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3‐2


イスタル・ダンプティがはじめて訪れた廃棄道の中にある小川の水中に、死体が浮かんでいる。


それだけではなく、生命の力強さを見せるようにして繚乱と咲き乱れる花と亡骸の正反対性が、美しかった。まるで絵画のような風景であることを後押しするように足元には沢山のヘンダールが咲いているだけではなく、宝にしてゴミ山のどこかからオルゴールの優美な音色が聴こえてくる。


まるで、蝋死体が水を臥所に、柳葉を天蓋にして、自然の寝床にしながら子守歌でも唄っているかのようだと、そう思った。


イスタル・ダンプティは秘密の肉と死の立体的な絵画を発見してからは、茶会と称してここに訪れ、夜の散歩だと側近と近衛兵に騙して眺め、長い間……具大的な年数は五年ほど、その『オフィーリア』を鑑賞し続けていた。


そんな中、王宮の中庭にある魔法陣は一つだけではないように、王宮内で異常なモノが見付かった。


核弾頭シンマンである。


化学横溢した世界において、その筆頭である暴力の塊がなぜ廃棄道に棄てられたのか想像に難くない。


要らないモノがあれば棄てる。


当たり前のことだ。


そしてその上、厄介な危険物であれば人知れぬ場所に放置する。


当然のことである。


イスタルの鑑賞する、狂気に陥りながら小川で漂う『オフィーリア』はどういう経緯で廃棄道に漂流したのか分からないが、大きな暴力を持つ核兵器ならその想像は非常に簡単だ。子供でも分かることである。


シンマンが国内で見付かってから、王宮所属の魔導士だけではなく国内の研究者たちが慌てたのは云うまでもない。彼等が口を揃えて云うのは、危険物の取り締まりと……取り扱い方であった。魔法とほんの少しの科学力しかないこの世界において、核兵器はあまりにも魅力的であった。危険は承知であったとしても手放すことが出来るような代物ではなかった。代替品のない唯一物である。


正直な話……国力を誇示するようにして、公然と異世界から漂流した核兵器の存在を全世界に明らかにし、未だ愚かな戦争を行う諸国において未知の影響である軍事力を強調しておきたかった。


平和が良かった。


泰平さが望ましかった。


世界平和を臨むような夢見がちさはなかったが――いや、無かったからこそ――未知の化学兵器があることを周知させるために、どうにか出来ないかと研究者たちは躍起になった。

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