
つい先日も、マスターが催眠アプリを片手に、私に向かって「下着を見せろ」と命令して来ました。
何を馬鹿な、と反論しようと思ったのに、どうしてだか喉から声が出てきません。
代わりに私の口から出たのは「……かしこまりました」という服従の返事でした。
あれ? 私……、どうしちゃったんでしょう?
マスターのスマートフォンから発せられる、奇怪な金属音を聴かせられると、なんだかヘンな気持ちになってしまって。
本当はマスターの前で、自ら服をまくり上げて、下着を晒すだなんて真似。顔から火が出るほど恥ずかしいから、絶対したくないのに。
意思に反して、私の右手は紫色のワンピースの表面を、下へ下へと這い降り始めます。
18歳の女の子の体を、たった一枚の薄い布で隔てただけ。その上を、私の右手はおへそをなぞり、下腹部を撫で、布地の終わり、裾へと到達します。
そして、レースで装飾されたワンピの裾をつまんで、躊躇うことなく、スルスルと上へと持ち上げました。
マスターにあまり見られたくない色白のふとももが、付け根まで露わになり始め、そのまま右手は、容赦なく布をまくり上げ、とうとう、ワンピースの奥に隠されていた、ラベンダー色の可愛い下着まで、マスターに見られてしまいました。
あぁ……恥ずかしい……。
私の、マスターに見られちゃってる……。
思わず脚を閉じると、下着の股布が左右から押され、私の性器を象った深い皺が、股布の中央に浮かび上がります。
マスターっ、これ、恥ずかしいです。見ないでください──!
言おうとしますが、私の懇願は催眠アプリによって、喉奥でかき消されてしまいます。
私に下着を見せろと命じたマスターは、中腰になって、私の下半身に近寄り、下着を凝視しています。
私から表情は窺えませんが……恐らく興奮しているのでしょう。
マスターの熱く、湿った鼻息が、私の剥き出しのふとももに、規則的に吹きかかります。
マスターの興奮した鼻息が、私のふとももの間を通過して、お尻の方に抜けるたびに、私は敏感に反応してしまいます。
そのたび、私はふとももの内側にギュッと力を入れて、ガクガクッと両脚を震わせるのでした。
早く右手を御して、まくり上げたワンピースを元に戻し、下着を隠してしまいたいのに。
私の右手はワンピの裾を掴んだまま石のように動かず、何度試みてもダメでした。
私は唯一自由に動かせる左手で、右手のグーを解こうとしましたが、それもダメで。
マスターが私の下着に更に近付いて、荒々しい鼻息をふとももに吹きかけて、より一層興奮している姿を見て、いよいよ、堅く押し留めていた羞恥が体の中を駆け昇って来ました。
脚の間がむずむずして、痒くなり、下腹部の奥がポカポカと熱を生じ始めたのです。
背筋がゾクゾクして、顔中が耳の先までカアッと熱くなってきました。
あ、ダメです。このままだと、なんかダメです……!
何かよからぬ事が起きる予感に襲われました。
それを、唇をぎゅぅぅっと噛み締めて堪えようとしましたが。
…………やっぱりダメでした。
おへその下の方から、ヌルヌルした何かが分泌される感触がして。
それが私のラベンダー色の下着を汚すのと、私の口から甘い呻きが漏れたのと、たぶん同時に起きたんだと思います。
これ以上、マスターに私の恥ずかしい姿を見られないために。
咄嗟に私が左手で覆い隠したのは、唇の方でした。
でも、遅かったみたい。
ふうぅ、はぁあ、はぁっ❤
何かが性器の内壁を濡らして、ヌルヌルと満たしていく感覚が走って。
私はその慣れない感覚に戸惑い、我慢できなくて、ヘンな声を出してしまいました。
普段の低い声からは想像もできない、甲高くて抑揚の効いた嬌声。
私……、こんな声が出せるんだ……。
自身の未知なる領域に驚嘆しつつも、次に考え至ったのは、それを目の前のマスターに、バッチリ聞かせてしまった事でした。
やだ……! こんな、はしたない声を、マスターに聞かれてしまうだなんて……。
マスターは私のラベンダー色の下着に広がっていく染みを、固唾を呑んで見守っていました。
私の性器の中から溢れてくるヌルヌル。一度出始めれば止める事は容易ではないのでしょう。
私の意思に関係なく溢れたそれは、肌に触れた下着の股布を、より濃いラベンダーに染めて行きました。
マスター、ふぅぅ、見ないでっ、それっ、……だめっ❤
ヘンな高い声が、続々と口から発せられます。
そしてこの嬌声、どうもマスターの鼻息のリズムと連動しているようで、マスターが私のふとももに熱く鼻息を吹きかけると、私もヘンな声を漏らしてしまうようです。
その間隔は、徐々に短く、速くなって来ました。
私、やっと理解できた気がします。
……これが、催眠アプリ、なんですね……。
おそろしいっ……。
私の露わになった下半身に触れそうなほど顔を接近したマスターが、私の下着越しの陰唇と、その周りに広がるヌルヌルの染みを見続けて。
その時マスターの両手は、スマートフォンを手放して、他の事に使われていました。
マスターっ❤ どう、ですかっ。わたしの下着っ、おたのしみ、いただけて、ますかっ?
マスターがスマホを手放している以上、催眠アプリは、もう私にはかかってないのだと思います。
でも…………っ❤
私は、こんなに私の下着を見つめてくれるマスターに、もっともっと喜んで欲しい。そんな想いが生まれていました。
女の子の体から分泌されるヌルヌルには、女の子を酔わせ、気持ち良くさせる作用があるのでしょう。
溢れすぎ、いよいよ下着を濡らしきった私の愛液が、ふとももの内をつつーと滴り落ち始めました。
ひんやりとしたヌルヌルが、温かい大腿の熱に溶けて行くような、もどかしい感覚。
きっとこの分泌液にも、何か役割があるのでしょう。
自分で濡らしたふとももに、マスターの苦しげな鼻息を浴びて、私はそんな事を考えました。
ふぅぅ❤ はぁぁ、ふぅっ、はぁっ、ぁっ❤
マスターと私の吐息はそのリズムを次第に速めて行き、あるタイミングで、同時に何かを迎えたようでした。
ハァァっ❤ あぁっ! はぁぁっ❤ はぁぁぁ……っ❤ ぁ……❤ ぁっ❤
爪先から電流のようなものが駆け昇り、頭のてっぺんに打ち付け、再度爪先に帰って行くような感覚に襲われました。
漏れ出る悲鳴を塞ごうなんて気は、起きませんでした。
両脚がガクガクと震え、背筋がピンと伸びるような、逆に折れるような、不思議な脱力感に襲われました。
もう、どれほどのお汁を流したのか、わかりません。
私のラベンダー色の可愛い下着は、愛液を吸い過ぎて、濃い紫色へと変わってしまいました。
水を含んだ重みで、自然に脱げ下りてしまいそうな程、ずり落ちてきています。
これ、みんな、マスターに下着を見られたから、こうなっちゃったんですよね?
頭をガクガクと震わせて、私と同じように呻いて、ズボンに濃い染みを作っていくマスターの姿を高みから見下ろしながら、私はそんな事を思いました。
……そうそう。そろそろ、催眠アプリの効果が切れる時間ですね。
私は左手で自分のスマートフォン(ピンク色でうさぎさんのイラストが付いた可愛いのです)を取り出すと、催眠アプリを起動して、放心状態のマスターの耳元にあてがいました。
持続的に奇怪な金属音が流れ、これを聴かせると、マスターと呼ばれる男性を、私の望み通りに操る事ができるようになるのです。
マスター。これからも、ずっと、私、結月ゆかりのマスターで、いて下さいね。約束ですよ?