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5 勘違 マテウス視点

私の調べによると”勘違い”でも”勘違”でも間違いではないそうです。

サブタイトルを2文字にしたかったので”勘違”にしました。

「今日はイーリアスが来る予定だったが、、来ていないか?」


廊下を通りかかった使用人に尋ねてみる。

今日は一週間に一度の大切な日だ。先程いらぬ訪問があったが、正直そんなことはどうでもいい。

イーリアスが来るのが待ち遠しく、つい使用人に尋ねたが、予想外の返答が帰ってきた。


「え? イーリアス様はもう来られていますよ? マテウス様のお部屋の前までいらしていたのでてっきりマテウス様のお部屋にいらっしゃるのかと……」


は? どういうことだ。先程まで幼馴染みであるクリスティナがいたが、イーリアスは見ていない。まだこの屋敷の何処かにいるのかと俺は走り出した。





いない、どこを探してもいない。一時間ほど探しただろうか。イーリアスを迎えに来たであろうマシェリ家の馬車が見えたため、藁にも縋る思いで御者に尋ねる。だが案の定答えは同じだった。



”イーリアスが行方を眩ませた”


この事実は俺にとっても、マシェリ家にとっても衝撃の事実だった。




◇◇◇


翌日、マシェリ家は新聞にイーリアスの捜索を求めた記事を願い、大々的にイーリアスが行方不明になったと報じた。

マシェリ家はマシェリ家が所有する騎士団も出して捜索しているらしい。それほどにマシェリ家はイーリアスが大事なのかとも思ったが、唯一残された一人娘だからであろうと、どこか疑問に残る心を閉ざし、俺も個人で捜索をし始めた。



何も進展がないまま6日が経過し、どうしようもない怒りと焦りが俺を襲った。


イーリアスは、俺の母親にかけられた呪いを持っているはずだ。俺の近くにいないと恐ろしい速度で進行する呪い。だから俺はイーリアスが自分から離れないと慢心していたんだ。




俺の母親は父のことしか見ていない人だった。きっと母の俺への憎悪は、成長していくにつれ父が母よりも俺のことを優先し始めた頃だろう。後継ぎである俺は幼い頃から父から様々なことを学ばなければいけなかった。

母は隠すのが上手な人だった。それに初めは確かに俺への愛情もあったはずだ。

幼い俺はただ当たり前に愛されているのだと、母を信じて疑わなかった。


だがそんな母の憎悪にいち早く気がついたのがイーリアスだった。母がどこで手に入れたか分からない毒薬を俺の茶に混ぜたとき、イーリアスは無意識のうちに母と俺のカップを交換していた。


母が泡を吹いて倒れたときは初めは何がなんだか分からなかったが、その後父と家令が話しているのを聞き真実を知った。そのときにイーリアスの呪いのことも知ったのだ。


そもそも俺は初めからイーリアスに好意を抱いていたし、あの件以来、イーリアスは俺の女神のような存在だった。

だが周りには俺たちのことをあまり良く思わない人もいるらしい。初めは小さな波だった。それも俺が収めることのできるくらいの大きさだ。だが次第に波は俺の知らぬところでどんどんと大きくなっていき、イーリアスを襲っていた。


後悔の念が俺を襲う。

それにこの6日で秘密裏にマシェリ家に対しても探りを入れてみた。どうしてもマシェリ家に対する疑問が俺の心から離れなかったため、捜索を入れてみるとどういうことだろうか。様々なイーリアスに対する虐待の証拠が出てきている。

あんな生活を続けていれば誰だって逃げ出したくなる。気づかなかった俺は、、愚か者だ。

もう一度イーリアスと会うことができても再び愛を乞う資格はあるのかとここ数日考えなかった日はない。



◆◆◆


辺境の地へ足を踏み入れたとき、何かに惹かれるような感覚がした。俺の魔力が反応しているのだろうか。何か奇跡が起きて、これがイーリアスの元に繋がっていればと淡い期待を抱きながら感覚を頼りに進む。


あたりはもうすっかり日も落ち、月の光だけが煌々と光っていた。

ガサガサと茂みをかき分けるとあまりにも幻想的な湖が目に入る。美しい、と思う前に横たわる少女を見て心臓が大きくはねた。


「イーリアス……」


思わず発せられた俺の声に反応し、イーリアスがここからさろうとする。しかし反射的に俺の体は動き、イーリアスを捕まえた。

驚くほどに細い。毎週あっていた頃はあまりの感じることはなかったが、これは細すぎる。力を入れるとすぐに折れてしまいそうだった。


「……何故、俺の元から離れようとした」


俺にこの問いを問う資格はあるのか。だが聞かずにはいられなかった。きっと俺の何処かで自分が嫌になったからではない、と否定してほしかったのだろう。

だがイーリアスから発せられた返答は俺の予想の斜め上をいく事となった。


「私は、、あなたにとって邪魔な存在だったはずです。幼い頃に自分の母親を殺されて、そのままエステベル公爵の言いなりになるまま私と婚約させられて。もう私は散々いい思いをさせていただいたので、、身をひくことにしました」


「誰が、誰がイーリアスの存在を邪魔だといったんだ? 誰がいいなりだと君に吹き込んだ? そのせいで俺は……俺の大事なイーリアスを失うところだった……」


そいつを見つけ出し、今すぐ消し去りたい衝動に襲われる。

だがよくよく話を聞いてみるとどうやら俺とクリスティナの会話を聞いていたらしい。

クリスティナは……イーリアスを不快な思いにさせ続けた元凶である。誰がイーリアスよりもクリスティナのほうが俺の婚約者にふさわしい、だ。聞いて呆れる。皆クリスティナの本性を知らないだけだ。



「さあ、もう帰ろう。もう秋も深まってきた頃だ。ここにいては寒いだろう」


ひとまず、ここを離れるのが先だ。

まだ冬は訪れていないとはいえ秋の夜更けともなると寒さが厳しくなる。

俺の上着を差し出すと、躊躇いながらも袖を通すイーリアスはなんとも言えないほど可愛らしい。疲れが溜まっていたのか、ふわりと眠ってしまったイーリアスを胸の中に抱きながら改めてこの愛らしい婚約者を失わずにすんだことに安堵感を覚える。


そうして俺はイーリアスを抱きかかえながら馬車に乗り込み、エステベル家へと向かった。


正直マテウスから言わせてみれば短い髪のイーリアスも長い髪のイーリアスも可愛らしさは同じです。長い髪がいいと言ったのはそのときにイーリアスの可愛らしさにふと出た言葉でした。

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