表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ショートショート11月~2回目

ごわつく猫

作者: たかさば

 うちにはやけに見目麗しい猫がいる。

 白キジの二歳の雄猫である。


 鼻も肉球もピンク色で、真っ白な腹毛とアシンメトリーなアーム部分の雉模様がチャーミングな、どこかまったりした空気を纏う、若いくせに侘び寂の神髄を知っているかのように落ち着き払った猫だ。


 我が家の猫は実に黒色率が高い。

 黒猫4、キジトラ3と白い毛を持つものがいない中、たった一匹で奮闘する孤高の猫である。

 皆が黒い肉球を持つというのに、たった一匹桜色の肉球を保持するという、非常に特別感を漂わせる猫である。


 パッと見めちゃめちゃオシャレというか、王子様っぽいというか、貴族っぽいというか、とにかくこう、雅な佇まいで、猫好きの人のみならず普通の人たちまで思わず触りたくなるような、魅惑の猫である。


 ノラ猫出身とは思えない甘えっ子っぷりで、チャンスを見つけてはすぐに膝の上に乗ってくる、実にあざとい猫だ。

 人が好きで好きでたまらないらしく、人に触ってもらうために腹を丸出しにしてはゴロゴロとのどを鳴らす猫だ。


 ……目の前にモフがあれば、もふらずにはおられまい。


 その白い腹を、徹底的に愛で倒させていただくのだが。


 どうにも…ごわつくのである。


 確かに手触りは、イイ。

 しかし、毛の一本一本が、その麗しい見た目にそぐわないレベルで、かたいのだ。


 いうなれば、マシュマロとグミのような、手芸綿と布団綿のような、ストローとタピオカストローのような、砂と砂利のような、そうめんとうどんのような、面相筆と平筆のような、やんちゃな幼児とくたびれたおっさんのような、可憐な乙女と強欲ババアのような……、手触りの違いが、ある。


 雄猫だから、組成成分がたくましい?

 いや、他にも雄猫はいるが、こんなにごわつくものはいない。


 我が家を訪れる皆さんが必ず撫でたがる人気ナンバーワン猫にして、我が家で一番のさわりごこちの悪さを誇る猫である。


「なんか…思ってたのと、違う…。」

「あ、じゃあね、この姐さんを撫でてみて?」


「いや、…なんか黒猫って怖いからいいや。」

「この子さわりたい!」

「この猫がいい。」


 飼い主イチオシの手触りのよさを誇る猫を差し出してもなお人気を集める、ごわつく猫。


「やけにさわりがいのある猫だよね。」

「なんか手のひらが負けてる……」

「普通に撫でてるのに逆撫でしてるみたいだ…。」

「見た目はアンゴラ、実態は雑巾みたいな…。」

「豚撫でてるみたいだけど、猫だよね?」


 ひどい言われようである。


 だがしかし、風評などどこ吹く風で、ごわつく猫は腹をさらけ出し、今日も大胆なポーズで人の手を待つのだ。


 ……なんと言うけなげな。……けなげ?いや、この猫にそんなしおらしさは感じない。むしろ堂々とした空気を感じる。


 それどころか、スマホをいじる手のひらに向かって、頭突きをかまして来るような図々しさが!


 ……ちょ!勢いで変なボタンクリックしちゃったじゃん!なんかツイッターの表示がおかしなことにー!


 焦ってじたばたする私には目もくれず、ぬるぬると頭を撫で付けるごわつく猫!


「……。」

「にゃ。」

「にゃあー!」

「……やーん。」


 そして私もお撫で下さいと近づく猫、猫、猫、猫……!我が家は、ちょっと気を抜くとあっという間に猫どもが集ってくるのだな。


「あーもー!わかった、わかったってば!」


 ツルツルした猫も、ほこほこした猫も、さわり心地ナンバーワンの猫も、ばさつく猫も、ごわつく猫もきっちり撫でて、……そうか、そろそろご飯の時間か。


 私は猫の皆さんを一通り撫でたあと、ソファから立ち上がり…キッチンへと向かったのであった。




キッチンに向かう時、足元に猫が同伴するのでなんかサファリのキングになったような気がします(群れの長的な)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ゴワつくのは、ちょっと残念ですけど、それでもなおあまりあるもふもふ感。白くってふわふわしていたら、そりゃもう、正義です。
[良い点] ストローとタピオカストロー [気になる点] ぬこパワー [一言] 威風堂々という言葉を送りましょう。おめでとうございます
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ