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3‐4


“寂しい『異物』のオートマトン”が完成した当初、素材を提供したイスタル・ダンプティの年齢は丁度、高校に入学する時分であった。


シンマンは学園内において学生扱いは受けていないが、普通ではいられない第一王子との付き合いは二、三年程度ではあるが最も親しい『友人』となった。


ハンプティダンプティ(ずんぐりむっくり)と、シンマン(やせおとこ)


第一王子のイスタル・ダンプティと、核兵器。


双方、『非常に危なっかしい』であることは共通しながらも、本来ならば相容れない存在同士でもあるこのちぐはぐさが逆に朋友として成立したのかもしれなかった。


『その日』は、守衛ガードとして新入生を迎えるべく、幾つかの仕事を終えた帰りにシンマンと雑談をしていた時のことである。


「年毎に誕生日が変わると云うのも大変なものだ。何せ、364日毎日、月にお伺いを立てなくてはぼくの生誕日は成立しないのだからね」


「……去年は、ディアナ・グラナディラから『カレリアの白樺』を祝いの品として貰い受けたとヤツバラは聞いております」


「ああ、誕生日の品だねシンマン。あれは実に良いモノだった。ディアナは実に趣味が良い。昔からそうだった。幼い頃からの婚約者であるだけにぼくの趣味が分かっているのかな、カレリアは毎日眺めても飽きないぐらいだ」


イスタル・ダンプティはそう云いながら、自室の寝室に飾ってある卵型の装飾品を思い出す。宝石が存分にあしらわれた特殊な造りたる仕掛けと、螺鈿。その双方は柳下の蝋死体の亡骸を絵画に、持参した紅茶を楽しんでいたほどではないが、確かに美しいものであった。


だがしかし、かの第一王子は普通の人のように誕生日は毎年同じ日で、プレゼントの内容も普通のものが良かった。イスタルにとって、そちらの方が何よりも珍味で物珍しいものであったからである。希少蒐集家コレクターという意味では、普通のものとは異なりつつも、特殊や特別を求める意味では真骨頂のマニアかもしれなかった。


「シンマンからは、『イヌのぬけがら』だったね。いつの間にかうざいイヌが持ち物に置いてあったから、驚いたものだよ」


「恐縮」


シンマンは無表情――顔の上半分は機械による仮面によって正確に判別できないが――のまま、小さく頷く。


そうして、雑談を行っていたのが悪かったのか廊下の曲がり角で誰かとぶつかってしまった。


それは、異世界からつむじ風に攫われてやってきた、リリィ・クロッカスである。

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