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前周の出来事を、記憶していることを匂わせる発言。
このメタ要素は悪役令嬢の妨害の他にも、対象を絞った攻略キャラの難易度にも関係するらしく、乙女ゲー界隈では屈指の難易度を誇るゲームと噂されていた。
四週目ぐらいまでは初心者でも、それなりの努力と苦労を重ねれば問題なくクリアできるのだが、五週目に突入するとまるで別物のゲームになったかのように難易度が跳ね上がるらしい。
攻略対象キャラは全員で十名+αで構成されているのだが、αの十一番目は『ドロシー』が発売されてから一、二年ほど経つのに攻略どころかまだ見付かっていないという有り様で、メタ的な要素といい、その異質さを際立たせていた。
どうやら……恋のお邪魔キャラである悪役令嬢にヒントがあるらしいのだが、それでも姿が判然としないという曖昧模糊さを強く出している。
その話は非常に有名で、シークレットキャラは誰なのか……実在しているのかと、製作会社に問い合わせするなどの行動を起こしているのだが、『いる』との公式からの回答を貰いながらも未だに不明瞭だと、某掲示板やSNSで報告されている。
卑怯な手段だが、データ内部を解析して影を踏ませずに、尻尾さえ掴めない隠しキャラがいるのかを調べたところによると、確かに有るのだと云う。
公式からの発表と、そうしてデータ内部の解析による裏付けから、シークレットのシルエットはぼんやりと浮かびながらも、誰にも正体が見られない。
候補や臆測として挙がる推理に、教師たち……目元さえハッキリしない脇役の同級生などが指摘されながらも、最も有力なのは有料DLCが発表され、そこで漸く公表になるのではないかという事であった。
『ドロシー』発売から、およそ二年。
第二弾の発表が公式からアナウンスされ、続編に向けて熱量の下がっていたプレイヤーを戻す手段として、隠しキャラが公表されるなら、今が狙い目で、商法としては卑怯でありながらも、DLC内で明かになるのは正直、“手”と云う手段としては有りだろう。
私は隠しキャラのことを頭の片隅に置きながら、苛烈な仕打ちを行う悪役令嬢とは正反対の親友キャラの発言に励ませられたところで、クリアしてからすぐ持続プレイしたがゆえの疲れからか、ウトウトと意識が――。