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勇者パーティを追放されたけど・・オレ・・勇者なんだけど・・  作者: 葵卯一
トラウマの砂漠を越えろ。
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戦いを終えて、移動するだけなのに。

 アヤメさんの来歴の一端に驚愕を受けつつ、グズグズに崩れていくガギヱルが完全に死亡した事を確認してヤールを呼ぶ。


「・・コレで・・いいのか?」

 呪いの核が作られた天使って事なら、[壊す]では無く[殺す]ことで呪いが解けるのだろうか?


(今、考えれば、殺す必要は無いのか?ヨシュアの身体から外にさえ出せたなら、呪いは解けるんだから・・多分だけど)今後は・・会話と交渉とかで。


「表情を見るかぎり、勇者様のお考えは理解しますが・・天使にまともな会話ができるとは・・考えられませんよ?


 やつらは上位種・・格上からの命令には忠実ですが、基本的に天使は人間を下に[穢れ]や[獣]として見てますから」


・・それ以上にガギヱルのように、作られて間も無い簡単な事しか理解出来ないくらい、知能が若く幼いヤツって事も考えられるのか。


「のぞみ薄、って事か」それでも、言葉が解るなら交渉しないって選択は無いな。


 全ての相手に会話が通じる、とは思わないけど。

 ただ殺す・ただ殺されるってだけでは、話せるって事に意味が無いだうと思う。


(それが無意味な相手なら、オレは自分が生きる為に倒すよ)


「さて、勇者様。私の手を」

 ヤールは紳士のように左手を胸に、右手を差し出した。


・・「そうだな、次ぎは・・頭か」そこへ行く方法が解らない以上、オレは悪魔の手を取るしかない。

 悪魔の手を取る前に、アヤメさんの手も掴んで置きたい。そう本能的に彼女の立つ場所に目が向く。


「大丈夫だ、少しすれば動けるようになるから」

 浸透勁は余程身体に負担の掛る技なのだろうか?

ガギヱルが消え、辛うじて構えを取っていた腕を両膝にして、深く息をして集中している。

顔糸も暗く、酸素欠乏を起こしているような顔色と表情。


「動け無い雌猫はこの場に捨て置いていいでしょう、時間がありません、さあ私と2人で敵を倒し、この人間を救ってやりましょう!」


 アヤメさんを捨て置いたら、小さくなる魔法を解いた時に大惨事になるんだろ?解ってるさ。

それに戦闘の時だって彼女がいた方がいいと思う。


「・・この女の結界を解けば、私だって参戦できるのですよ?大活躍できるんですよ?」

勇者の考えを読んだヤールは、動け無いアヤメをゴミを見るような目で見た後指先を動かす。


 少し術を解くだけで戦える、そう悪魔の指先が語っていた。


「1人を救うのに、1人を犠牲にするのは計算が合わない。それに・・良く知らないヤツと、少しでも知ってるヤツ、余程嫌いなヤツでも無いかぎり見捨てるのは知らないヤツだろ」


 立前だけどな。今、目の前の彼女とヨシュアどっちを救ってどっちを見捨てるなんて、考える必要も無いほど明確。


それに動け無いなら。

「よいしょ」


 アヤメを抱き抱えて運べばいいんだから。

膝下に腕を通し、その小さい身体を持ち上げた。


「・・・!・?!あっ!」

 軽いな、そう思ったオレの顔に拳が、ゲンコツが飛んで来た。


「イタイ・・なんで?」

 両手の塞がった状態で顔面にモロに拳がヒットし、目に星が飛ぶ。


「おm!お前!いきなり何をする!」赤面したアヤメさんは激オコで、右の拳を振るわせ『返答次第ではまた殴るぞ!』と拳が語っていた。


(考えろ!考えるんだオレ!怒られないための、完全な言い訳を!)


「いや・・えっと・・急ぐから」短い時間で出した答えは、なんとも間抜けな答えだったんです。


 ですが、まだ頭にも呪いの核がある、二体目もガギヱルだとしても時間に余裕があるわけじゃないんだから。


「・・くっ!・卑怯者め!私が動け無い事を良いことに!・・いいか勇!お前はまず・・・抱き抱える時は・・いきなりは、やめろ・・あと、匂いとか嗅ぐなよ・・」

 汗とか流してないから、そんな声を最後まで聞く前に背中から伸びた手が、肩から胸、腰から下腹部に張り付いてきた。


 背中に熱く肉々しい体温と首にかかる鼻息、

「お前!何をする!」


「だって酷いじゃないですか!その雌猫ばかり!ここで、この場所で一番の功労者は私ですよ?それを無視してイチャイチャして!確かに空気の結界とパーティのミクロ化担当で裏方ですけどね!


 裏方で器用で実力を見せる場も与えられてない悪魔は追放ですか?!そんなの後々で勇者パーティーが没落するんですからね!」


 コノ悪魔ハ・・・イッタイ・・・ナニヲ言ってらっしゃるのでしょうか?


「・・だからって、いきなり抱きつくのは無しだ。それに・・追放なんて馬鹿な事をするわけがないだろ。お前も大事な仲間だ」変態だが。


 オレは肩に伸びた手に横顔を乗せ、頬を磨る。なんだよ、悪魔のくせに寂しいのかよ?

今は手がふさがってるから、顔で撫でてみた。


「目を覚ませ」パンチ!

ヤールの『げへへ』声が聞こえた、と同時に正面から拳のモーニングコールー!


「そうだぞ!今は人助けの最中だ!こんな事をしている場合じゃない。これからどうするんだ?また血管を開けて血液に運んでもらうのか?」


 目を覚ましたオレは、今振り払うのもなんなので聞く事だけは聞いておく。

 まぁ戦闘を終えたばかりだからな、短い時間でも一息入れたほうが多分・良いんだろう。


「心臓からなら、脳まで血流に乗れば直ぐなんですが・・その場合、外に出る方法が脳の血管を切る事になりますし・・・

 私達と共に運ばれる異物が脳の末端血管や神経を詰らせたりするかも知れないので・・」走ります。


 オレの身体から腕を抜いたと思ったら、膝裏に腕が素早く走り[勇者は、悪魔に捕まった!]


「勇者様の体温チャージが出来ました!張り切っちゃいますよ!あとオマケは動くな振り落とされても見捨てて行くからな」


 悪魔の黒い顔の目が赤く光る、なんだよ体温チャージって!


 [加速]!ヤールは速度を上げる魔法を唱え、走り出す。

その早さは軍馬のように止る事を知らず、その太くない腕は堅く締まった筋肉の質感。


(なんというか・・もうどうでもいいか)そう思わせる物であった。


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