~ネガティブ思考症人~
自分と同じネガティブ思考症であるというルア。
そしてこの世界もまた、まともじゃない……。
果たして、どのような行動を……
「ルアさんも……ネガティブ思考症……?」
衝撃の事実に驚きが隠せない。私を殺そうとする人々から、保護してくれるという少女、ルアもまた、私と同じネガティブ思考症の患者だったのだ。
「驚いた? ふふ、ただの変わり者とでも思ったのかな? 違うの。私もまたネガティブ思考症で、貴方と同じ、狙われる存在なの。あと、さん付けはなしね。だって私と君、あまり年齢変わらないでしょ? 実際の年齢は知らないけどね」
よく喋る人だ。少なくとも、私がいたような酷く醜い世界には移ったことがないのだろう。そう思いながら、私はルアを観察する。黒い髪を可愛らしく二つくくりにしており、赤目が丸くて輝いていた。私とは全く反対の容姿だ。……私はそんなに幼く見えたのかと少しイラッとした。
「君のこと、聞いてもいい? まず名前は何て言うの?」
許可もなく聞くか…普通……。私は心の中で溜め息を吐いた。
「……トキ」
「トキかぁ。いい名前だね!! じゃあ次の質問!! デデン!! ずばりトキは別の世界から来たわけだけど、前の世界はどんな世界だったのかな?」
「……酷い世界」
「ふむ、なるほどね。要は世界変化は貴方が起こしたってわけね。ちなみに私はね、前の世界で友人を亡くしたの。そりゃあ、悲しかったよ。それで世界変化を起こして、この世界にやって来たってわけ」
友人を亡くした上に、世界変化を起こしたのか……。どうやらルアも辛い経験はしたようだ。じゃあ、どうしてそんなに明るくいられるのだろうか……? この世界だって、狙われる存在でいつ殺されてもおかしくないのに。
「ねぇトキ。私と一緒に、この世界から脱出しない? こんな世界でも、何処かにネガティブ思考症人が安全に暮らせる所があるはずだよ。この隠れ家はいつ見つけられてもおかしくないから……」
ルアと安全な場所で一緒に暮らす…か…。悪くないかもしれない。一人で彷徨うよりは、ルアと一緒に行動するほうが、いいかもしれない。
「……いいよ。一緒に探そう、安全に暮らせる場所」
そう言うと、ルアは今まで一番の笑顔を見せた。
「それじゃあ、早速行こう!!」
そう言って、ルアが隠れ家を出ようとする。
「待って」
「え? どうしたの? トキ」
ルアは目を丸くさせた。
「このままじゃまずいと思う。広告を見て、違和感があったの。何故、ネガティブ思考症人を殺せとあると思う?」
「え……? 世界変化を起こされるから…じゃないの?」
「それもあるけど、ネガティブ思考症人もあくまで人間。他の人とは変わらないはずなのに、どうやって識別すると思う?」
「???」
どうやらルアは、こういう話は苦手なようだ。チンプンカンプンな様子だ。
「恐らく、オーラ・センサーで識別されるんだと思う」
「オーラ・センサー?」
「ネガティブ思考症独特のオーラがあって、それを察知するセンサーがあちこちにあるんじゃないかな? それでみんな、気が付いて殺そうとする。あくまで私の推測…だけどね」