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その叡知の集大成は、本を広げ、未知を開拓し、新しい知識を吸収する魔導士たちの提案により、半ば人間化することで確約された。
核の力はそのままに、ロボット三原則の制約と、付喪神の概念と、未完成品である成長と、名による言霊の影響により、ヒト化した方が取り扱いやすいと総合的に考えて判断されたのだ。尤も一番大きな理由はロボット三原則の、安全で服従し自己防衛するといった絶対的な前提があってこその話であるが。
そして第二の理由は、王族の人間に側近として護衛役を仕ることにより、積極的に報告しなくてもそのこと自体が告知になると云う広報運動だ。例えば――どこぞの国の王子王女が訪問したとなれば自然と大々的にニュースとして取り扱われることになるのだが、副次的に核のことも伝わる。
核兵器の人間化が決定したところで、次に難題として降りかかったのが、誰を素材にするかであった。機械を人間化すること自体は難しくない。付喪神の概念さえなくとも人間を動物化する魔法は十分過ぎるほどに存在しており、そのまた逆も然りだ。
だがしかし、この国には木乃伊も即身仏も存在しておらず、だからといって墓場を暴けども肉の無い魔物たるアンデットでは三原則の安全性を確かにすることが出来ない。生きた人間を使おうとしても人権そのものが問題となる。魔法が使える国において、法そのものは生まれた瞬間から魂に刻まれた契約といっても過言ではないのだ。
他国から適した素材を取り寄せようとしても、自国を守護する抑止力は己の国で生産及び製造した方が問題が少ない。それに今から希望者を募ろうとしても時間的な問題を考慮すれば、なるべく早い方が良かった。
そんな時、斯様な問題を――それこそ次期国王たる第一王子として生まれたイスタル・ダンプティは年毎変わる、満月の誕生日を身近な問題として捉え、小さな中庭にある魔法陣に入り、下に一歩、左に十七歩、上に十四歩、左に二〇一五歩、下に五一二歩進むと転移する廃棄道にある柳下の小川に居る蝋水死体があることを告げると、魔導士の数名がその亡骸を取り上げ、改造を行った。
腐りかけていた脆い両手足は義足となり、
頭部は三原則等に従わせるため、鼻から上は半フルフェイスマスクとなった。
素肌として露出しているのは、鼻筋から下である太腿辺りの部分までである。
彼は大人を迎えない時分において、最強の護衛を手に入れることが出来たのだ。