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希代の魔導士――オズオパール。
原作では初期の初期、それこそ最初の1ページ目且つ一行目から登場しているものの、リリィ・クロッカスを学園に通わせた途端に出番の無くなった人物である。しかしだからといって、モブ的な存在にするというわけにもいかず、一巻の表紙と裏表紙を飾っていた美男の一人である。ゲーム版になってから出番が増え(とはいってもロード画面のミニキャラとセーブ部屋及び設定画面の三点だ)、超火力を持つファンが感涙に咽び泣いたと聞いている。
オズオパールが幼少期、それこそ小学校に通う時分から単なる魔法使いではなく魔導士と呼ばれ、深く様々な研究に携わっているらしいのだが、その分野は物を問わない、あらゆるものが対象となっていた。古今東西ではなく、その学術のデザインは天衣無縫といった方が適している。
今、オズオパールが一番興味を抱いているのが、別世界や異空間のソレであり、ソレがきっかけで主人公が巻き込まれ物語りが始まったことは、云う間でもない。そして何故、留年などしていないのに学園に自身が希代の天才であることを良いことに、自費出費で当直室なるものを入学した頃から作り上げ占拠し、学園そのものに拘っているのか不明のままである。
不明と云えばその点だけではなく、オズオパールは通称『セーブ室』、自称『研究室』、他称『当直室』に居座っているのか、それすらも明らかになっていない。本人は「ある人を待っている」と述べているのだが、それは誰なのか分からないままであった。
とにかく不明で不明瞭な部分の多い謎の人物である魔導士のオズオパールであるが、私はセーブ室まで速足で急ぎ、息を切らす前に到着した。ディアナ・グラナディラの兄による潜在的な意識ゆえか、その足取りは迷うことなく真っ直ぐに到着したのであるが、見慣れた扉を開くとそこにはどこぞの名探偵のように安楽椅子に腰かけながら、ゆったりと窓を眺める彼の姿があった。
私の期待としては、類稀なる魔導士である彼ならば突拍子もない話――意識が次元を超えて入れ替わる等といった話でも耳を傾けてくれるのではないかと思ったがゆえの行動であった。何しろオズオパールは、別次元を……異世界の存在を『研究』している。
そして何より、メタ的な要素を取り入れた『ドロシー』のゲーム内で、重要な分岐点や選択肢が迫る直前、それとなく警告するようにセーブを勧めてくる姿が印象として強く残っており、一プレイヤーである私はどうしても会わなくてはいけないようながしたがしたからだ。