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勇者パーティを追放されたけど・・オレ・・勇者なんだけど・・  作者: 葵卯一
トラウマの砂漠を越えろ。
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2人で戦うとはこう言う事だ。

 ガギヱルの突進をクロスさせた刃で受け、腹に力を入れて打ち返す。

「ヤール!固まっていたら殺られる!

 一時的にでもいいから、空気の結界を個々に別けられないか?」


 オレ達が集まって動か無いなら、あの巨体相手に良い的になるだけだ!


「少しの間だけですよ?それと魔法維持の為に私はここから動け無くなります」

「ああ守ってやるさ、後には攻撃を通させない」


 勇者が飛びだした瞬間、背後で悪魔がへたり込む。

(大丈夫か?・・まぁ嫌な予感がするから振り向かないけどね)


 空気の結界はオレを包んでいても、肉の足場は走れるみたいだ。大丈夫、オレが前に出て囮でも刃でも役割を果せば後に攻撃が行く事は・・無い!


 堅い肉の上を走り、目指すは脈の打たない心臓の上部。

そこまで行けば、ガギヱルの頭にも手が届く。


「勇!1人で先行するな、私も回復が終わったから手伝う!」

 目指す場所は同じだったのか、アヤメも後から・・着いて来て・・追い抜いて行った。


「先行は武闘家の役目だろ?お前は右で私は左だ!」

流れるような動きでガギヱルの懐に飛び込むと拳を打込み、左に跳んだ。


(なるほど!)左に跳ぶアヤメに目を奪われたヤツの身体を、右から切りつける。


 左右から敵を挟む形で位置取り、アヤメが飛び込むとソレに合わせて勇者も飛び込む。

 ガギヱルが勇者に攻撃を向けると、勇者は背後に跳び躱し、その背中をアヤメの拳が打つ。

「正拳・・4段突き!」


 正面のオレにも聞こえる程の打撃音と振動でガギヱルが仰け反る、

「こっちも」脱力からの集中。


 左の刃で腹に切り落とし、同じ傷を渾身の右剣で切り抜く!

 ×の形に切り裂かれた身体から赤い血が流れ、勇者が追撃を試みた瞬間、ガキヱルは肉を締め傷を塞ぎ、堅い肉は鋼刃を跳ね返す。


(でもなぁ!)それで攻撃の手を緩めるって事は、無いんだよ!


 締まった肉の中心、刃がクロスした場所にはまだ傷が残っている。その一点を狙い刃を突き刺す。


 グリッ!肉が裂け鋼刃が筋肉を切断する手応えに、手首を捻って傷口を抉る。


「ぐはぁ!きっキサマ!」ガギヱルの殺意が勇者に向かう。

 牙を剥き、尖った足を怒らせ無数の突きが勇者を襲う。


「私の存在を忘れてないか?」

 ガギヱルの背中に疾風のような蹴りが突き刺さり、その巨体が仰け反った。


(こっちは隙だらけだぞ!)

 仰け反り開いた足の中心、そこは完全な無風状態だ。


 すぅ・・!「オオバサミ!」二刀を腹に突き刺し、二つの刃を持つハサミが一つの形を作り、本来の役目を果す。


 ジョッ・キンッ!ハサミは閉じ、深く切り裂かれた肉からは血が流れ出す。


 前後から繰り出す2人の攻撃は敵の動きを妨げ、腹を切られたガギヱルは身体をよじって身を守り、傷の回復に集中し始めた。


「勇!駄目だ!コイツ打撃が効きにくい!」

 アヤメの言葉に勇者は頷き、二刀に分離させたハサミを振り回すようにガギヱルの身体に傷を着け肉と表皮を切り刻む。


 オレと位置を入れ替わるように回り込み、拳を固めた彼女は

「鉄拳制裁!」仲間の心臓の上だという事を忘れているのか、強く足を踏み込んで勇者の着けた傷の上を打っ叩く!


「ヨシッ!」拳を肉にめり込ませ、引き抜くと打たれた部分が赤く抉れ、陥没して形を残した。


 元々陸上の動物の肉体は打撃に強い。堅い獣毛やウロコ、その下には分厚い皮膚と脂肪が衝撃を吸収し、筋肉と骨が更に身を守っているからだ。


 砂漠の堅い敵に慣れたアヤメの拳も、純粋に筋肉と骨が丈夫なガギヱルの身体にはダメージが通り難い。ではどうするか?


 鉄の爪のような打突武器を使えばいいが、無い場合は。


「勇!良くやった!コイツの身体を切り刻め!とどめは私に任せろ!」


 仲間が獣毛と皮膚を裂けばいい。それだけで拳は硬い鉄槌となり、筋肉を押しつぶし骨を砕く事が出来るのだ。


「その分、こっちは骨まで断つ必要が無いからな!」

 斬撃は深く無くていい、刃を押し当て引き切る程度で十分だ。


 押し切るのには1歩前に・半歩前に身をさらす必要がある。その分だけ退くタイミングも早さもシビアになるが。傷付けるだけなら、それだけオレの手間も危険も低くなる。


 2人が敵を中心に回るたび、ガギヱルの身体が血に染まる。

「きっ・・きsま!教会の人間じゃないのか?女?オレにこんな事をしていいと思っているのか!」

 ガギヱルが吠える!


「?馬鹿め!信徒の、仲間の心臓に絡み付く寄生虫を退治するのだ、どこに問題がある!」

 ガギヱルの言葉も関係ないように、傷口に蹴りを打ち込むと敵の巨体が揺らぐ。


「きっ寄生虫だと!この天使・・天使ガギヱル様が寄生虫だと!」

 蹴りに悶えながら、蛇の顔を怒りに染め、身体を立ち上げて無数の脚をガチガチを震わせた。


「馬鹿め!お前の姿をよく見てみろ!・・「「お前のような天使がいるか!」マヌケ!」

 アヤメの言葉に合わせるように勇者も言い放つ。

 そして彼女は腕を胸の所で組んで親指を立てた。


(なんか目で合図しているし)・・恥ずかしながら勇者も親指を立ててサムズアップする。


「あの~~勇者様?あまり私を放って置いて、目の前で雌猫とイチャイチャなされると・・イ~~~ってなるので止めて戴きたいのですが・・『ハッ!これが寝取られプレイ』というヤツなのですか!?」


 言葉の意味はよく解らんが、とにかくすごい勘違いだ。


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