~ルアとの約束~
「それじゃあ……オーラを消さない限り…外に出てもすぐに気付かれてしまう…ってこと……?」
「私の推測通りに考えると、そういうことになるね……」
そう答えると、ルアは絶望したような顔をした。それもそうだろう。私達の他、誰かいるならまだしも、私達子供しかいないため、ネガティブ思考症人独特のオーラなんて、消すことは敵わないのだから。
「……ねぇトキ。この世界には安全な場所はないのかもね。それなら……世界変化を起こすしか方法はないのかな……」
「待って、それはまだ早いよ。それに私の推測が正しいとも限らない」
「でもオーラ、消せないんでしょ……? だったらどうしようも……」
このままだと、世界変化を起こしかねない。オーラを消すことは出来ない。それは変えられない事実だ。だが、安全な場所がないと決めつけてしまうと、ネガティブ発言より、本当に安全な場所が無くなってしまう。きっとあるはずだ。だがどうすれば……。……ん? オーラは消すことが出来ない。ならば……
「オーラを隠せば……!!」
「……!? オーラを隠せるの?」
「消すことは出来ないけど、もしかしたら分からないようにすることは可能なんだと思う」
「でも……どうやって隠すの……?」
「そうだね……例えばだけど、マスクとかするといいかもしれない。ネガティブ思考症は口から出たネガティブ思考に反応するから、オーラもそこから出ているとしたら……マスクが最適だと思う」
「マスク……ちょっと待ってて、何処かにまだ残りがあったはず……」
そう言って、ルアは散らかっている部屋の奥に行った。私は部屋を見渡す。女物と男物の服があちこち散らばっている。……少しは片付けてはどうだろうか。…男物…? ということは……私の他にもいたのだろうか……。でも此処には男の人はいない。…どこに行ったのだろう。
「お待たせ…!! ちょうど二つ、あったよ!!」
「ありがと、ルア。…ねぇ、ルア。1つ、聞きたいことがあるのだけど……」
「何? トキ」
「この部屋、いっぱい物が散らかっているんだけど…男物の服があるんだけど…もしかして男の子、いたの……?」
すると、マスクしようとしていた手がピタッと止まった。私はルアを見つめる。ルアは手をプルプルと震わせ、涙を流していた。
「……いたよ……だけど、いなくなったの。世界変化で……消えちゃったんだ……。何処に行ったか…分からないの……。ねぇトキ……。やっぱり世界変化起こそう……? 私、この世界にいるの、耐えられない……。トキ……約束して…。もし…もしあの子に……ココに会ったら…私のこと……言ってね……御願いね……」
「ルア……」
「この世界は……残酷だっ……」
来たばかりの世界が……壊れていく……。ルアの顔が、散らかっている部屋が……消えていく。
「約束ね……トキ……。ごめんね、さよなら……」
ルアの言葉を最後に、世界が崩壊した――――……。