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2-4


魔導士の後ろ盾の守りと、興味を惹く対象となる矛を持った主人公。


中身が普通の一般人で異世界から訪れた点は確かに異質な点であるものの、盾と矛に釣り合わない矛盾さはある種格好の餌食となっていたのは、否めない。


私はまだゲーム全ての攻略キャラクターを踏破していないので何とも云えないのだが、その点で大いに困る点もあった。そして同時に困る事も勿論あった。具体的に述べるならば、ディアナ・グラナディラが、プレイヤーを否定するように、この場に相応しくないと試練を幾度も課して来た点であるが、先程からの彼女の口振りから察するに、どうやら彼女はリリィ・クローカスを何らかの形で助けるつもりでいたらしい。


おかしいとも思う。


不自然だと感じてしまう。


違和感を拭いきれない。


思い出すのはゲームの攻略対象を定めて、ある程度男性キャラと親身かつ人見知りになったあと……。


彼女は定められた運命の如く初手に軽い意地悪をして、「貴女には相応しくありません」と云い、兄と共に排除すると述べたところがファーストコンタクトとなるのだが、どうして見知らぬ状態だとまるで庇護と協力的な態度であるのか、そこが不可解でならなかった。


まさか、兄にだけ善良な妹であるように振舞っているのではないだろうかとも思うが、その仮説な絶対的にあり得ない。三年の特待生、ドラゴンの腕章を持つ兄と協力して、主人公をあの手この手を使い退学させようとしており、実際、兄の巧妙な入れ知恵もあって、私は何度か苦戦を余儀なくされた覚えがハッキリとある。


自然、ディアナ・グラナディラとその兄は密接な協力関係を以って、主人公を排斥……いや、それよりも先に触れるべき話題はそうじゃない。それではない。


私が目覚めてから、悪役令嬢たるディアナがこちらに向けて兄と述べた事実。


まさかと思いつつ、ささやかな水流の音を出している付近の噴水に近寄り、水面に映った自分の顔を確認するとそこに投影されていたのは、典型的な日本人女性の顔ではない。黒髪はディアナ・グラナディラと同じでありながらも、緑の初々しい艶のある黒髪も、冷酷と冷淡さが感じられる顔立ちも何もかもが違う。


そもそも性別が、人種が、次元が異なるのだ。


男から女へ。黄色人種から白人へ。三次元から二次元へ。


悪い夢なら出来すぎだろうと思いながら乾いた笑いを出すものの、周囲の花冷えと、そうしてそこから繰り出される学校そのものの雰囲気は、あまりにも現実的で、非常なまでにリアルだった。


私は、悪役令嬢の兄になっている。


突拍子もない考えだが、自然とその答えを飲み込み、そうしてすぐさま受け入れてしまった。


まるでそれが、当たり前であるかのように――。

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