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シンマンの主張は意外なモノであった。
それは主張する内容云々がではなく、これまで王子と三年間生徒会員として側近の如く、身近に、そうして傍にいたのだが、正確には生徒ではなく護衛である核兵器が学校の行事や授業などについて口出しを行ったことはないのだ。
それが例え、シンマン自身が仕えるべき主の学校に関する質問であれば押し黙り、まるで聞こえていなかったかのように振舞う。生徒会で行き詰った議論でも、授業中の難問であったとしても、ヒントも助け船さえ出すことさえなかったシンマンが、ぽつりとそう述べたのだ。
私はシンマンの「王子が興味を持った」という発言には、どうしてという疑問と、そうだろうと云った納得が矛盾しながらも存在している。
潜在意識的に「何故」という疑問はある種嫌悪感を含みつつある不信になりつつあったし、そうだろうという得心は好意的な感情の芽生えそのものだ。
私は相反する感情と理性の中、呆然とし、流れが堰き止められていた川の流れが急激に変わるように話の全てが纏まっていったのだが、それにはシンマンが話に加わったというショックが関係しているに違いなかった。「王子の興味」云々についてはどうでも良かったのだ。
まるで――いや、文字通りだが置物が喋ったことに対する衝撃で、虚を突かれる形で話が淡々と、そうしてトントン拍子で進んでいったのは否定できないだろう。
会議が終わってから私は、これまでの疲れが安堵したことにより一気に引き寄せてきたのか、いつの間にか横長のソファに横になり、無人の室内で眠りこけていたのだが、寝姿を見つめる視線がキッカケで意識が覚醒したのか、ぼんやりと目覚めるとそこにいたのは私がかつて落伍者だの無責任だと述べた希代の天才・魔導士、オズオパールがいたのである。
今日は学会か、それとも何らかの厄ダネを持ち込んだのか知らないが、正装を……化粧をしている。
オズオパールの顔立ちは、お世辞ながらも生命力に満ちたものではない。まるで活力が抜けた死体のようであるが、その能面のような顔に両の目は緩くカーブを描き、口元の両端を口角を上げるようにけわいを施すと、にこにこと笑っているような感情の良いものになる。
それは宮廷魔導士として正式な衣装であるが、まるで、ピエロの化粧のようだと思わなくはなかった。