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2-12


「復讐。それ以外、何もなかった」

被害者の自己目的により、『憤怒』は『報復』に変換。

その名は――動物裁判。座すところ、ネツァク。



「過剰でしたが、あの人が行った行動は正当防衛です。しかし、そこで学びました。命を助けられて、思い知りました。人間は人間を殺めると、長生きすることが可能なんですね」

代弁者の危機回避により、『怠惰』は『啓示』に変形。

その名は――石を投げるヱホバ。座すところ、コクマー。



「絶海に取り残された極限状態の中、飢えを凌ぐために殺しました。それにしても、食欲を満たす以外の理由で他者を殺すだなんて信じられません」

漂流者の生存本能により、『暴食』は『習慣』に変態。

その名は――認識のサトゥルヌス。座すところ、ダアト。



「彼らは望んで死んだのです。死後、亡骸を美しく保ちたいと願っていましたから、ミイラやダイヤにして私が着飾っていただけ。何か、おかしなことでも?」

慈善家の人工造形により、『色欲』は『改造』に変化。

その名は――ゴルゴーンの一瞥。座すところ、ティファレト。



理解のビナー。

王冠のケテル。

栄光のホド。

勝利のネツァク。

知恵のコクマー。

知識のダアト。

美のティファレト。



その中で基底世界――魔法が一切存在せず、化学のみが横溢した世界である『王国のマルクト』。


ビナー・ケテル・ホド・ネツァク・コクマー・ダアト・ティファレトは、化学世界のマルクトに近ければ近いほど影響があり、魔法の存在が少なく、距離が有すれば有するほど神秘の具現化といって差し支えない魔法が豊富に偏在するといった具合である。


果たしてこの『ドロシー』の世界が、王国であるマルクトとどれだけ違うのか……道を通じて距離を測量するのがオズオパールの詳細な研究内容だが、その究明の取っ掛かり――否、引っ掛りにして切っ掛けとなったのが、数十本もある異世界へのパス――通称・廃棄場と呼ばれる場所からマルクトの世界にあるべき産物としか『断言』出来ない危険物が、『ドロシー』の……魔法のある世界に出現したからであった。


その物体の出現は、正しくどのような叡知と予知を持っていようが、予測不可能であった。


基底世界の権化と表現して差し支えない物体は、正しくゴミ箱に捨てられた形で遺棄されたのである。


それはあり得ないことであった。


何があっても実現しえないことであった。


基底世界の化学のみに頼って生きている世界の人間は、真っ向から魔法を否定し拒絶したのにも関わらず、異世界の存在なんぞ――それこそ空想と云うべき御伽噺の中に、人類史において失敗作と断じられながらも、斯様な物品を捨てることなんぞ出来るはずがないのだ。


科学たる基底世界の人間は空想でしか、魔法を使えない。


それだのに異世界の通路であるパスを経由して、核弾頭を置き去りにするなんぞ、一体全体誰が想像することが出来よう。


魔法は使えないが魔法を使えなかったことがあるのが、化学の世界の住人の特徴なのに!

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