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勇者パーティを追放されたけど・・オレ・・勇者なんだけど・・  作者: 葵卯一
トラウマの砂漠を越えろ。
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【たった数日前の事なのに・・随分と前の事のように思う】

・・・・「だれ?」

いや、多分見た事はあるのだが。頭が拒否していると言うか、記憶から抹消しようとした努力のかいがあるような・ないような・・???


「おやおやOh dear?お忘れですか?

 放置プレイの一環かと身震いしてお待ちして居りましたのにこの仕打ち、ああ!振るえますね勇者さま!」


 逆様のままで身体をくねらせ悶えるソレ、興奮したソレは魔力の密度を高め横回転を繰り返す。


 不意に現れ、空中にぶら下がる[ソレ]の出現にライヤーが飛び退く。

そして槍を構え猛獣のような目鋭い眼光を向けた。


「おいおい、そいつはなんだ?お前さんの隠し玉か、それにしちゃぁ・・禍々し過ぎるだろ?」


 いや?・・う~~ん?・・


「本当にお忘れ?おとぼけじゃ無く?世界を分つ2人の関係を?この世界を滅ぼす2人の舞台を作りますよと約束したワタシを?」

 逆さまなのに帽子を着け、グイグイと顔を近づけらても・・(世界を滅ぼす?)


「お前の知らない化物が、こんな時に都合良く?まじか?・・・まぁいい、そこの魔物・・いや悪魔か、こっちは取り込み中なんだ」どこかへ行ってくれ。


 多分ライヤーは、そう言おうとしたのだろう。

 今まで全くライヤーを無視していた[ソレ]が首だけを捻るように向け、『黙れ』と低く唸るように言葉を吐き、ライヤーが飛び退いた。


その瞬間、彼の居た場所が深く歪み、砂の大地が沈み込む。


「・・全く、こっちは落ち込んでいるというのに、蠅が五月蠅いことで。

ワタシは勇者様と話しているのですよ?控えなさい・・『殺すぞ、虫けらが』」

ねぇ、ワタシの勇者さま?


「・・お前・・ヤール・ヤーとか言った悪魔か」


 数日前・・女貴族の御家騒動に巻き込まれた時に呼び出された悪魔、

【たった数日前の事なのに・・随分と前の事のように思う】


「ハイ!勇者様は憶えていらっしゃるのにとぼけるなん御人が悪い!

そこも悪魔的にポイント高いですが・・・もしや、ワタシを置いて死のうなどと考えてはいませんでしたか?」


・・・思い出せ、おれはコイツとどんな約束をした?オレとコイツはどんな関係だ?・・・


([悪質なストーカー]・・だったか?)


「ああ、そうか。期限内に契約しに戻らないと戦争を起こす、とか言ってたな」

 今日・・今夜が最終期限だったか、色々ありすぎて忘れていたよ。


「戦争なんてとんでも無い!ワタシはアナタに追い掛けてもらいたいだけ!ワタシを見て!怨んで憎んで殺したいほど!頭の中をワタシでいっぱいにして欲しいだけですよ!」


 その手段として戦争も辞さないのだろう。当然オレに怨まれる為なら、どんな悪事にも手を染めるつもりだろう。悪魔だからな、人間の倫理は通用しないんだろう。


「まぁでも、オレは今日死ぬ。死体は教会が持って行くだろ、この世界にオレがいなくなるのだから、諦めて地獄に帰ってくれ」


 よく考えたら・・それが一番いい、悪魔は戦争も起こさず、仲間達は助かる。

・・勇者なんて貧乏くじを引いたヤツの末路なんて、こんな物で十分か。


「・・死ぬ・・ご病気でも無ければ、呪い・・の類いでも無いのに・・デスか?

その死は、避けられぬ物?ワタシの楽しい勇者様との日々を邪魔する?・・人間の宗教が、ワタシの勇者様の死体を?・・」


『それは、駄目デス!』

「ああ!許せません!許せませんとも!ワタシのHappy=Lifeを邪魔するなど!

ワタシが許す訳が無い!


 ワタシは勇者様の死体を愛でたいのでは無く!手を繋ぎ!世界を歩き!話!歌い!揺れ動く勇者さまを間近で見ていたいのです!

 肉の人形!勇者様の形をした剥製が欲しいのでは・・無い!のですよ」


「『アレか?』」それは太く鈍い男の声と、しゃがれた老婆のような声が混じった怒りの声。


 憤怒の煙を混じらせ、悪魔は勇者に後頭部を見せると、頭が二つの敵を視界に入れるように左右に動く。


「・・・・?・・何故勇者様はアレを滅ぼさないのです?」

今度は首を捻り一周した首のまま、勇者の方に顔だけ向けた。


 レベルの差・技術の差・力の差・・2人の人間はオレより・・オレ達より強い。

「勝てないからだ」歴然とした事実。


「・・勝つ?・・アレを滅ぼすのでは無く、[勝つ]

 ・・なるほど?アナタが本当に彼等を敵・滅ぼすべき敵をして認識すれば、勇者に滅ぼせない物など無いと言うのに」そういう・・・

 不思議そうな目をした悪魔は少し考え、ニッコリと笑った。


「では、ワタシと仮の契約をして戴けませんか?今夜限りの従僕をとして、代償はアナタの命で」

「いいぞ、あいつらが、オレの仲間達が助かるならなんでもいい」


 悪魔に魂の契約をするのも、神殿で生き返らせてから拷問を受けて殺されるのも同じだ。悪魔の方が契約を守るぶん、かなりマシな条件だろう。


「即答痛み入りますが・・悪魔との契約は良く考えてからお願いしますよ?

 悪魔とは困った相手に付け込んで、水一杯と人間の家族を交換させるような事も平気でしますからね?イエイエ、私はしませんよ?勇者様相手にそんな事は!


 ・・ゴホン!命というのは、冗談として。

 この戦いが終わり次第、ワタシの魔法で本体の元に来て戴きます。そして本契約を正式にして戴きますよ?生涯にわたりワタシを傍に・ンンン!

 ワタシを正式な仲魔にして戴きます。よろしいですか?」


 ストーカーが仲間に・・まぁ仕方ないよな、それに契約をする事は、数日前からもう決めてある。「ああ、手を繋ぎ、歌いってのは勘弁だけど。仲良くやろうぜ」


「・・では、悪魔との契約を裏切る事無きよう・・お願いしますよ?今は仮とは言え、契約ですからね?裏切っても良いのは、天使の戯れ言だけですからね?」


 ・・天使の言葉は人間を処刑台に送るからなぁ・・


「ああ、おれは仲間を裏切らない、お前が・・ヤール・ヤーが仲間を裏切らない限りオレは裏切らない」


 マフィアの盃みたいだな、親子・家族・兄弟・仲間は裏切らない。

 その4つを裏切る・欺す・陥れるヤツはマフィアでも信用されない、かれら社会の絶対のルールだったか?


(・・親子・家族・兄弟・仲間の為以外の理由で裏切れば、酷い制裁と血の繋がった家族まで制裁を受けるんだったか?)


 まあ、オレには・・大事な人間か、ソレが枷とは思わないが・・・

ようやく3人目の仲間です、ホフメンさんは途中で自立してしまいますので。

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