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『ドロシー』の第二弾。
なるべく、原作ネタバレを避けている私だが、風の噂で三年生たちは卒業し、主人公は二年生となって、新しい恋愛対象の後輩が進学し新たな展開を迎えていることをそれとなく知っていた。
新たな境地を迎えている原作小説だが、後輩――要は新キャラたちも、先輩キャラに負けず劣らず非常に魅力的であるらしい。
キャラが新鮮であるだけではなく、先輩の中のひとりには弟が入学したり、もしくは、これまで何となく関係性を匂わせつつも特に接点のなかった同級生と卒業していった先輩との関係性が深く掘り下げられていくなど、出番を春の桜と共に第一線から退いていった卒業生たちの出番もあるので、作者のキャラクター一人ひとりに対する愛ゆえか……それともただのファン演出なだけかもしれないが、上級生キャラ好きたちにも考慮されているので、卒業を境目に支持層が減るといったことはないのだそうだ。
私はベッドに横になりながらゲームを再起動し、「でもあの意地悪な令嬢様はどうかなー」と呟きながら、『ドロシー』の世界に入っていく。
私が言う『意地悪な令嬢様』とは、恋愛ゲームではお決まりなのか、主人公の恋路をあの手この手を使い嵌め陥れ妨害する、女性キャラクターがいる。RPGにせよ、ホラーにせよ、恋愛でも敵対キャラクターがいるということだ。
所謂、『悪役』と云うヒールなのだが、『ドロシー』のお邪魔キャラは初見プレイではキチンと対策をしていれば問題なくクリア可能で、特別難しくなく、寧ろ初心者向けなのではないだろうかと思われるほど快適快調に進行を進めることが出来る。
だが、二週目になると悪役令嬢の妨害手段は巧妙かつ飛躍的に上昇するため、周回の数が多ければ多いほど難易度がシビアになる。
しかも――これは悪役令嬢に限ったことではないのだが――異質なことに、攻略済みのキャラ乃至未攻略のキャラの台詞が若干変わるなどの演出がある。
特に私が一番ドキリとしたのは、これから攻略しようと狙いを絞ったキャラから、前周攻略したキャラと付き合っていなかったかと、問われた時である。
聞けば何てことのない台詞のようだが、私はその言葉が発せられたタイミングと、そうして苦渋の選択で、次の週に飛ばそうと決断し告白を断り、当て馬となったキャラクターからそう云われるのは中々衝撃的な出来事であったのだ。
正直……『ドロシー』以外、恋愛ゲームはしたことがなかったので、他の乙女ゲームにもこういった趣向があるのかと思ったのだがどうやら異なるらしく、これはゲーム版『ドロシー』特有のメタ的な演出であるらしかった。