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4-1


入学式当日。


若しくは――これから先の学園生活ではじまる動乱の初手といった具合だろうか。


彼女は――異世界人にしてリリィ・クロッカスは、新入生と在校生が集う群衆の中で、皆の視線を一身に受ける人物が、生徒会会長であることは入学前のファーストコンタクトから知っていたが、まさか……この国における重要人物、第一王子だとは知らなかったのである。


その箱は、びっくり箱なのか、空箱なのか、ゴミ箱なのか、宝箱なのか。


以前云われた言葉を反芻しながら、いやにディアナの態度が刺々しく厳しかったのを知ることになる。


その上リリィが認知したのははじめて出会った学園の男子生徒が王子だけではなく、二年のユニコーンの腕章を付けた、守衛ガード代表が初の女子生徒であるだけではなく、第一王子の婚約者だったことである。


はじめは幻肢痛などによる魔法により一方的に因縁を付けられたものだと思っていたのだが、今ならわかる。どれほど愚鈍な愚者でも理解することができる。


王子が先に庶民に謝辞してしまったこと……そしてそれほど色めき立っていたわけではないが初心くも淡い恋心を抱いてしまっていたこと……さほど濃くはないがその色をあろうことか婚約者の前で見せていたことなどを総合的に考えると、確かにこちらが悪かったかもしれない。


イスタルが檀上から立ち去る際、明らかに赤の他人から見てもリリィのことを注目していると思わざる得ないウィンクを目の前に、私は、主人公プレイヤーに同情する。今は何の理由か因果か不明であるが、悪役令嬢のディアナ・グラナディアの兄にリリィ同様、異世界転生してしまっている。


初プレイ当初、王道を歩むのではなく別のキャラの攻略を目指していたので初イベントである入学式は卒なく淡々と終了したが、第一王子を焦点に当てると『生徒会長』とパッケージの顔役の役柄が明らかになるだけではなく、国王のご子息であることが堂々と明らかになることは、今こうして初めて知ることになった。


私は現在、主人公リリィではなく寧ろ真逆の存在であるが、王子に注目されていることを周囲に認知されていることをあけっぴろにされるなど、入学当初にしてはキツイものがあるだろうなと正直な同情を覚えるのである。


だが、しかし……『ドロシー』のゲーム内容をすべて網羅していない私ではあるが、彼女が――リリィ・クロッカスがどのような人間であるのか知っている。


めげない。挫けない。折れない。曲がらない。倒れない。朽ちない。


そして――負けない。


温室育ちの高嶺の花とは異なった雑草魂と云おうか。


とにかく彼女はそう簡単に諦めることのない存在であることを重々承知している。

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