悪魔的変態、変態的悪魔・・どっちなんだ?
「ああ!私は[勇者様命]ですからね?人間の敵意を感じたら内側からコイツを殺します。『お前は黙って大人しく見ていろ』いいですね?」
ライヤーに威圧をかけたあと、
「私が魔法の詠唱を始めたら、[重力縛]が解けます。ゴラムさん、コレが動かないように押えておいて下さい・・・抵抗が強ければ・・手足くらいは・・ね?」
悪魔はしきりにヨシュアの手足を折る事を提案するが・・ダメだよ、・・ぎりぎりまではな!。
あとは・・キョロキョロしたあと、ヤールは勇者の手を取った。
「魔法でコレの体内に入れるのは後1人くらいですが、アレは敵ですし、ピョートルさんは、2人で一体の魔物。『つまり!私達だけで行う、2人の最初の共同作業!』めっちゃ萌える!」
・・・「まて!ホフメンがいる、後1人ならカレも」仲間だろうさ。
ていうか、本能なにか別の危険を感じているんだよ。
・・う~ん、人間の体内に入るのは始めてだが、心臓と脳にある核を砕いて返って来るだけなんだろうし・・この悪魔は危険な気がする。
ついていくのは当然覚悟の上だが、戦いとは別のなにかを本能が危険だと警報を鳴らしている。
「カレは駄目ですね、弱すぎます。私の魔法に耐えられません、下手をすると体内に入る前に消滅しますよ?
さあ!『諦めて下さい、私と2人っきりで試練を乗り越えましょう!』なにも、恐くありませんからね?」
所々が恐いんだよ!この悪魔、目が恐いんだよ!発言が恐いんだよ!
あとなピョートル![ご愁傷さま]みたいな雰囲気だすなよ!仲間だろ!助けろ!
「観念して下さい!は~は~、できる事は何でもするって言ったじゃないですか。こうやって悪魔と勇者、2人手を取り合って・・は~は~仲良くやりましょうよ」
「で?本音はなんだ?」
「始めてのデート!私の勇者様と二人っきり!めっちゃ勃起モンやで!」
・・・・・この悪魔、変態だ。
「ああ、違うんです!誤解しないで下さい!私、男でも女でもどっちでも出来る悪魔なので・・「私、濡れてしまいます!」でもいいんですから!」
どちらにしても、変態だった。
ヤバイ、産まれて始めて感じる異質の悪寒、恐いとかそんな言葉じゃ表現出来ない敢えて言うなら[きもち悪い]こんな感覚は産まれてから始めての感覚だ。
「フフッ!その悪寒、悪魔的に好印象!好きの反対は嫌いでは無く、無関心!
であるなら、最高に不快だと思える相手が、いつしか無くてはならない相手に・・!これは萌える!」
掴んだ指先をくねくね動かし、勇者の手の平や指を触姦する悪魔。
(コイツ!おれが離せないと解ってるくせに!)
確か・・マゾとかサドってヤツは、痛みとか恥がいつしか快楽になるって本で読んだような記憶はあるような気がする。
・・(いや待て!不快な事や嫌悪が快楽になるなんてあるか!)コイツ悪魔か!
誰か!誰か助けてくれ!このままだと変態と2人っきりにされてしまう!
そこ!真面目な顔で心配しているライヤー!お前でもいい、オレを助けろ!
一瞬勇者の顔に目を向けたライヤーは、素早くヨシュアの方に目を戻し首を振る。
(コイツ!見捨てやがった!)少しくらいは親しくなったと思ったのに!酷いやつだ!
なんだよ、その![かかわりたく無い]見たいな空気は!
お前の仲間を助けに行くんだぞ!手伝え!オレを見捨てるな!あんまりじゃないか!
神よ!だれか助けて!この悪魔[変態]を何とかしてくれ!
砂漠の神よ!星空の神よ!だれか!だれでもいい!助けてぇ!
勇者が星空に祈ったからだろうか、それとも砂漠の神に祈ったからか。
星の夜空に駆け寄る砂煙が見えた、それは真っ直ぐ勇者を目指して直進し、瞬く間にヒトの姿を取った。
「待たせたなぁ、偽勇者!」
それは砂の大地を蹴って飛び上がり、グルグルと回転して勇者の前に立つ。
砂色のフードと、全身を包む砂漠の衣装。足のサンダルと拳をしっかり皮紐で固め、見覚えのある鉄の篭手。
「アヤメ、お前も来てたのか?・・はぁ・・この面倒くさい時に。アヤメちゃん、今・アイツとは休戦中なんだ。手を出すなよ?」
ライヤーが動きを押えるように、フードの人間に声を掛ける。
「手を出すなとは、偉そうに!アイツは私の獲物だ、お前らこそ手を・・なんだ?ヨシュアがなんで縛られてるんだ?・・?」
「良し!邪魔なので殺しましょう!」
ヤールが笑顔のまま指先に炎を生み出し、火球が圧縮を繰り返す。
[火炎]の最上位、魔王の名を持つと言われた炎の魔法[豪火炎撃]ごうか・えんげき、どこか楽しい雰囲気を持つ反面で1500℃を超える熱は、鉄すら蒸発させる。
「止めろ!休戦中だって言ったろ?」それに、天の助けだ。
(彼女には命を助けたっていう借りがある・・と思う、それに同僚の命を助ける為だ、っていう大義名分もある)
さらに、この悪魔がいやがっている感じもする。
真っ黒な顔なのに、笑顔で口元が引きつって見えるからな。
「助けが多い方が、時間も短くて済む。協力者は多いほうが成功率が上がる、違うか?」例え違っても、協力してもらうけどね。
[豪火炎]の炎が揺れて消え、明らかに落胆した感じのヤールは・・・
「まぁ胸の無い女なら、問題ないでしょう。私達の邪魔しないで下さいね」と
勇者候補同士の説明が終わるまえに、魔法の詠唱を始めた。
『小さき者・儚き者・弱き者・その声は細く・その詩は羽根虫の羽ばたきより遠く・・静かに・そして静寂の中に歌を歌え」・・・[リトルキッ○゛!バージョン2,4!]
ヤールの詠唱はサークルを作り、よく解らない文字と共に小さい光球を浮かび上がらせる。
同時に重力の呪縛が解けたヨシュアが暴れだす。
「うごくな」ゴラムがその身体と腕で抱き押え、アヤメは今一状況を理解出来ずに構えをとる。
「ごめん!」オレは背中を向けた彼女の手を掴み、円輪の中に引き込んだ。
「え?」一瞬彼女と目が合った。黒い瞳に光る玉が写って浮かぶ。
そしてオレ達は光りの中に包まれ、景色が一変する。
悪魔ヤールーヤーさんが生き生きして来ました。本能に忠実な悪魔なので、色々と楽しい事や面白い行動をとったりします。