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「ときに、ミスター。突然だがその釈然としない顔に向けて聞こう。乃公が、今研究しているのは何なのか承知しているかね?」
「貴公が今、研究していることですか? そりゃ、リリィ女史をはじめ――異世界の産物をこの世界に呼び寄せる、召喚。もっと云えば、抜け道裏道通り道の草分け的究明といって良いのではないですかね? 他の学者にはその草分けは道草と云われていますが……」
「その通りだとも。私はミスターの云った通り、『そういったこと』に研究の熱を上げている。予期せぬ副産物はいつもの通りだが、これは聊かイレギュラーが過ぎるというもの。だがしかし、悪くはないんだよ」
……と、オズオパールはリリィたる主人公と、悪役の私を眺めながらそう述べた。
オゾパールの主張言語化した、現在研究を行っている内容は間違っていない。
何度も述べるようだが、彼は異世界の物品や物質たる異物に興味があって召喚を行い、つむじ風にかどわかされたリリィが出現することになってしまった。しかし、研究の本題はただただ単純に呼び寄せるなどといった一方的な招聘ではなく、仮にAの世界とBの世界に繋がりが現れた際の『道』の究明が主題であったのだ。
今は異世界などについて研究を行ってから初期の段階……もしくは早くも研究に行き詰まり回り道をしている段階かもしれないが、リリィをこの世界へ招いたことにより、現実世界とは異なった世界が実在していることに満足しているようなら酔狂が過ぎよう。いや……あまりにも、天才の冠を恣にしているには器が小さく、そしてあまりにも未熟である。
「乃公はミス・リリィが来た当初、ミスターに説明した通り……異世界なるものが確実……いや、学術に存在していることを証明できた」
確実に。
そうして絶対にと云えるほど確証と確信。
彼の云う異世界……
例えば――
「半死半生のゾンビのような病人や怪我人を見て、人間は死ぬべき時に死ぬべきだと思い殺しました」
医術師の殺人幇助により、『傲慢』は『制定』に変質。
その名は――雷霆の卵。座すところ、ビナー。
「彼らは劣っていたのに、目に見えて裕福過多でした。だから私は相応しい人間に相応しい物品や環境が行き届くように采配したのです。それにより愚昧なる裕福層が死んだのは、ただの結果論です」
戦争屋の平等原則により、『強欲』は『闘争』に変異。
その名は――Zauberkugel。座すところ、ケテル。
「交際交友で対等の関係を望んでいただけです。友人同士なのに上下関係ができるなんて、おかしいじゃないですか。だから、三人目を拒絶していただけなんです」
第三者の対人関係により、『嫉妬』は『派閥』に変性。
その名は――共依存のネスティング。座すところ、ホド。