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2‐13


径路パスから放棄された、基底世界の人間の産物と表現して差し支えないモノ――それは核弾頭。


殊に世界規模の大戦で使用するはずだった核兵器であるのだが、完成する前から失敗作として断じられ、所在に困ったのか異次元へ廃棄されてしまっていた。


『ソレ』は瘦せ男を意味するシンマンの名前が付けられており、この世界でも無用な混乱を避けるために同じように呼称しているが、天才の筆頭であるオズオパールをはじめとして、魔道界の選び抜かれた賢者たちが挙って独自のアレンジを促すことにより、半分は人間、もう残りの半分は機械といった具合に修理し終えている。


核弾頭に人間の部位を付与するにあたって、重要になったのは科学たる基底世界でもある程度の効果と効力を持つ『言霊』と、百年の歳月を過ぎれば物品は命を宿すといった『付喪神』の概念を以ってして、修繕が行われたのである。


言霊はシンマンが生み出されて経過した歳月を利用と、痩せ男たる名を悪用して。


付喪神はこの世界にある蝋死体を再利用して、改造が行われた。


利用し悪用して採用された『シンマン』だがその秘匿化せず、ハッキリとしている。本来ならば、臭い物に蓋をするように隠した方が良いように思えるが、そういった手法を取る方が厄介だ。何しろシンマンは『未完成品』の爆発物だ。完成していないのだ。場合と経緯によっては完成していないがゆえに手を加えることができ、、本来の威力よりも爆発力が高まる可能性があるが、逆に低下する可能性も十二分にある。


それに人間の肉体を得ることで、爆発を防ぐ意識的なセーブを本人にも掛けることが出来、完全に安全で安心することはできないが、処置と対処を取ることには成功している。


シンマンはキノコ雲を有する爆発乃至誤爆を引き起こさないために、誰の目にも簡単に触れ、ただ存在することで、より防犯の意識が高まらせている。得策とは云えないが秘策として、誰の目でも触れることにより牽制したい……もしくは、別の目的があるといったところか。


半ば晒し者になっているシンマンだが、唯一気になる点として、やたらと音に拘る傾向にあった。


シンマン曰く『多種多様の生き物の断末魔を聞かせることが己に課された使命』であると、誰にも必要とされずお蔵入りとなった爆弾はそう述べているのだが、その意図がよく分からないのである。それを命令したのは誰だと尋ねても緘口令が敷かれているのか、情報を断片的に答えたとしてもこちら側の人間が聞き取ることのできない未知の言葉による命令文なのか判然としない。


ただ魔導の某研究者曰く、『微睡む白痴たる王の子守歌』だけが分かったのだと云う。


分かったというよりワードを知っただけであるが、それがさらに奇怪さを醸し出していた。


そしてそれはきっと、気の所為ではないだろう。

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