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6 約束

最終話

心地よい光が私を包み込む。

ゆっくり意識が浮上してくると、見知らぬ天井が目に入った。

私は今どういう状況なのだろうか。まだ私は生きているのだろうか。


寝起きのぼやけた頭では何も考えることが出来ない。


ひとまずここが自室ではないことがわかるため、どこかを調べようとベッドから降りようとしたときだ。


控えめにノックをする音が部屋に響き、思わず反射的に返事を返すとマテウス様が入ってきた。


「よかった、目覚めたんだな」


あまりの美しい笑みに思わず頬が赤くなる。

そういえば私は湖でマテウス様と出会ったのだ。それで少しお話をして……。その後の記憶がない。

どうやってここに来たのだろうかと焦ると、そんな私に気がついたのかマテウス様が答えてくれた。


「あの後君は眠りについたんだ。よほど疲れていたのだろう。ここへは俺が運ばせてもらった」


なんということだ。これほどまでにマテウス様に迷惑をかけるなど。

深く頭を下げお礼を言う。


「あの、本当にありがとうございました。勝手にいなくなってしまってすみません。もうこのようなことはしません。それで、、あの、マシェリ家の者は来ていないでしょうか」


ここまで迷惑をかけてしまったのだからもう次はない。

またマシェリ家に戻るのかと思うと重たい気持ちにもなったが、マテウス様とクリスティナ様が恋仲でなかったと知れただけで私の気持ちは軽くなった。


「イーリアス、君はもうマシェリ家には帰らせない。君の叔父ももう金輪際君の目には触れさせない」


どういうことだろうかとマテウス様をみる。マテウス様は美しく微笑んだままだ。

私はまだイーリアス・マシェリでマシェリ家の者である。きっと叔父は私がいなくなったことに対して怒るだろうがそれも仕方のないことで、こうして長時間エステベル家にいるほうがもっと怒られてしまう。


「この6日間でマシェリ家を調べた。もうあんな家に君を返そうとは思わない。今まで気づかずに、、ほんとうにすまなかった」


頭を下げるマテウス様を見て焦る。


「顔を上げてください! 確かにマシェリ家での扱いが辛くなかったといえば嘘になりますが、マテウス様がいてくれたからこそこうして私はこの歳まで生きることができています。それに今もマテウス様はこうして私をマシェリ家から距離を置いてくれたではありませんか」


「……イーリアスは、こんな俺を許してくれるのか」


「許すも何も初めから怒ってなどいません。クリスティナ様との関係も私が勝手に誤解していただけなので、むしろこちらが謝らなければいけないのです。ここはお互い様ということにしていただけませんか……?」


全く持って自分勝手な願いではあるが、こうしないとこの場が収まらないように思えたため案をだす。


「そうか、やはりイーリアスはイーリアスだ。本当に、君には救われてばかりだ」


「その言葉、そっくりそのまま返しますよ?」


視線が合い自然と笑みが溢れる。ああ幸せだなと、心の底からそう思った。


「そういえば、いつからマテウス様は私の呪いにお気づきになったんですか?」


あの会話の中で、どうもマテウス様は私の呪いを知っているように思えた。いつ知られたのかも分からないし、私はマテウス様の近くにいれば別に体調になんの変化も見られないため気づかれる要素がない。


「それは昔、父と家令の話を聞いたときに知った。母の犯した罪も、君の気高さも。だからずっとイーリアスが自分のことを責めているなど、もっと早くに気づいて訂正し、誤解を解くべきだった」


マテウス様が謝ることは本当に何一つない。でもマテウス様がお母様の事で、幼い頃に辛い思いをあまりしていないのを知り、再び心が軽くなる。


「マテウス様がお辛い思いをされていないのであれば、私はそれだけで私のしたことに価値があると信じています。ですのでどうか御自分を責めないでください」


ありがとう、と小さくつぶやくのが私の耳に聞こえた。マテウス様のお母様の件も、私の呪いも、昔のことは何一つ変えることはできない。私の行方不明だって本当に迷惑ばかりかけてしまった。




「クリスティナの関係も、幼馴染だからといって泳がせすぎていたようだ。彼女への対処はもう始めてあるから安心してくれ。それから、、これからは俺への愛を疑われないように君を精一杯愛そう」


軽いリップ音とともにマテウス様が手の甲にキスを落とす。

思わぬ出来事でたぶん私は今首元まで赤くなっているだろう。マテウス様はそんな私を、さも愛しそうに見つめていた。


「私も、誰がなんと言おうとマテウス様のお隣を守ってみせます」


ふたりで小さく約束を交わす。これからも絶対破られないだろうという自信が二人の間にはあった。





数年後、誰もが知る溺愛夫婦となることをこのときは誰も知らない。


END

短い間でしたが、お付き合いありがとうございましたm(__)m


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